第19話 ジェット・ストリーム・アタック


 王城の北門を抜けた広大な中庭にて、サブリナ姉妹とドメスト将軍が対峙していた。



「ぶわはははーっ! オーク2匹で何が出来ると言うのだ!」

「ブヒィィ!(姉妹の力見せてやる)」



 サブリナは戦斧を振りかぶり、猛然とドメスト将軍に襲い掛かった。しかしドメスト将軍は微笑を浮かべる。



「……ふ、お前は囮なんだろ!?」

「──ブヒィ!?(何ィ!?)」



 ドメスト将軍は、サブリナの背後から姿を見せたキャサリンの攻撃を読んでいた。キャサリンの戦斧はドメスト将軍の剣に跳ね返される。


 しかし、キャサリンの背後から、さらにもう1匹のメスオークが姿を現した!



「──何だとおぉぉっ!?」

「ブヒィッ!(もらったぁぁ!)」



 3匹目のメスオーク、マチルダの戦斧はドメスト将軍の急所を捉えた。



「……さ、3匹いやがったのか!?」

「ブヒィ(私達は3姉妹なのよ)」

「…くっ……む、無念だ」

「ブヒィ(永久とわに眠れ、人間の勇者よ)」




 魔物達は、サブリナ、キャサリン、そして末っ子のマチルダの活躍で、ドメスト将軍の守備隊を撃破する事に成功した。



 そして、魔物のボス達は崩壊した北門を見て「王城の別の門もついでに攻撃してしまおう」と話し合い、配下の魔物に指示を出した。



 これにより、王城の東西南北の門が次々と崩壊する。









「ザルーダ様、北門が崩壊しました!」

「…な、何だとぉぉぉーっ!?」



 北門が崩壊し、魔物がなだれ込んで来ているという急報が入った。ザルーダはすぐにジョアンヌと共に側近の兵士5名を連れて、東門へと逃亡を企てた。




「…はぁ……はぁ……」

「も、もうダメ、これ以上走れないわ!」

「…しっかりしろ、ジョアンヌ!」



 ザルーダもジョアンヌも全力疾走で、命からがら東門の近くまでやって来た。




 しかし……



「ザルーダ様、東門も崩壊寸前です!」

「…そ、そんなぁぁぁっ!」



 東門も崩壊寸前、魔物がなだれ込んで来ているという急報が入った。ザルーダはすぐにジョアンヌと共に側近の兵士5名を連れて、今度は南門へと逃亡を企てた。




「…はぁ……はぁ……」

「も、もうダメ、これ以上走れないわ!」

「…しっかりしろ、ジョアンヌ!」



 ザルーダもジョアンヌも全力疾走で、命からがら南門の近くまでやって来た。




 しかし……



「ザルーダ様、南門も崩壊寸前です!」

「…ふ、ふざけるなぁぁぁーっ!」




 南門も崩壊戦前、魔物がなだれ込んで来ているという急報が入った。ザルーダはすぐにジョアンヌと共に側近の兵士5名を連れて、最後は西門へと逃亡を企てた。




「…はぁ……はぁ……」

「も、もうダメ、これ以上走れないわ!」

「…しっかりしろ、ジョアンヌ!」



 ザルーダもジョアンヌも全力疾走で、命からがら西門の近くまでやって来た。




「ザルーダ様、南門も崩壊してますよ!?」

「…も、もうやめてえぇぇーっ!」




 ザルーダとジョアンヌは体力の限界を超えてしまい倒れ込んだ。そしてジョアンヌはザルーダにしがみ付いて言った。



「あ、あなた、…どうするのよ!?」

「……も、もう終わりだ、ジョアンヌ」

「そ、そんなあぁぁぁーっ!」

「くそっモーリスは一体何を……」




 ザルーダとジョアンヌが絶望していると、そこに新たな伝令が走って来た。



「ザルーダ様! 申し上げます!」

「くっ、魔物に占拠されたか…」

「魔物の軍勢が……」

「お、王城が占拠されたんだろ?」

「ヒマンド様を連れて、全軍引き上げました!」

「……はい?」



 ザルーダとジョアンヌはお互いの顔を見合わせた。



「……か、帰ったというのか!?」

「は! 魔物達は全て帰りました!」

「う、嘘だろ!?」

「事実であります! しかしヒマンド様が連れ去られました!」




 ザルーダとジョアンヌは命が助かった喜びと、息子のヒマンドが連れ去られたショックで、自分達の感情がよく分からなくなってしまった。




 するとそこに、また新たな伝令が走って来た。



「ザルーダ様、申し上げます!」

「しついこいぞ! 今度は何だっ!?」

「帝国軍により、我が国の城塞都市が全て占拠されました!」

「……はい??」

 


 ザルーダとジョアンヌはお互いの顔を見合わせた。



「「はあぁぁぁああーっ!??」」






♨ 





 その頃、花婿ヒマンドを無事救出した魔物の軍勢は、地下迷宮に戻っていた。セロニアスはヒマンドにお酌をして話しかけた。



「本当に良かったなぁ、ヒマンド」

「…………」

「そうか、嬉しすぎて言葉もないかぁ」




 地下迷宮、第3階層では魔物達が集まり「ヒマンドお帰りなさいの会」が催されていた。



 縦長テーブルの両脇は魔物のボス達が座り、上座には新郎新婦のヒマンドとサブリナ、そしてオークキングとセロニアスが酒や食事を楽しんでいる。



「いやぁ、それにしても良かった」

「ブヒィ(2人の絆は永遠だ)」

「グガァ(若いっていいなぁ)」

「ゴブッ(2人の子供が楽しみだ)」

「ウンモゥ(そろそろ邪魔者は退散しますか?)」



 セロニアスと魔物のボス達は若い2人に気を使い、その場を後にした。



 そして、ヒマンドと2人きりになったサブリナは頬を赤く染める。



「ブヒィィィっ!(ダーリン)」

「…ひ、ひいぃぃぃいいーっ!」



 サブリナはヒマンドを脇の下に抱えると、2人の寝室の方へと走っていった。



「…た、助けてくれえぇぇぇーっ!」




 地下迷宮にはヒマンドの悲鳴がいつまでも響いていた。






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【タイトル変更のお知らせ】



 作者のコマ凛太郎です。いつもこの作品を読んで下さりありがとうございます!



 ブックマーク、評価、めちゃくちゃ嬉しいです。マメにいいねを下さるのも、とても励みになっています。




 さて、ご迷惑おかけしますが、タイトルを少し変更させて頂こうと思います。



【旧タイトル】


暗躍する救国の英雄だけど、無能のバカ王子と罵られ追放されそうになったので、優しく教育してあげたら泣いて喜んでくれた。あれ?みんな泣き止まないのは何でだろう?



【新タイトル】


死刑囚にされた陰の英雄。邪神を封じ込めた実力を出してクズ人間を教育してたら、いつの間にか大陸の覇者になっていた。



 宜しくお願い致します。


 

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