第2話 「自分じゃない人が作ってくれた美味しい美味しいご飯が食べた〜い!」
時々ね、無性に思うの。
それは――!
「自分じゃない人が作ってくれた、美味しい美味しいご飯が食べた〜い!」
だから、たまには外ごはん。
普段は私、お昼も手作りのお弁当だし、朝も夜も自炊で頑張ってるから。
健気な節約っぷりだ。
時々ご褒美で外食するぐらいいいよね〜。
私、多すぎる人の混雑には人あたりするくせに。
人肌恋しい寂しい夜には人のぬくもりが感じたい。
誰かの声が聞こえて、ただそこにいるだけでいい。
小さなバルで、私は癒やしの時間を過ごします。
ここは、イケメン店主の
浜辺を散歩しててね、偶然見つけたの。
ひと目で感じたんだ、素敵なお店だなって。
まだオープンしたてのお客様がまばらな、……だからか居心地がいい。
美味しいお酒に美味しいおつまみ、感じのいい清潔で端正な顔だちの爽やか店主の
伶音さんのちょっと甘めの声がまたときめきをくれる。
うん、隠れ家みたい。
どこか秘密めいてて。
「いらっしゃいませ、こんばんは。ああ、なるみさん。今夜もいらしてくれたんですね。……ありがとう。好きな席に座ってね」
「あっ、はい」
カウンターは伶音さんに近すぎる。
私はそんなに男性慣れしてないから、恥ずかしい。
今夜は満月が綺麗だから、海と月が眺められるテラス席に出よう。
「テラス、いいですか?」
「ええ、どうぞ」
ワインを頼んだら、先出し? お通し? にレタスと柿のサラダがやってきた。
こういうのなんて言うんだっけ?
お通し、先付け、先出し……あとで調べてみよう。
なんだかスマホで調べる気はしなかった。
この時間、この空間。
私は心地良さにゆったり浸かって、満喫したい。
せっかくのディナータイム。
おひとり様だけど。
のんびり味わいたい。
静けさも、波の音も、……月明かりも。
意外な組み合わせ。
初めての味、サラダに入った柿だなんて初めて食べた。
「あっ、美味しい」
「良かった。美味しいって言ってもらえて。ごゆっくりどうぞ」
グラスに注がれた白ワイン、ほんのり色づいて芳醇な香りがする。
見上げると、にっこり微笑んだ伶音さんがどきっとするぐらい妖艶だった。
つられて笑顔な気分になる。
ギャルソンスタイルっていうのかな?
伶音さんの制服姿もかっこいいなあ。
私は、ちょっと酔ってきたかも。
口には出さないけど、適度なアルコールを摂取したので、脳内限定お喋りは滑らかに饒舌になってる気がする。
話す相手がいないしね〜。
伶音さんにばかり、話しかけるわけにはいかない。
店内に働くのは伶音さんしか見当たらない。
お客さんがそんなにたくさんいなくたって、忙しいだろうから、ご迷惑だろう。
カウンターすぐ向こうの対面の
お料理にお酒を運んでくれるのも伶音さん。
たまたまなのか、私がこのお店を訪れる時は、従業員らしき人物は伶音さんしかいない気がする。
それに私は、そんなに仲良くない人に積極的に話しかけられるタイプでもないし。
誰とでもすぐに打ち解けちゃう、友達の
海の波の音がする。
水面には、月の光が反射して、さざなみに揺れていた。
綺麗だな……。
まだ、ワイン一杯めにして、ほろ酔い気分。
今夜もきみとあなたと極上ほっこり飯 天雪桃那花(あまゆきもなか) @MOMOMOCHIHARE
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