99:わりと好調……?
食虫植物。
ニッチのようでけっこう好きな人は多いんじゃないかな?
俺は現実逃避によく自然系番組を見ていたけど、特集を全く見ないって年は無かった気がするし。
んでまぁ、今回登場していただいたのは、そんな食虫植物においても多分知名度のあるお方だ。
──────《ハエトリグサ》──────
・巨大化Lv50
・強靭Lv50
・強酸Lv50
・耐刃Lv50
────────────────────
詳細はこんな感じであり、名前はハエトリグサ。
葉の上に留まったハエやらアリやらを、トラバサミ的に捉えて消化する系の食虫植物だ。
当然、本来は海魔をひと呑みに出来るような巨体では無い。
ジュージューなんて眉をひそめたくなるような音と共に、強烈に獲物を吸収するようなことも無い。
分かりやすく特性の成果だ。
スキル種子生成のレベルを上げておいたので、特性の効果は目に見えて上がっている。
結果、こんな地獄の植物めいた姿になりあそばられたのでした。正直、ぐろい。
ともあれ、良い感じっぽいね。
前回の集落での戦闘においては、クズやバラのツルでは海魔を拘束することは出来なかった。
捕えた端から引きちぎられるような様子だった。
やっぱり、強酸で弱らせていることがポイントかな?
今のところ、インフェルノなハエトリグサに捕まって脱出に成功した存在はいない。海魔だとか触手ヅラとかも、葉の内側で悶えるのみだ。
大成功だと言えた。
出現した化け物どもについては残らず捕らえることに成功し、触手ヅラについても7割方いけたかな?
ちなみにだけど、魚顔の人たちは無事です。
俺が彼らを巻き込まないように注意を払っていたってこともあるけど、それ以上に彼らは戦場に足を踏み入れてはいなかった。
多分、ブワイフさんにそうするように言い含められていたのだろうね。良かった良かった。
ちなみにちなみにとして、ブワイフさんも無事です。
いや、一応敵サイドであり、参戦されたら困るんだけどね。
ただ、あらかじめ休戦協定が結ばれているのだ。
前回の
となると、狙うのもどうかって話で。
どうせ避けられたような気はするけどね。あの人かなり強いっぽいし。
しかしまぁ、うん。
彼女については気を使った覚えは特に無いんだけどなぁ。
アリシアさんはハエトリグサの難を逃れていた。
呑まれた味方たちに呆れの表情を向けている。
「つくづく情けない。高い次元の存在などと浅ましくも
なかなか手厳しいと言うか、彼女の触手ヅラたちへの本心が滲んでいるような感じだった。
味方であれど、信用も尊敬もしていないんだろうねぇ。まぁ、そりゃあね。
ともあれ、大打撃を与えることが出来たのは間違いない。
俺は首をかしげる的にぐねりとして見せる。
『えー、撤退なんていかがでしょうかね?』
そうあって欲しいなぁって問いかけだったが、そうですね。ダメですよね。
一瞬だが、アリシアさんは意味深に目を細めはした。
おそらくは撤退に合理性を見出そうとしての反応だった。
だが、やはり妥当だとは判断出来なかったらしい。
「……さして問題はありません。現状は
まぁ、でしょうねってご発言なのでした。
ブワイフさん曰くなのだけど、彼女が最大にして最強の戦力で間違いないでしょうし。
と言うことで、さーてはてさて。
いよいよアリシアさんが動き出す雰囲気だけど、本当さてはて。
最大の難題のお時間だった。
俺たちの目的は時間稼ぎだ。
クトゥグァが出現することを祈っての時間稼ぎ。
そのためには、どうしても彼女を抑え込む必要があった。
不死に近いらしい彼女と、どうにかして渡り合い続ける必要がある。
もちろん、それは俺には無理だ。
彼女の戦闘スタイルは分からないが、ぷちってなる未来しか見えないわけだし。
「……さて」
「きゅーっ!」
当然、アリシアさんの相手は我らが主戦力であるお二方だ。
リリーさんにユスティアナさん。
機を見てといった感じで現れてくれたお二方が、アリシアさんの前に立ちふさがる。
(よーしよし)
俺は胸中で頷くことになる。
クトゥグァ不在という致命的な問題はあれど、現状は非常に順調だった。
予定通りにことが進んでいる。
ハエトリグサ
そうして、リリーさん、ユスティアナさんの手を空かせ、アリシアさんと
───────《ステータス》───────
