第5話 彼氏との再会
光太郎は、ずっと待っても陽菜が来ないことを不思議に思い、陽菜の部屋に行ってみることにした。でも、そういえば、陽菜の家を知らないことに気づいた。悩んだ彼は、これまで話していた大学時代や高校時代の話しを振り返って、いろいろな人に聞き回って探し始めた。
そして、半年ぐらい探した時、陽菜の家と思われる所を見つけた。ただ、不思議なのは、話しの内容からは明らかに陽菜だと思うのに、名前は杏という人の家だということだった。
でも、ここまできたので、杏という人の家に行ってみることにした。ベルを鳴らし、ドアが開いた途端、見たこともない太った女性が部屋から出てきた。
「あれ、陽菜さんはいますか?」
陽菜は、どうして光太郎が目の前に現れたのか驚いたけど、陽菜がどうしているか答えられず涙を流した。でも、ずっと隠しておくことはできないと思い、杏から陽菜に変わったことを伝えた。
「そうなんだ。全く別人だったのでびっくりしたよ。こんなこと言うと嫌われそうだけど、時間が戻る前は、美人の彼女、連れて歩きたいなと思っていたよ。でも、最近は、そんなこと、どうでも良くなっちゃって、それよりも、話す時間を心から楽しめて、それに、美味しい料理を作ってくれる陽菜が最高だと思っているよ。」
「陽菜じゃないし。杏っていうの。」
「そうなんだ。じゃ、これから杏って呼ぶね。杏の話しって、いつもほのぼのしていて、悪い意味じゃなくて、なんか抜けてる所も多くて、一緒にいてホッとするんだよね。」
「こんなに泣いちゃうと、もっとぶちゃ子になっちゃう・・・。」
「ぶちゃ子ってなに? 杏のあだ名? 愛嬌があるじゃん。」
「私のこと、探してくれて本当にありがとう。大変だったでしょ。」
杏は、その場で泣き崩れてしまったが、彼と一緒に部屋に入り、ビールで乾杯した。
それから20年が過ぎ、お互いに赤ちゃんになっっていった。2人の親は、時間が戻る前に亡くなっていて、一旦亡くなった人は復活しなかったから、そろそろ、1人で過ごすには限界が出ていた。でも、時間が戻る前に子供離れした人々が30代ぐらいになっていて、血縁がない赤ちゃんを自分の子供として育てることがブームになっていたので私達の面倒をみてくれた。
そんな人たちに世話をされ、2人は、兄妹のように仲良く過ごしていた。そして、それから100年も経つ頃には、人間は世界にいなくなっていた。地球沸騰化のせいで、人が灼熱の中で死に絶えていくのではなく、誰もが幸せに予定の日まで生きて、人間はいなくなった。
地球沸騰化の修復には、単に人間がいなくなり、100年ぐらい経つだけでは足りなかったけど、そのうち、あの美しい地球に戻るじゃないかな。海岸のビーチには、涼しい風が吹くなか、小さくてかわいいヤドカリが一生懸命、前に進んでいた。
その日から、時間は戻ることを止め、前に進み始めた。人は地球を壊すので、いなくなった方が良かったけど、幸せな最後を迎えさせてあげようと、神様が考えてした仕業だったのかもね。
みんなで人生二週目って? 一宮 沙耶 @saya_love
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