エピローグ
縁の墓に俺は、手を合わせ報告をする。
「縁、昨日、祈さんに告白したよ。祈さんは、少し待って欲しいってさ。行きたい場所があって、そこに行った後に、返事をくれるってさ。きっと…、縁と祈さんがよく一緒に散歩していた、河川敷や高台に行ってると思うぞ。」
中学の時、引っ越し先で、縁と祈さんに俺は出会った。最初は、二人とも無口で物静かで、二人でいるのに別々のことをしていたりと、不気味だった。
だが、すぐに二人の強い繋がりと、強い信頼関係に気がついた。
そして、祈さんがとても素敵で、何事にも一生懸命な女の子なのかも気がついた…。
「祈さんのこと、たぶん、出会ってすぐに惚れていたよ。けど、縁と祈さんの関係性がめちゃくちゃ好きだった。だから、ずっと二人と友達で、それからいつか祈さんじゃない、人とって思ってたよ。」
あの日、あの事故で、三人の関係は幕を閉じてしまった。祈さんが立ち直る為にどんなことが必要かを考えるが、縁以上に祈さんを支えられる相手なんかいないと思った。だけど…
「縁、俺の篝って名前の由来を話したことなかったよな?両親は、俺に、篝火のように人々を繋ぐ目印に、周りの人々の幸せな未来を照らす光になって欲しくて、篝火から篝を取ったんだってさ。」
なら、篝火って名前で良かったんじゃないか、って思った。
それに対して、父親は、篝火じゃずっと燃えてなくちゃダメだろ。そんな人生は、疲れるさ。消えていい時もあるさ。お前が周りを照らしたい時にだけ、灯ればいいんだ。だが、灯るタイミングは逃すなよ。と語っていた。
「祈さんが、部屋で自殺未遂をした日、俺は、祈さんの両親と一階にいた。あの時、縁の死を、俺も受け入れられていなかった。縁ともっと一緒に過ごしておけばとか、後悔ばかりでさ…。だけど…急に縁が暗闇に包まれる感覚がしてさ…。それで、名前の由来を思い出した。なぜかは、わからないけど、縁と祈さんを繋ぐ為に、灯らなきゃってさ。」
自殺を失敗した祈さんに、駆け寄った時、確かに縁の気配を強く感じた。
「縁…。俺は、縁と祈さんを繋ぐ目印で、光であったか?みんなの幸せな未来を照らせていたか?」
もちろん、縁の返答はない。
俺は、微かな、笑みを晴れた空へ送り、宣言をする。
「俺は、祈さんの幸せな未来を照らす篝火であり続けるよ。それに、この高い空から、縁が俺と祈さんをすぐ見つけられるように目印としての篝火でもあり続けるよ。」
人と人との縁。縁に導かれた人と人は互いに互いの幸せを祈る。その縁と祈りを繋ぐ、篝火。
三人は、互いの為に微かな、笑みを…。
Ghost of a smile
†Fine†
微かな、笑み 六月之羊 @satowa1991
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