49:vs炎ゴリラ(やっぱりやばい)
原始なる
神格解放によって、俺はそんなスキルを一時的に使用出来るようになったようでした。
はい。
何も分からん。
このスキルによって何が出来るのかって、名前から伝わってくるものがほとんど無い。
よって、炎ゴリラが迫りくる中、俺はログ先生に尋ねることになった。
申し訳ないのですが、なる早で詳しいところをお願い出来ませんか……?
───《原始なる
・意識の及ぶ限りにおいて、その偉大なる創造を阻むものは無い。
────────────────────
結果はコレである。
俺は思わざるを得なかった。
ログさん、まさか壊れちゃいました……?
いや本当、いつものログさんらしく無かったのだ。
いつもは機能を明快に説明して下さっていたのだが、今回はどこかムーディーと言うか。
つーか、フレーバーテキスト?
明確な説明をしようという努力が正直感じられないんだけど……まさか?
ログさん、諦めちゃった?
どうせ勝てっこ無いからって、投げやりになっちゃいましたか?
これはもう、うん。
辞世の句でも考え始めるべきかしらん?
女騎士さんを見習いた気分だった。
絶望に全身どっぷり
ただ、俺の隣にはリリーさんがいる。
背後にはリンドウさんや女の子さんたちがいる。
俺は余計なことを考えないことにした。
とにかく信じましょう。
ログ先生はいつだって正しかったのだ。
だから、偉大なる創造?
よく分かんないけど俺にはそれが出来るはずであり、炎ゴリラは炎剣を振り下ろしてきているのであり、一瞬先は焼きスライムであって……よ、よし!!
俺は咄嗟に想像……いや、創造?
とにかく試みた。
闇ゴリラを、竹に促成栽培をかけて空に打ち上げたことがあったけどさ。
俺はそのアイデア元に思いを馳せることになった。
セコイアだね。
あの天を貫く巨木の威力であれば、炎ゴリラだってただではすまないはずなのだ。
だから、そうあれと願った。
そして、叶った。
これまた瞬きの間の話だ。
ゴッ!!! と鈍くも絶大な衝撃音が響く。
そして、上空だ。
炎ゴリラの姿はそこにあった。
数十メートルを超える高みにおいて、青空を背景に舞っている。
(……え、えぇ?)
炎ゴリラの空中遊泳を見上げつつ、俺は唖然とせざるを得なかった。
これ……なんですかね?
良くわからないし、あってはいけないような気もする。
思っただけだった。
それだけで、何の苦労も無く現実は変化してしまった。
まったくもって神の領域だ。
なにか違うと思えた。
これで良いのかと思えた。
まぁ、土壌改良や種子生成だって、考えてみればおかしい力だけどさ。
だけど、こうも
ある種、
まぁ、はい。
俺の現状はと言えば、妙な嫌悪感を抱いている場合じゃ全然無いんだけどねー。
耐久面でも炎ゴリラは闇ゴリラとは比べ物にならないらしい。
さほどダメージは無いようだった。
炎ゴリラは空中で姿勢制御。
数十メートルの上空より、足から綺麗に地上へ……ズズン。
全身で衝撃を吸収したといった様子だった。
炎ゴリラは見事地上に降り立った。
そして、すかさずだ。
炎剣を掲げての突撃が開始される。
(ひ、ひぇぇ……)
馬鹿げた強敵だよね、本当。
だから、全力だ。
残りはえーと、4分ちょっと?
神格解放には制限時間がある。
このインチキパワーが使える間に、全力で炎ゴリラを撃破しなければならない。
ということで、よーし。
ひとまずとして、とある光景を俺は脳裏に描く。
それはすぐに現実に反映された。
黄色の花畑だ。
廃村と墓場の狭間の地は、見渡す限りでパンジーの黄色に覆われることになった。
もちろん、アレである。
特性として、範囲膂力上昇、範囲敏捷上昇が付与してある。
さらには強靭、耐火と花自体に防御性能を付与してもあった。
これでお花が一瞬で全滅するようなことは無いだろうね。
そして、
「きゅーっ!!」
今が攻め時だと判断してくれたらしい。
突如の花畑に驚きはあっただろうけど、リリーさんがすぐさまに飛び出してくれた。
バフの影響もあって、その突撃はまったく閃光のようだ。
瞬く間に炎ゴリラに
あとは一撃が入りさえすれば。
倍化した
一撃必殺とはいかずともタダではすまないはずだ。
形勢は一気に俺たちにへと傾くはずだった。
だが、
「きゅ、きゅうーっ!!」
リリーさんのもどかしげな叫びが響く。
炎ゴリラはやはり単純では無かった。
突撃を断行することは無く、選んだのは回避だ。
恐ろしい俊敏さだった。
目を見張る素早さで後退し、リリーさんの攻勢を余裕をもっていなし続ける。
もちろん、俺も参戦する。
リリーさんに配慮しつつも、セコイアの槍にバラのツルだ。
少しでもダメージを与えられはしないか?
あるいは足を止めることは出来ないか?
そう思って、
だが、
(は、速……っ!? いや、う、上手い?)
セコイアの槍は全てが空を突くのみ。
バラのツルは、炎ゴリラが過ぎ去った跡をむなしく
一応、俺なりに先読みしているつもりなのだ。
リリーさんから逃げる先を予想して仕掛けているつもりなのだ。
だが……む、無理だ。
当たる気がまったくしない。
もう一面槍だらけにしてやろう。
そう思って実行したのだが、それもダメだった。
巧妙なのだ。
炎ゴリラは俺の視界の外へ外へと絶え間なく動き続けている。
俺の意識の及びにくいところでの戦いを選び続けている。
もちろん巧者は向こうである。
素人の攻め口など手に取るように分かるってことなのかね?
炎ゴリラは華麗に俺たちの攻勢をさばき続ける。
時間ばかりが過ぎていく。
俺がインチキパワーを発揮出来る時間が、無駄に消費され続け……あ、あわわわ。
(た、助けてーっ!!)
俺は思わずよそ見だった。
くだんの彼女──女騎士さんに
む、無理なの。
2匹じゃ無理なの。
攻撃、全然当たんないの。
だから、手数。
手数がきっと必要なの。
貴女が参戦してくれたらね?
あるいは炎ゴリラも手一杯になって、リリーさんの攻撃が当てられるかもなのだけど……あー、うん。
やっぱりダメそうですね。
彼女は怒っていた。
真っ赤な顔をして何事かを怒鳴っていた。
その相手は炎ゴリラでは無い。
俺たちに向けて彼女は怒りを叫んでいた。
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