105:vsアリシアさん
───────《ステータス》───────
【種族】グリーンスライム《加護:クトゥグァ》
【神格】地母神[第6級]
レベル:212
神性:110,562 [+10,000,000]
体力:201/201
魔力:172/197
膂力:71
敏捷:68
魔攻:70
魔防:65
【スキル】[スキルポイント:12]
・光合成Lv35
・種子生成Lv50
・土壌改良Lv15
・木獣使役Lv2
・形状変化Lv5
・硬化Lv10
・促成栽培Lv6
・神格解放Lv1
・神格解放[クトゥグァ]Lv1
・聖性付与Lv2
・意思疎通Lv1
・耐火Lv5
──────────────────────
マジマジと観察することになる。
正直、俺の中では喜びよりも、戸惑いの方が大きかった。
え、なんで?
何があってのこの結果なわけ?
俺には
もしかして、哀れに思われた?
んで、守ってあげなきゃって思われた?
クトゥグァさんって、ヒモ男に寄生されがちって言うか、ダメンズ好きな危うい系であったりしますか……?
(い、いやまぁ、うん)
俺はクトゥグァさんの性癖についてはひとまず横に置いておくことにした。
それよりも、協力してもらえたっぽいことが重要だよね。
そして協力してもらえて何が変わったのかと言えば、それは神性の数値だろう。
ドカンとえーと……プラス1千万?
素の数値が10万ちょいであることを考えると、もはや生活水準が一変しちゃうレベル。
神格については11級からドドンと6級へ。
獲得出来るスキルは綺麗に様変わりしているだろうね。
理不尽極まりないようなスキルもリストアップされている予感が。
ただ、俺のスキルポイントはわずかに12。
じゃあロクに獲得出来ないじゃんってなるんだけど、これはクトゥグァさんの優しさなのかな?
スキル欄には、クトゥグァさん名義の神格解放が追加されているのだった。
─────《逕溘″繧狗↓縺ョ蜉?隴キ》─────
・縺昴l縺ッ譬?∴繧九b縺ョ縺ァ縺ゅj縲∽シ晄眺縺励?∽セオ迥ッ縺吶k縲
──────────────────────
俺は慌てて詳細を確認しようとしたのだが、ここで異文化コミュニケーションのお時間である。
ダメだ、何も分からん。
あるいは意思疎通のレベルが上がれば解読出来るのかもだけど、現状だと無理ね。
何が起きるのかなんて想像も出来ないと言うか、出来たとしたらそれはただの妄想である。
なんにせよ、頼れるのはこの謎スキルか。
アリシアさんを打倒するためには、このスキルが素晴らしい理不尽パワーを秘めていることに賭けるしかない。
よって、早速発動してみましょうか。
逕溘″繧狗↓縺ョ蜉?隴キ。
発音も出来ないコレに、俺たちの命運を賭けてみるとしましょう。
「……こ、これは?」
ユスティアナさんは目を見開いて、俺を含めて自身を見下ろす。
彼女の驚きの原因はよく分かった。
なんか発光してません?
きっと俺からもなんだろうけど、キツイ赤色のオーラっぽいものが彼女からは発せられていた。
どうやら、これがクトゥグァ先生の神格解放らしい。
赤い発光機能を授ける。
これで夜道も安全……って、い、いやいやいや。
俺はひじょーに冷や汗的な心地だった。
さすがにそれは無い。
あって欲しくは無い。
そんな激しいツッコミ待ちみたいなのが、このタイミングの切り札であって欲しくは無い。
ただ、ユスティアナさんのステータスを確認しても、俺に引きずられて神性が上がっているぐらいの変化しかないんだよなぁ。
じゃあ、やっぱり発光機能?
QOLを上げるための神格解放だったりします?
なんかもう不安しかないんだけど……って、おっと?
「邪教徒どもめがっ!! 滅びよっ!!」
多分、立ち尽くす俺たちが無防備にしか見えなかったんだろうね。
触手ヅラの一体が、幾本もの触手をそびえさせながらに襲いかかってきた。
「すみませんっ!!」
ユスティアナさんの叫びは、多分俺に対するものだった。
俺をペイっと地面に放り、鞘に収めていた長剣を瞬時に引き抜く。
斬撃。
触手ヅラは、伸ばしていた触手ごとに胴体を両断される。
ただ、もちろんこれで致命傷では無い。
この程度では、この異常な連中たちどころに再生する。
そのはずだった。
だが、
「あ、あああ、あっ!? ひぃ、あぁぁっ!?」
触手ヅラは上半身だけでもがき苦しんでいた。
再生が始まる様子は無い。
よく見ると、傷口にはチラチラと赤いものが見えた。
俺は加護ってくれたお方について思いを巡らせる。
そう言えばでも何でも無く、あの方って炎の神様だもんね。
不条理にして尽きることの無い炎の化身。
だからこそのコレなのか?
