第4話 初めての彼氏
35歳を迎えた私は、びっくりしたわ。だって、時間が戻るなんて。私も、みんなと同じで、なんとなく仕事する気がなくなって、家でゴロゴロするようになった。それで困らないし。
アパレルショップに行って服を持ってきても、夜を過ぎて目覚めるとなくなっちゃっているので、服装とかには、みんなの関心はなくなっていったの。そもそも、パーティーとかないし、家でゴロゴロ生活だから着飾ることは少なくなったわ。仲間で集まって大騒ぎするときだけ、ドレスをお店から借りるというぐらいかな。
そうこうしているうちに、私は20代に戻り、日々、若々しく、美しくなっていった。嬉しい。また、誰もが怠惰な生活をしていたので、倫理とかどうでも良くなって、私が学生の時にキャバクラで働いていたことは誰も気にしなくなっていた。
そんな時、スーパーで同年齢の光太郎という男性と出会った。公園で話していたら、思いのほか気があって、家で飲もうと盛り上がった。エッチしても、子供はできないという安心感もあり、彼の家にいき、一緒に飲みながら、これまで起こったことを話し続けた。お互いに、大笑いだった。
とても楽しく過ごせたの。そして一緒に暮らすようになった。とは言っても、毎朝、別々の部屋で起きるので、お昼ぐらいに、彼の部屋にいき、夕食をお互いに作って飲む日々が続いた。
いくら食べても、飲んでも、前の日に戻るので太ることはない。そんなこんなで、怠惰な生活が続いた。お互いに、寝転びながら天井を見て話した。
「この世界、どう思う?」
「なんのこと。」
「昔のように、将来の不安とかないし、交通事故とかないなら、死ぬ時もわかっているし、こんな安定した生活が送れるのは、とってもいいことだと思うんだ。」
「そうね。赤ちゃんに戻るとどう思うか分からないけど、どんどん健康になっていって、困ることないしね。なんか、だらだらしていても、誰からも文句も言われないって最高よ。」
「いずれ、この調子だと人類はいなくなっちゃうだろうけど、なんか、とっても静かに最後が迎えられると思う。」
「そうね。それだけじゃなくて、私、あなたとこんな幸せな時を過ごせて本当によかったわ。」
「僕もだよ。陽菜が作ってくれる美味しい料理をさかなにお酒を飲んで、たわいもないこと話すって、本当に毎日楽しい。また、美しい陽菜とベットで過ごす時間もとっても充実している。」
「私も。」
陽菜は、そんな言葉を聞いて心配になってきた。1週間後に、あの電車事故の日となる。おそらく、その日になると、あのぶちゃ子に戻ってしまうと思う。彼は、そんなドラム缶のようなスタイルの女性を見たら、幻滅して別れると言うに違いない。
悩んでいたけど、その日は来た。朝起きると、思っていた通り、ドラム缶のようなスタイルに戻っていた。もう、彼のところには行けない。そう思い、彼の部屋に行くことはやめ、連絡もしないことにした。
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