第23話 ヒマンドの大冒険
私の名前はヒマンド。
私は王城4階を死物狂いで脱出し、3階のオーク集落に辿り着いた。
階段を激しく転がったので、体のあちこちがズキズキと痛む。そして失禁で衣服はびしょ濡れだ。
「……はぁ……はぁ……さ、最大の難所は突破したぞ!」
王城の3階は、サブリナの家族も住むオーク集落だ。なので私に危害を加える事は、さすがに無いだろう。
「……や、やぁ、みんな!久しぶり」
私はオーク達に歩み寄って、恐る恐る挨拶をしてみた。
「ブヒィィ!(ムコ殿だ!)」
「ブヒィーっ!(嬉しい!)」
オーク達は私の姿を見ると猛ダッシュで駆け寄り、そのままみんなで私を胴上げしてくれた。
「…は、ははっ」
私が胴上げで宙を舞っていると、やがてそこにサブリナの父、オークキングが現れた。
「ブヒィ!(ムコ殿ではないか! お前らすぐに酒と飯の用意だっ!)」
「ブヒィィ!(いえっさー!)」
オークキングの命令を聞いた手下のオーク達は、すぐに胴上げを止めてどこかへ走っていった。
宙を舞っていた私は、そのまま固い地面に叩き付けられた。
「…ぐはあぁぁぁーっ!」
私の体はさらに激しく傷付き、体のあちこちから血が吹き出てしまった。
そうこうしていると、酒と食事の準備が終わり、オーク達は私を手招きした。私はフラフラしながら、どうにかその席に付いた。
テーブルには沢山の酒がある。どうにかこいつらを酒で酔わせて、この3階も早々に脱出しなければならない。
「さ、さあ、どんどん飲んでくれ」
「ブヒィィ!(すまんなムコ殿)」
私はサブリナの父であり、王城3階のボスであるオークキングにお酌しまくった。しかし奴はかなり酒に強いようで、全く酔う気配がない。
「ブヒィ!(ムコ殿も飲んで食ってくれ)」
「あ、ありがとう……」
私の眼の前には、オオトカゲの丸焼きがある。かなりデカくてグロテスクだ。私が食べるのを躊躇していると、オークキングは私を睨んで来た。
「ブヒィ?(どうした、口に合わないのか)」
「い、いやその……」
「ブヒィ!(お前ら、すぐにあれを持って来い!)」
オークキングの命令で、眼の前のオオトカゲの丸焼きが下げられ、別の丸焼きが出て来た。
よく見るとそれは、リザードマンという魔物の丸焼きだった。
体長は2メートル前後。顔こそはトカゲの様に見えるが、体は二足歩行の魔物である。皮の鎧も装備している。……いや、鎧は外して丸焼きにしろよ。
「ブヒィ!(さぁ目玉から食え)」
「…おええぇぇぇーっ!!」
オークキングがリザードマンの目玉をフォークで切り抜き、私に勧めて来やがった。私は何とかそれをかわし、太ももの肉にかぶりつく。
「…う、旨い! 太もも肉最高ーっ!」
「ブヒィ!(おぉ、喜んでくれたか)」
リザードマンの肉は猛烈に臭くてパサパサしていた。でもまだ目玉を食うよりはマシだったのだ。
「ブヒィ!(よし、デザートにしよう)」
「お、お構いなく……」
今度はテーブルにデザートが運ばれて来た。デザートはなぜか「カブトムシ」だった。何でもオスの角が珍味らしい。
躊躇すると、さらにとんでもない物が来てしまうので、私はカブトムシを丸ごと口の中に入れて、思い切り噛んだ。
ここは耐えるしかない!
「か、固くて美味しい……」
「ブヒィ!(おぉ、喜んでくれたか!)」
カブトムシの角はやはりとても固くて、私の口の中は血だらけになってしまった。
「ブヒィ!(よし、あれも持って来い!)」
「え!? もうお腹いっぱ……」
今度はテーブルに、カブトムシマンという魔物の丸焼きが運ばれて来た。
体長は2メートル前後。顔こそカブトムシの様に見えるが、体は二足歩行の魔物である。今度は青銅の鎧を装備している。……いや、だから鎧は外せって!
「ブヒィ!(さぁ目玉から食え)」
「…おええぇぇぇーっ!!」
オークキングがカブトムシマンの目玉をフォークで切り抜き、私に勧めて来やがった。私はそれも何とかかわし、太ももの肉にかぶりつく。
「…う、旨い! 太もも肉最高ーっ!」
「ブヒィ!(おぉ、喜んでくれたか)」
カブトムシマンの肉も猛烈に臭くて、やはりパサパサしていた。でもまだ目玉を食うよりはマシだったのだ。
──1時間後。
オーク達はようやく酒が回り、酔い潰れて眠ったようだ。
「…おえぇぇぇえーっ! 」
私は胃の中の魔物の肉を全て吐いた。
「……く、くそぉ、変な物ばかり食わせやがってぇ!」
だが、これで3階も突破だ。残るは2階と1階。私はボロボロになりながらも2階に繋がる階段を下っていった。
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作者のコマ凛太郎です。
また感想レビュー頂きました。私は猛烈に感激しています。本当にありがとうございます!
面白い展開考えて、また読者さんに楽しんでもらえたら幸いです!
がんばりまっす!
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