プロッターだパンツァーだ!? 俺のこの非効率な創作方法を見てみろよ!

 小説を書いている。で、その作品『庭師とその妻』をカクヨムに投稿していたら、長い作品になってしまった。

 

 昨年12月に前の章の更新が終わったので、新章を書いている。今回の章は込み入っているので、投稿しながら書き進めるのではなく、ある程度作り込んでから投稿を始めたいと思っている。が、それがなかなか仕上がらない。前の章を書き始めたときから、「ここは難所になるな」と思い、並行して展開を考えていたのだけど、予想通り、ぜんぜんまとまらない。


 ただ、投稿はじめて2年の経験で、「とにかく手を止めない」「作品世界にタッチする時間を長短を問わずキープする」「毎日書けるものを書く」「ある程度見えたところで、構成を考え直す」をやり続ければ、おのずと道は見えてくることだけはわかっている。だから、根気強くやっている。


 この「根気強く」が、超絶に効率が悪い。


まず、手元には、思い浮かんだものをバババと書いた40万字ぐらいのテキストがある。きちんと数えたら60万字ぐらいある可能性もあるのだが、まあとにかく大量だ。


そこには、いちおうラストシーンまでが含まれているが、最初以外は何もかもが超絶ざっくりとしている。思い浮かばないところはヌケヌケ(空洞)状態。とにかく妄想を出力しただけのものなので、それだけでは小説にならない。絵でいうなら、ラフのラフのラフのラフぐらい。そのうえ、物語後半になるほど、空洞率は上がっていく。


 新章に入るときは、まずは空洞を埋め、ひとつなぎになるよう試みる。しかし、なかなか空洞は埋まらない。そんなに簡単に埋まったら、そもそも空洞になっていない。ひとつなぎを試みつつ、壁にブチ当たったら、三幕構成などに当てはめたプロットを作り直し、整理し直す。これを繰り返す。


「じゃあ、はじめにプロット組めばいいじゃん」と思うのだが、それができない。


一回「ひとつなぎにしようと書いていく」努力を経ないと、「自分が何を決め切れていないか」「物語の何が足りないのか」がわからなさすぎて、そもそもプロットが組めない。というか、プロットを切りつつ、手が止まる。


書いているうちに、物語の問題点がわかることもあるし、「このキャラのことがわかっていない」「動機が薄い」と、キャラの問題が見えることもある。その場合、キャラクターの履歴書を改めて書き直すか、そのキャラクターが登場するショートストーリーやモノローグを書きまくる。そうすると、「あー、このキャラはこういうことをしたかったのか」と、空洞が埋まることもある。


キャラにフォーカスしたショートストーリーなどなどは本編に組み込まないことも多い。これまた超絶ムダ&回り道なのだが、今のところ、自分にとってはこれが一番、「キャラに血肉がつく」実感がある。


そういうことを繰り返していると、プロットが組めるようになる。プロットを組む中で、問題点やキャラクターの動機がよりはっきりとしていく。だから、それを繰り返す。


 そもそも効率を考えるなら、前提が間違っている。


「べき」でいうなら、「書きたいことが原液出力された40万字を、人様にお出しできるものに整える」のではなく、プロット先行でやるべきだ。


間違っているが、この40万字はなんかしらんがすでに出力されてしまった。これを捨てたくない、なんとか読めるものに仕立てて最後まで書き上げたい、というのが今、カクヨムで連載している『庭師とその妻』のモチベーションであり、欲求なのでしかたない。


人生には、愚かなことをする自由もある。


 そうやって進めてきた新章を、年明けに三幕構成プラス「SAVE THE CATの法則」のビートシート(細かい構成表)であらためて整理したら、意外にイケそうだった。


主人公とヒロイン側の行動が混線していたのだけど、主人公に絞ったところ、とてもシンプルになったのだ。主人公は、苦境に陥ったヒロインを助けにいく。以上、終わり。


あとはヒロインの苦境の時系列を整理し、「とりあえず書いた」数多のエピソードからディティールを取捨選択し、悪役にしっかりとした動機をつける。そのセンで、「ひとつなぎに書く」をやっている。


そんなこんなで書いていると、「あっ、ここは主人公が渡りに船ではなく、もっとがんばって道を切り開いて次のステップに行かないとおもしろくないな」とわかる瞬間がある。それがおもしろい。


悪役についても、上記のようなことを繰り返しているうち、「こんなことをやりたいんだな」「それを物語的におもしろく見せるには……」と、だんだん輪郭がはっきりしてくる。


 いまのわたしは、適当に選んだ木をめったやたらに蓑をふるって彫刻っぽい形にし、「わたしが彫ったのではないのです。木の中にこの形が埋まっていたのです」と錯覚してドヤ顔してる、そんな状態。もちろん、「わたしの意志ではなく、『木に秘められた形』を削り出したのです」といえる創作もあるだろう。しかし、わたしはとてもじゃないけど、そんな境地に至っていない。


でもいまのところ、この作品についてはこれ以外できない。


せめてもうちょっと木材選んだり、彫り方考えてから事をはじめたい。次の作品を書くときは……。


「わたしはこんなふうにおもしろい作品をバンバン書いてアップしていますよフフフ」でもなく、「こうすればPV上がりませっせ」でもなく、「なんでこんな非効率なんだよう~」という泣き言に需要はない。しかし、非効率だからこそ、このやり方は半年もしたら忘れてしまうだろう。で、その「今」を、どこかにとどめておきたくて書いた。


この章を書き上げれば、『庭師とその妻』は1~2章で完結する。やり方を整理することで、「これしかできないんだから、やり続けるぞ!」とハッパをかける意図もある。


 なんにせよ。何かをつくるのは楽しい。


しかし、願わくばもうちょっと出力を安定させて、プロットから短編をたくさん完成させて実力つける……みたいな方向性に舵を切っていきたいですね、この作品を書き上げたら……。


***

※2023年2月に別所にアップしたものの加筆訂正版です。『庭師とその妻』のこの章、実はまだ書いております……。

『庭師とその妻』はこちらからどうぞ。

何も持たない庭師見習いの少年が、夢をかなえ、ひとりの少女としあわせになるまでの物語です。

https://kakuyomu.jp/works/16816410413938179619

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