転生聖女は婚約破棄されました。でもそちらは大丈夫？

第5話 国王陛下に報告

　王城に戻った私はマイトたちと別れ、国王陛下の執務室に向かった。

「国王陛下。只今戻りましたわ」

「マリアンヌ。お父様と呼んでおくれ」

　私は理由があって生まれて直ぐに平民用の神殿に併設されている孤児院に預けられたのでお父様を含め家族と一緒に暮らしてこなかった。

　だから私が戻ってきたこ とで会えなかった１５年間分の親子として関係を取り戻していこうとしているのだろう。

「お父様。元マナマイト辺境伯はマナマイト帝国としてやっていくみたいですわ」

「領民もおらず、大した兵もおらず、協力してくれる貴族もおらんのに魔の森からの脅威にさらされるのにか」

　王家に反逆して独立するなら他の貴族を仲間にしたりとか根回しが必要だっただろうに……

　マイトたちの力があれば余裕とか思っていたんだろうな。

「はい。魔の森に関しては残っている兵団員たちだけでなんとかできると思っているようですわ」

　簡単な説明してあげたのに危機感なかったのよね。

「そうか……マナマイト帝国からアリストリス王国に魔物が侵入する可能性は大丈夫なのだな」

「そうですわね……マナマイト辺境伯兵団改めマナマイト帝国兵団員たちは私の私兵であるマイトたちに頼りっきりで訓練もサボってばかりの役立たずばかりなのですけど……」

「マナマイト帝国の者たちがどうなろうが構わぬが、そんな兵力で大丈夫なのか？」

「強力な魔物はルシアが倒しておいてくれたみたいなので大丈夫です。

マナマイト帝国兵団の者たちでも命と引換えに魔物に挑めば倒せるのではないかと思います」

　ルシアも定期的に魔の森の様子を見に行ってくれるって言っていたしね。

「彼奴らは命をかけて戦わないだろうな。

危険だと思ったら隣接しているギルベルト辺境伯領、ハルセルス辺境伯領、タナサイト侯爵領に逃げるんじゃないか」

　でしょうね。マナマイト辺境伯領の魔物討伐時も後方にいた。

　マイトたちが一刀で倒した雑魚魔物を死んでいるのわかってからハイエナの如く、剣で刺しまくり自分が倒したかのようにしていたらしいのよね。

　だから雑魚魔物は、ただでさえ安く買い取られるのにボロボロで素材として使えないから超格安で買い取ったギルドのギルドマスターから聞いた。でもそれは大丈夫。

「それは大丈夫よ。マイトたちを迎えに行く前にギルベルト辺境伯領、ハルセルス辺境伯領、タナサイト侯爵領に寄ってマナマイト辺境伯の独立と今後マナマイト辺境伯領から来た者を入れないように頼んであるの」

「魔物の方は聖獣様たちがいるから問題ないのか」

「そういうこと」

　ギルベルト辺境伯領にはフェニックスのクレナスが、ハルセルス辺境伯領にはゲシュトータスのイワちゃんが居る。

　タナサイト侯爵領にはルシアが居てくれることになったから聖獣を恐れマナマイト帝国からの魔物は各領に近づかないからね。

「マナマイト帝国にいる者たちは、マナマイト親子、マナマイト帝国兵団、悪徳商会一族、違法裏ギルドの奴らだったな」

「はい。カレリーナ夫人とラトリシア嬢は離縁して夫人のご実家であるマスカレード伯爵家に戻られておりますし、領民たちも各領主に相談の上で希望する領に移られましたからね」

「よくあの短時間で全てをやり終えたものだ」

「転移魔法を使えるのですから宮廷魔法師たちに任せれば楽勝ですわ」

　世界的にみれば転移魔法を使えるも少ないのだが我が国の宮廷魔法師たちは誰もが転移魔法が使える。

　なので辺境伯領の大多数を移動させるのことなど簡単なのだ。

「我が国に転移魔法陣が設置されているのは他国、魔力量の少ない民たち、魔力量は多いが転移魔法が使えない貴族たちの為ですからね」

　転移魔法は我が国では魔力量がそれなりにあって王立学園でしっかり魔法習得に励めば使えるようになる。

　魔力量の少ない民たちは兎も角、魔力量が多い貴族で使えないのは学生時代に怠けて魔法習得を疎かにし、成人してからも貴族としてのプライドだけ高く、王侯貴族がどういった者かを勘違いしている差別をする王侯貴族至上主義や人間至上主義の者ばかりだ。

　例をあげるとしたら転移魔法陣を使って登城してきたマナマイト親子がそうだ。

「ラトリシア嬢はタナサイト侯爵の次男のミッシェルと婚約しておったな 」

「そうですわね。仲睦まじい感じで羨ましく思いますわ」

「マナマイト帝国が無くなったら……ちと早いがラトリシア嬢と正式に婚姻を結ばせてミッシェルを新たな辺境伯にさせるか」

「領民たちも生まれ育った土地に戻れますし、いい考えだと思いますわ。

王家の所為でもありますから魔物に荒らされた土地や壊された家は私達がどうにかしますわ」

　家は魔法で建て替え、畑は私が浄化すればいいだけですからね。