【種族】ツリードラゴン[聖獣]
【神格】武神[第12級]
レベル:172
神性:0[+22,112]
体力:220/220[+40]
魔力:205/205[+39]
膂力(x2.5):452[+35]
敏捷(x2.5):430[+32]
魔攻:185[+14]
魔防:192[+12]
【スキル】[スキルポイント:76]
・光合成Lv30
・耐火Lv60
・魔力変換(膂力)Lv30
・萌芽聖性Lv15
・神格解放Lv1
──────────────────────
これがリリーさんのステータスであり、
───────《ステータス》───────
【種族】エディア[聖騎士]
【神格】剣神[第12級]
レベル:58
神性:0[+22,112]
体力:201/201[+40]
魔力:170/170[+39]
膂力(x2.5):227[+35]
敏捷(x2.5):302[+32]
魔攻:89[+14]
魔防:99[+12]
【スキル】[スキルポイント:39]
・魔力変換(膂力)Lv25
・魔力変換(敏捷)Lv25
・神格解放Lv1
──────────────────────
これがユスティアナさんのそれだ。
ちなみに俺は……まぁ、いっか。
もはや比較対象にもならないレベルだしね、うん。
ともかく、明確に俺たちの中での最強戦力である。
特筆すべきは、まず膂力、敏捷の倍率が2.5倍になっていることか。
これは俺の種子生成のレベルを上昇させておいた結果だ。
パンジーのバフ特性のレベルもまた上がりまして、聖性対象者で2.5倍、それ以外で2.0倍。
まぁ、良い効果だよね。
ただでさえ強いリリーさんにユスティアナさんなので、鬼に金棒的な感じかしらん?
さらにもう1つ。
注目すべきは、ユスティアナさんが神格解放を獲得していることか。
残念ながら試すだけの時間の余裕は無かったのだけど、フレーバーテキスト的な説明から出来ることに検討はついている。
多分、強力。
きっとね、多分。
私はそう願っておりますので、どうかよろしゅうに。
なんにせよ、ここからが本番だった。
神格解放を絡めながらにどれだけ時間を稼げるのか。
あるいは彼女を撤退に追い込めるのか。
しかし、彼女自身の見立てはどうなんだろうね?
アリシアさんは静かに小首をかしげる。
「そうですか。貴方たちだけで私を相手にするつもりですか」
それでは不十分。
そんな発言に聞こえたけど、我らが騎士殿は不服のようだった。
ユスティアナさんは「ふん」と軽く鼻を鳴らした。
「1つ言わせてもらいます。貴女は本来、戦う人間ではありません。精神性においては特にそうでしょう。決して荒事に向いてはいない。
「まぁ、そうですね。そこの否定は出来ません」
「一方で私は違う。この子……リリーさんも武人としての精神性において、貴女よりもはるかに優れている」
難しい言葉が並んでいたが、それでも褒められたって察したのだろう。
リリーさんは腕組みをして、なんかこう強者っぽいポーズを見せたのでした。
まぁ、実際強いんだけどね。
ステータスの高さはもちろん、戦闘に際してこの子は微塵も臆するところを見せないし。
そんな1人に1体だからこその自信なのだろうか。
俺からは背中しか見えないけど、ユスティアナさんの立ち姿にはまったく揺らぐところは無かった。
「現状において、私たちでは貴女を滅するようなことは適わないのかも知れない。だが、貴女が音を上げるまで相手することは
俺は心底期待をするのだった。
本当、頼り甲斐があるってこれ以上のことは無いよね。
時間稼ぎ以上の成果だって夢じゃないような気がしてくるよね。
あるいは、アリシアさんにとっても頼り甲斐のある発言として響いたんじゃないかな?
ただ……実際に彼女の表情にあるのは濃い苦笑であった。
「だから、貴女には甘いと言わざるを得ないのです」
続くその言葉の意味は何なのか?
俺はなんとなく察するのだった。
これは……そ、そういうことだよな?
慌てて周囲を見渡すと、これはおぉっと?
『ひ、ひぃぃっ!?』
なんかもう悲鳴を禁じ得なかった。
気がついた時には、触手ヅラの1体が俺のほとんど目前にまで迫ってきていたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます