さえない作家の一九が、面白いネタを探してふらりと妖怪の世へ足を踏み入れてしまうお話です。人の目には珍しい妖怪たちの年中行事、ちょっと変わっておかしい隣人たち、そして彼らと一九との軽妙な会話。おもしろくてさくさく読めて、物語の中で瓦版を求める読者に自分自身もなってしまいます。どんどん仲良くなって、妖怪たちと気の置けない仲になっていく過程も大変ほほえましいです。
歴史の教科書にもでてくるほどの有名人、十辺舎一九。でも、この物語の十辺舎一九は、まだ有名になる前。ちょっと頼りない物書きです。それが、あの名プロデューサー、蔦屋重三郎と出会い箱根の旅へ。ここまでくれば書かれる物語はきっとアレ。と、思いきや、どうやら妖怪の話のようです。稀代の戯作者の執筆の旅。面白いこと間違いなしです!