47:vs炎ゴリラ(くとぅぐあ?)
(……く、クトゥグア?)
俺はあらためて炎の巨人を見据える。
きっとアレを指す言葉なのだろうか。
クトゥグア。
俺は
それとも、この炎形態のことをそう呼んでいるって話?
あるいはそれとも……中身についての呼称なのだろうかね。
中身。
闇ゴリラの中身。
いや、うん。
アレは絶対に着ぐるみとかでは無いわけで、妙なことを考えていると我ながらに思うのだ。
ただ、今までの闇ゴリラと現在の炎ゴリラの中身が同じだとはまったく思えない。
炎ゴリラは妙な動きを見せていた。
手首をさすり、回し、手のひらを握っては開いてを繰り返している。
これがどう見えるかって話だよなぁ。
俺にはアレだ。
新しい体の具合を確かめている。
そんな様子に見えた。
もしかして
どこぞのどなたか……クトゥグアと呼ばれている何者かが、闇ゴリラに憑依してるって感じなのでは?
それも、あっつあつの火炎のオマケ付きで。
いや、火炎が本体だったりする?
火の精霊なり邪霊に取り憑かれているって、そんなノリ?
ともあれ、俺は理解しなければならないようだった。
浮かれている場合じゃないよね、これ。
それどころかけっこうなピンチ?
アレの放つ威圧感は、闇ゴリラや肉塊なんて比べものにならないのだ。
『た、退避……っ!! って、い、いや』
俺は思わず逃げ
俺たちの背後には、女の子さんを含めての人間さんたちがいるのだ。
(ひ、ひぃぃ……)
まさか俺がこんな重責を背負うことになろうとは。
押しつぶされそうと言うか、いっそ消えて無くなってしまいたいような気分だけど……む、無責任なことを考えている場合じゃないよな。
『お、女の子さんにリンドウさんっ!! 退避してっ!!』
俺はとりあえずとしてそう叫んでいた。
多分、無理なのだ。
黒カニや灰色との戦闘もあって、女の子さんですら俺より能力値は高くなっているかもだけれどね。
ただ、彼らはきっと無理。
戦える状況ではまったく無い。
リンドウさんは冬眠スタイル的に丸くなりかけていて、女の子さんは肩の震えを隠せないようになっている。
彼らにもその自覚はあったらしい。
女の子はすかさずの頷きを見せた。
震える足を動かして、墓場の人間さんたちの下に
あの子を持ち上げてくれたのでした。
そうして女の子さんはリンドウさんを抱き留めながらに避難してくれた。
(ふ、ふぅ)
これでひとまず彼らは安全かな。
ただ、俺たちは風前の灯火でしょうかね?
俺はリリーさんと並び立つようにして炎ゴリラと対峙する。
えーと、どうだ?
これに勝てますかね?
メラメラとエフェクト強めだけど、これが演出に過ぎないのであれば。
俺は背後のパンジーを意識する。
これのバフもあって、リリーさんは一撃で闇ゴリラを
炎ゴリラになっても能力値が同じでなのであれば……まず、いけるだろう。
ただ、非常に熱そうではあるので、俺は自身とリリーさんのスキルポイントを急ぎ消費する。
俺は耐火を獲得した上で、ポイントの限りでレベルを10まで上げる。
リリーさんについては、2倍程度もあれば十分か?
32から60にまでとりあえず上げておく。
よし。
俺についてはいささか不安だが、リリーさんはおそらく大丈夫。
殴りかかって、炎リリーさんに進化してしまうようなことは多分無い。
『……リリーさん』
準備を終えての俺の呼びかけに、リリーさんはすかさずの頷きを見せてくれた。
分かっとるわい、って感じかな?
炎ゴリラがパンジーの影響範囲に入ったら、その時には速攻。
魔力変換を使用した上で、速攻で片をつける。
まぁ、これが必勝の勝ち筋であり、リリーさんは当然理解しておられたのでしょうね。
よって、待つ。
炎ゴリラの接近を待ち構える。
ようやく体の確認が終わったのだろうか?
炎ゴリラは悠然として動き出した。
一歩踏み出し、そして……ん?
動きが止まる。
炎ゴリラは何かを見つめているようだった。
その対象は俺では無い。
リリーさんでも無い。
俺たちの背後か?
そこには人間さんたちがいる。
やはりと言うか、人間さんが大好きなのかって思えたのだが、それも違う?
顔の角度的には、もうちょい近くだろうか。
俺たちのすぐ後ろぐらいを見つめてる?
(……まさか?)
俺は嫌な予感を覚えることになった。
まさかとは思うけど、え?
俺はちらりと背後を振り返る。
そこには黄色のパンジーがキラキラと咲き誇っているけど……まさか?
わ、分かってるのか?
あの子が俺たちの核心と言うか、戦術の
いやいや、そこまで賢くないやろ。
俺は無理やり安堵を得ようとしたのだが、お、おぉーっと?
不意に炎ゴリラはその長い腕を天に振り上げた。
まるで炎の柱が天を突くような光景だったけど、なんか長い?
炎が伸びてる?
まるで鞭? 剣?
ともあれ、十分だよね。
俺たちに十分に届く長さであり、もちろんパンジーにだって余裕で届く。
『か、回避っ!!』
叫んで、俺は必死に横に跳ぶ。
その判断はまったく間違ってはいなかったようだ。
一瞬のことだった。
俺とリリーさんの間を裂くようにして、長大なる炎剣が猛然と振るわれた。
リリーさんにしても俺が叫ぶ前に横に跳んでいた。
よって、回避は叶った。
ただ……だ、だよねぇ?
俺は唖然と見つめることになる。
パンジーさんだ。
俺たちを大いに助けてくれた黄色いお花は、炎にまかれて一瞬で
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