第21話 決着


 アンジェは「絶対王女蹂躙波メガ・サディスティック」を放ち、邪神の背中に大きな傷を付けた。


 しかし邪神はもろともせず、怒り狂いながらアンジェの方を向く。



「出来れば正面から素手で戦いたかったが、流石に無理か」



 アンジェは残念そうに、馬に飛び乗ってその場を離れようとする。しかし邪神はそんなアンジェを逃すまいと、また大口を開けた。



「ウンコ野郎っ、俺の事忘れてるぞ!」



 セロニアスはワイバーンから、邪神の後頭部に飛び乗った。そしてアンジェの付けた傷口に大剣をぶっ刺す。



「うおらあぁぁぁぁああーっ!」



 セロニアスは何かに取り憑かれた様に、邪神の傷口を何度も何度も大剣で斬り付けた。



「斬・斬・斬・斬・斬・斬・斬・斬っ!!」




───グΩじゲガddゾブンβヂュおzsグガぁぁーっ!!




 邪神は耳をつんざく様な、凄まじい悲鳴を上げた。その悲鳴は大地を揺るがすほどだった。




 しかし、邪神は後頭部からいくつもの触手を生やすと、セロニアスをそれで縛り上げてしまった。



「…気持ち悪いな、くそ!」



 それでもセロニアスは、力を振り絞りその触手をブチブチと引き裂いて脱出する。



「──兄上! ワイバーンに飛び乗れ!」

「……はぁ……はぁ……来たか!」



 セロニアスはアンジェに言われるまま、ワイバーンを呼びその背中に飛び乗った。しかし邪神は無数の触手を伸ばし、逃げるセロニアスをまた捕まえようとする。




 するとまた別方向から、巨大な衝撃波が邪神を襲った!




───グΩじゲガddゾブンβヂュおzsグガぁぁーっ!!



 邪神は紫色の体液を大噴出させ、爆音と共に地面に倒れた。周囲は土煙で覆われる。




「───国王音速破壊斬キング・ザ・ソニックブーム。決まったな」




 戦いの一部始終を見ていたモーリスは、巨大な衝撃波が放たれた方向を見た。すると、そこには元国王リチャードの姿があった。



「……リ、リチャード陛下!!」



 

 モーリスはそれ以降言葉を失い、倒れた邪神とそれを屠った戦士達を呆然と見ていた。



 セロニアスとアンジェはリチャードの方へ駆けて行き、久しぶりの再会を喜んだ。



「さすが父上ですな」

「ふ、いつか父上もこのアンジェが倒す」

「ははっ、2人とも頼もしかったぞ!」



 2人の兄妹は、邪神を倒した偉大な父を褒め称えた。リチャードも珍しく2人の子供達を称賛した。




「でも邪神を倒したからって天狗になるなよ」

「勿論です。3人がかりですからね」

「素手で倒したかった」

「邪神など、異大陸ではゴブリンくらいの強さかもしれないからな」



 3人は勝って兜の緒を締めた。



「…あ、邪神が少し動いたぞ」



 3人が話していると、倒れていた邪神がゆっくりと立ち上がろうとしていた。心なしかその姿は小さくなっているように見えた。




「おぉ、すげー生命力だ」

「父上兄上、今度は私にやらせてくれ」

「ダメだ。今やったら弱い者イジメになるぞ」

「セロの言う通りだ。アンジェ」

「確かに」



 さらに邪神の姿は小さくなっていき、禍々しい顔面から黒い翼が生えて来た。そしてその翼で羽ばたくと、空高く舞い上がっていった。




 




 

「……という訳なんだよカーター」

「は、はぁ」

「邪神との再戦が楽しみだよな」

「で、出来れば仕留めて欲しかったですけど……」



 俺、セロニアスは、城下街のとある酒場でカーターと酒を飲んでいた。


 邪神の被害でどの店も閉業していたが、一軒だけボロボロになりながらも気合で営業している店があった。



「いやぁ、マスターも気合入ってるよね」

「へいっ、有難うございやす!」

「これ少ないけど、チップね」

「い、いつもすいません旦那!」



 俺は大金貨を1枚、マスターに渡した。王国の住民は邪神騒動で殆どが他国に避難し、客は俺くらいしかいない。



 でも俺は「いばらの道」を歩もうとしているマスターが気に入り、常連になった。これからも頑張って欲しいものだ。




「それで陛下はどこに?」

「ああ、父上なら旅に出たよ」

「旅ですか?」

「魔獣のいる魔境を目指すと言っていた」



 俺の父上、元国王リチャードは「1人で邪神を倒せる様に修行したい」と言い残し、魔獣がうごめく未知の大陸を目指し旅立っていた。



「そうなんですね。陛下らしいな」

「アンジェは傭兵稼業をするみたい」

「アンジェ団と戦う敵国が気の毒に思えますね」



 妹のアンジェは、500人の部下をそのまま率いて傭兵団を作った。すでにあいつらも王国を出て旅立っていた。次に会うのが楽しみである。




「しかし、本当に良かったんですか?」

「え、何が?」

「ヒマンドが国王だなんて」

「ザルーダとジョアンヌの願いだからな」

「セロ様も人がいいですねぇ」



 俺もアンジェも王位継承には興味が無かった。なのであんなに王国に固執するのであれば、ザルーダ親子に王国を任せようと思ったのだ。

 

 

「まぁでも、条件付きだけどな」

「え、どんな条件ですか?」

「あぁ、兵士も文官も逃げちゃったから」

「ですよね。1人もいませんし」

「なので魔物達を配下にさせたんだよ」

「えぇっ!?」



 邪神騒動で、王国を占拠していた帝国兵は殆どが死亡、または自国へ逃げてしまった。そして監禁されていた王国兵や文官も、その騒動で他国へ逃げたのだ。



 なので俺は仕方なく、地下迷宮の魔物達を王城に住まわせている。彼らならヒマンドを守ってくれるに違いない。


 サブリナも当然一緒だから、あいつも幸せだろうな。



「それと王国の名前も変えた」

「え、変えちゃったんですか!?」

「いい名前が浮かんでな」

「何ていう名前ですか?」

「ヒマンドのわんぱく王国」

「え!?」



 王国の名前は他にも候補があった。「ヒマンド・サブリナのラブラブ愛ランド」とか。


 でもヒマンドは、その名前はどうしても嫌だったみたいで「ヒマンドのわんぱく王国」になったのだ。




「ザルーダとジョアンヌも一緒ですか?」

「いや、あいつらは過保護だからな」

「そうでしたね」

「ヒマンドと離した方がいいと思った」

「なるほど。邸宅は城下街ですか?」

「いや、地下迷宮に住わせてるんだ」

「えぇぇぇーっ!?」



 酒も回って、俺とカーターは世間話に花を咲かせ、気分を良くしていた。



 全てが上手くいって本当に良かった。






 第1章 完




=============




 作者のコマ凛太郎です。


 これにて第1章は終了となります。面白い作品が星の数ほどある中、私の作品なんかをここまでお読み頂けて、本当に感謝しかありません。


 本当に、ありがとうございます!!

 


 それと、今までは毎日更新でしたが、第2章から不定期更新となり、UPする時間帯もバラバラになるかと思います。


 なのでまだブックマークしてない方は、この機会にしておいて頂けると更新通知がされますので、とても便利です。宜しくお願い致します。


 

 それとぜひ、★の評価などを頂けますと、作者は号泣して喜びますのでこちらも宜しくお願いします!



 では風邪など引かないよう、お互い年末をがんばっていきましょう!

 

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