火は燃えて、広がるもの。
傷口に火を宿し再生を阻害。さらには
「あ、ああ、アリシアさまっ!! 助けをっ!! ど、どうか、どうか救いを……っ!!」
触手ヅラにはもはやどうしようも無いらしい。
必死に助けを請うているのだが、問われた当人はそれどころでは無い様子だった。
燃え尽きようとする触手ヅラを目を見開いて見つめ続ける。
そして、燃えカスから目を離すと、そのままの表情で俺に向けて首をかしげてきた。
「まさか……そういうことですか? 貴方が……いや、まさか? クトゥグァを滅ぼしたと? その力を
そんなことはあり得ない。
彼女の表情からは、そんな思いがひしひしと伝わってくるのだけど、まぁ、実際そうじゃないですしね。
『え、えーと、違います。お願いしたら、なんか応じてくれたと言いますか』
「は、はい? 応じて?」
『そうです。ナイアーラトテップ退治に協力するので、貴方にも協力お願い出来ませんか? って、そんな感じで』
アリシアさんは、まったくらしくない表情を見せた。
あどけない幼女のようにポカンと口を開く。
「……つまり、クトゥグァと交渉を?」
『そういうことですね、はい』
「……不条理なる炎神と? 災厄の化身と? そんなものと話し合いが出来ると、貴方は本気でそう思ったのですか?」
『意思の疎通が出来るアテがあったので、なんとかなるんじゃないかと……って、あ、アリシアさん?』
俺が思わず名を呼んだのは、彼女が不意にうつむいたからだ。
その肩は激しく震えていた。
何かに耐えようとして耐えきれそうに無いといった様子で、そして、
「……ふふ」
小さく笑い声が洩れ、それが皮切りとなった。
彼女は笑った。
枯れ木の森のどこまでにも響き渡りそうなほどに、盛大に笑い声を響かせた。
目の端に涙さえ浮かべていた。
彼女は人差し指でそれをすくい、俺に愉快そうに笑みを向けてきた。
「あ、あな、貴方はまったく……そうですね。失念していました。貴方もまた、ある種の不条理な存在でしたね。常識が通じないといったらありません」
『い、いや、割と常識はある方だと思いますけどねぇ?』
「あはは、まさかっ! 貴方は善良であるだけです。常識なんてまったくそんな。あの炎の神と話し合おうなどと、普通の感性ではとてもとても……ふふふ」
アリシアさんはクツクツとこらえきれずに笑い続ける。
そんな彼女に対して、ユスティアナさんが一歩進み出た。
真剣そのものの表情で口を開く。
「……アリシア様。ご覧になった通りです。我々は力を手に入れました。そしてそれは、十分にこの世に平穏を取り戻しうるものです」
「ふふふ、そうですね。その余地は十分にあるでしょうね」
「その時がやっと来たのです。共に進みましょう。我々と共に、この地に真の平穏を取り戻しましょう」
ユスティアナさんは静かに片手を差し出した。
アリシアさんはじっとそれを見つめる。
そして、彼女に笑みを返した。
それはきっと、邪神の聖女としてのものでは無かった。
ユスティアナさんの知る、本来の聖女としての笑みだった。
「1つ、忠告しておきましょう」
ユスティアナさんもそうであれば、俺もまた後ずさることになる。
突如として、アリシアさんに変貌が始まった。
それはリリーさんやリンドウさんの神格解放と似て、しかし邪悪であった。
ゴボゴボと泡立ちながらに体積が膨れ上がっていく。何モノかを形作っていく。
すでに、アリシアさんの面影は顔しか残っていない。
その顔が優しく俺たちに微笑みかけてくる。
「クトゥルフは異界の海底、ルルイエにて深い眠りの中にあります。感応も浸蝕も全ては
最後の助言。
そんな気配しか無かった。
出現したのは、青々としておぞましく光る巨大な鯨だ。
混沌の触手をもって大地に根を張る、異常なる海獣。
怪物がアギトを開く。
そこには無数の
海獣が動く。
大地ごと俺たちを呑み込まんと迫りくる。
抵抗するしか無かった。
ユスティアナさんは悲痛な舌打ちをもらす。
長剣を下段にへと構える。
「御使い様は私の後ろにっ!! 神格を解放しますっ!!」
俺は慌てて彼女の背後に隠れる。
そして、彼女の神格解放について思いをはせる。
──────《剣の使徒》──────
・その剣閃に刀剣の
──────────────────
これがユスティアナさんの神格解放だ。
武器を持っていなくても戦える。
剣閃を放つことが出来る。
そう読むことも出来るが、実際はどうなのか?
「……なるほど」
その詳細を、彼女は感覚として理解したらしかった。
アリシアさんの変じた巨鯨は、まだまだ刀剣の間合いの外だ。
だが、ユスティアナさんは下段の構えを深めた。
雷光を思わせる踏み込み。
剣尖が走る。
目で追うことは敵わない速さで、刃は逆袈裟を描き──なるほど。
刀剣の
その剣閃は刀剣の間合いには収まらなかった。
巨鯨が裂ける。
ユスティアナさんの斬撃の軌跡に従って、2つに断たれていく。
それで終わりだった。
赤い火の粉がちらちらと揺れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます