沖縄旅行記一日目(2)
・旧海軍司令部壕
空港からほど近い、小高い丘にあるのが旧海軍司令部壕。行くまでの間、タクシーの運転手さんが、かつて那覇の空港(旧名:小禄空軍基地)を守るためにここに海軍壕ができたと話してくれました。全長450メートル。その一部300メートルが復元され一般公開されています。地上から階段で地下深くに降りていくと、地下水が染み出しているせいか湿っぽい空気に変わります。
(写真)
ここに、大田實少将が沖縄方面根拠地隊司令官として佐世保から赴任します。
当時ここに軍人約一万人と避難してきた民間人がひしめきあっていたそうです。外に出ると危険なので、排せつも中でしていたらしく、異臭が立ち込めていて、攻撃がやむ夜に外の空気を吸う時が生きていると実感できるときだったそうです。
1945年5月24日ごろ事件が起きます。沖縄守備軍司令部が大田少将に連絡。首里から南部摩文仁へと撤退する際に”沖縄守備軍の撤退を支援せよ”と命令したのに、大田少将は”海軍司令部も摩文仁へ撤退せよ”と勘違いして撤退準備を始めます。大田少将は壕を守るために使っていた重火器を破壊して撤退を始めますが、その後撤退命令が勘違いだったとわかります。そして持ち場に戻るようにとの命令をうけて、5月28日、すぐさま小禄へと引き返して防戦することになります。
これを知り、なんでこんな事をしたのかと謎でした。ただでさえ貴重な重火器を破壊して撤退したあと、もう一度海軍壕に戻った海軍はろくな武器を持たず、夜な夜な兵士たちは槍突撃を行っていたというのです。こういっては悪いのですが、あまりに無能ではないかと思いました。しかし調べてみると、これも陸軍と海軍が犬猿の仲だったせいで、海軍側が重要な会議に呼ばれず、意思疎通が十分に行われていなかったせいで起こった勘違いだったようです。
国家の非常時においても、セクト主義で相手を排斥しようとしていたという事実に唖然とします。(そもそも海軍の暗号は早い段階で米側に解読されていて、陸軍は解読されていなかったのだから、ちゃんと陸海が協力できていればこんな事には…と考えずにはいられない)
そして6月4日牛島満中将より今度こそ摩文仁への撤退を命じられますが、大田少将は拒否。牛島中将は”武運尽きて玉砕するときは陸軍も海軍も一緒である”と打電し撤退をさせようとしますが、大田少将はこれに従いませんでした。
大田少将は最後に、「沖縄県民斯ク戦ヘリ」という電報を海軍次官あてにうち、「沖縄県民はこのように戦い抜きました。県民に対し、後世、特別のご配慮を頂きたくお願いします」と送り、幕僚らと共に自決しています。これはひたすら沖縄県民への思いをつづった感動的な内容なのですが、軍人としてどうなんだろう。。という腑に落ちないものが残ります。
良い人だけど、でも軍人としては…。という事をどうしても強く思ってしまいます。大田少将が牛島満中将の撤退命令を拒否したことで、経験の浅い、ろくな武器を持たない兵士たちは、大田少将の命令で玉砕を余儀なくされています。そして、日本軍の戦力の分散と減少も起こっています。
日本軍には、良い人だけど、軍人としては…という人が上層部にいて、作戦を軽視して窮地に。。という事が多々あって、これは人事制度や評価制度の問題なのだろうか、と思ってしまいます。
(他に陸軍八原大佐の例がある。反射面陣地を駆使して寡兵でアメリカ軍の大軍を迎え撃ち善戦した八原博通大佐は、寝技戦法という持久戦でアメリカに厭戦気分を作ろうとして、途中まではうまくいっていたのに、上層部から突撃しろ、という戦略も糞もない命令を受けて従ったら、多くの兵士を失って持ちこたえられなくなった。「真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である」ナポレオン)
(この穴から槍をもって日本兵が夜な夜な突撃したそうです。3枚目)
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この旧海軍壕に行って驚いたのが、外国の人が多かったことです。英語とフランス語が聞こえてきました。展示の中には動画もあったのですが、最前列で食い入るように見ていたのは外国の方でした。普通の観光ルートには絶対上がってこない場所なので、どうやって調べてきたのだろうと不思議に思いました。もしかしたら、祖先がこの地で戦った人なのかもしれません。
慰霊碑と頂上からの景色。この日はとても空が青くて綺麗でした…。
(写真)
つづく
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