第2話 魚

初めまして、Yと言います。19歳の女子大生です!

あっ、隣にいるのはいとこのTです!


『……ご紹介に預かりましたTです。Yと同じく19歳の大学1回生の女子大生です……。

こういうことは面倒くさくて好きではないですが、Yに無理やり付き合わされています。私めっちゃ可哀想じゃないですか?皆さん同情して下さい。』


もぉ〜T〜そんなこと言わないでよ〜!

だって私もこういうこと場に慣れてなくて一人じゃ不安だもん…人助けだと思って!ね!隣にいるだけでいいからさ〜!


…あっ、ごめんない!えへへ、二人の世界に入っていましたね!…えっと〜…奇妙なお話ですよね!!そうそう、これは少し前に起こった出来事です……。


私は4人兄弟で兄と双子の弟いるのですが、弟の一人…名前はそうですねぇ…H!…なんか可哀想だけどイニシャルだから仕方ないですよね(笑)

Hは県外の高校に進学していたのですが、訳あって地元に帰ることになりました。

当然引越しをするのですが、Hは魚が好きで熱帯魚や金魚などを飼っていました。どのくらい好きかと言うと、個々に名前を付けてそれを見分けれるくらい好きなようです。私も遊びに行った時に魚を見てましたが、どれも同じに見えて見分けることは出来ませんでした。まあ、私が普通でHが異常なんでしょうけど(笑)

あっ、話を戻しますね!えっと…引越しって魚がいると大変じゃないですか?ですから、両親から魚を引き取ってもらえる人を探す等どうにかしなさいと言われていました。でもなかなか引き取り手は見つかりませんでした。

そんな中、私ともう一人の弟のNがゴールデンウィークを利用しHの元へ引越し準備の手伝いをしに行くことになりました。

Hのもとへ行くと、早速引っ越しの準備を始めました。大体の準備は数日で終わり、思ったより早くできました。まあ、3人でやったから早かっただけで、H1人だともっと時間かかっていたでしょうね。私とNに感謝して欲しいものです!

でもやっぱり、ペットの魚たちが残りました。引越しまであと数日、本当に引き取り手が見つかるのか不安で、3人で何かいい方法はないかと考えていました。ほら、三人寄れば文殊の知恵っ言うじゃないですか!でも、正直賢いとは言えない3人なので、なかなかいい案が出て来ませんでした。あはは…悲しいものですね…。  


そんなこんなで、長い時間悩んでいると、Nが突然閃いたようで、私とHに向かって「食べちゃいばいいのでは?捨てるのは違法だけど、食べるのはギリセーフじゃね?食べたら腹の足しにもなるし、それにずっと一緒じゃん」と恐ろしいことを言ってきました。その言葉を聞いて、すかさず私は「お前はペットって理解してる?!」と突っ込み叱りました。だって倫理観なさすぎでしょ?!自分が大切に育てたペット、つまり家族を食べるって?そんな発想をする自分の弟が怖かったですよ。普通思いつかないですよね。いやあ、子供って残酷ですね…私もまだ子供ですけど…。

そんな双子の片割れであるNの爆弾発言を聞いたHは涙を浮かべていました。そりゃそうでしょ、大切なペットを食べちゃえば?って言われたら、傷ついちゃうますよね。

私は傷つき泣いているHを頑張って慰めました。いや〜慰めるの結構大変でしたよ〜〜…Hずっと泣いてて…でもお姉ちゃんなんで頑張りました!


次の日の夜、私とHは明日の晩御飯の材料などを買い行きました。

普段はジャンケンで負けた人が買い物に行くのですが、昨日のことでHが元気ないように見えたので、私は気分転換&Hを元気付けることができるかもと考え、Hを誘って2人で行きました。帰り道もなんとなく散歩を兼ねて遠回りすることにしました。畦道を通っていると、水の張っている田んぼに映る月がとても綺麗だったので、その場に座り、月を見ながら話をすることにしました。なんかロマンチックで良くないですか?まあ、相手が弟なのが悲しいですけど。

それはともかく、しばらくたわいのない話をした後、私はずっと昨日の一件が気になっていたので、Hに「昨日Nが言っていたことは気にしなくていいからね」と言いました。すると、意外にもHは満面の笑みを浮かべながら「全然気にしてないよ!」と言いました。私はその言葉に安堵しました。いやあ、昨日の件で最悪2人の仲が悪くなるのではと心配していたので、本当に良かったです。一安心でしたよ。

Hが昨日のことを気にしていないようだったので、私は「引越しまであと少しだけど、魚たちはどうするの?引き取り手見つかった?」と聞きました。

Hは「それなんだけど…」と口を開き、続けて「明日引き取ってもらえることになった!」と答えました。その言葉を聞いて私はとても安心しました。だって正直悩みの種だったことが解決しそうってありがたいじゃないですか。

私が笑顔で「それは良かったね!」と言うとHも嬉しそうに「うん!」と元気に返事しました。

そしてHは「明日の夜はお祝いしたいから、僕がご飯作るね!」と言いました。


次の日、私とNは昼から夕方まで外出していましたが、帰宅するとペットの魚たちはいなくなっており、無事引き取られたんだと思いホッとしました。

夜、Hは約束通り晩御飯を作りました。メニューはご飯・すまし汁・天ぷら・おひたしで、お祝いと言っていたわりには普通の食事でした(笑)

お祝いならやっぱり鯛を食べたかったですね〜てか、引越しの準備してるのに手の込んだ料理してて凄いでよね(笑)あっ、話が逸れましたね。

天ぷらは海老や野菜などの他に小魚の入ったかき揚げがあり、すまし汁は白身魚が入っており、それはとてもおいしいものでした。

私は「美味しい」を連呼しながら食事を次々口に運んでいましたが、Nは中々食事に手をつけませんでした。Nがいつまで経っても食べ始めないので私が「早く食べな」と言うとNは渋々食べ始めました。そんな私たちの食事風景を見ながらHは嬉しそうに微笑んでいました。

私はペットの魚たちがどこに引き取られたのか気になったので「魚たちは誰に引き取られたの?どこに行ったの?」とHに尋ねました。

するとHは「あの子たちは2人もよく知る安心できる人に引き取られたよ!」と答えました。

よく知る人とは誰だろうと思いましたが、同じ県に知り合いが住んでいたのでその家族が引き取ってくれたんだと思いました。

私が「魚たちは今頃どうしているのかな〜?」と言うと、Hが「あの子たちは今ジュースの中にいるよ。幸せにね。嗚呼、これでめでたしめでたしだね!」と意味不明なことを笑みを浮かべながら言ってきました。その笑みはどこか恐怖を感じるような不気味なものでした。私はHの言っていることがよく分からず呆然としていましたが、Nの方は「やっぱりな。まじでやりやがって」とつぶやき、お手洗いに駆け込んでいました。

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えっ?そんなに怖くない????怖いと思ったんですけどね…。

なんで怖いと感じたか?そりゃ、私的にはめっちゃ怖いですよ…だって、考えてみてください。血の分けた弟が意味のわからないことを言って、サイコパス的なことをしているかもしれないとか怖いでしょ?皆さんは他人だから今回のことは何も感じないのかもしれませんが…。はぁ、魚たちの無事を只々祈るばかりです。


………でもHが作った食事美味しかったなぁ…なんであんなに美味しいものをNは吐いたんだろ……?


…あっ!!やばっ、今日この後用事あったんだ!支度しないと!

そんなに怖くない話になってしまってごめんなさい〜!次は怖い話できるように頑張りますね!!

それでは、私は離脱するので後はTよろしく、じゃあ皆さんバイバイ!



『…相変わらずYは身勝手だな…。……ジュースの中ね………そういえば胃液って英語でGastric juiceって言うんだよね……引き取り手が姉弟だから安心って訳か…てか、Y疎すぎでは…まあ、世の中知らぬが仏だね。…あっ今のは気にしないでください。ただの独り言なので…。


折角なので私もペットにまつわる奇妙な話をしますね。私にはもう一人同い年のいとこがいます。ただその子の様子が、ここ最近おかしいのです。

一人でいることが多くなり、前までアウトドア派だったのに、今では部屋に籠ることが多くなりました。それに、何より愛犬や愛猫たちが彼女に吠えたり、怯えたりするようになっんですよ。あっ、私たちの家は、犬や猫など動物を飼っているところが多いんです。以前までは犬は彼女に尻尾を振りまくるほど懐いており、猫も彼女に甘えていました。それに彼女自身もとても可愛がっていました。なのに、ある日突然…いや…正確には…あの日から変わってしまったのです。彼女も何かブツブツ呟くことも多く、目付きも変わっており、その姿は人間離れしており異様そのものでした。いとこの一人であるお兄ちゃんに相談しましたが、お兄ちゃんは「大丈夫だよ」と笑うだけでした。本当に大丈夫なのでしょうかね…?それに、動物って霊とか怪奇なものに敏感で感じやすいって言うじゃないですか。彼女は何かに取り憑かれていたり、人間ではない何かになってしまったのではないかと不安なんですよね……。

…まあ、そんなこと皆さんにはどうでもいいですよね…Yもいなくなったし、この辺でおいとましますね。いい暇つぶしになりました。では皆さん、また会う日まで……』

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彼らの怪異譚 晴方米 @okome-yone29

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