43:光明と前兆
女の子は目を丸くしているけど、俺も『へ?』と疑問の思いでぐにゃりだった。
どう考えてもだけど、俺の意思が伝わってたよね?
彼女の頷きは、俺の『がんばれー』に応えてのことだったよね?
これは……そういうことで良いのか?
『あ、あの……聞こえてます?』
女の子はこくりだった。
驚きの表情のままで頷きを見せてくれた。
うぉー、まじかー。
マジで伝わってますかー。
人間さんとの初めてのコミュニケーションだよね、これ。
驚きで言葉も無いわけだけど、そんな俺に対して彼女は
何故? これはどういうこと?
多分、そんなことをおっしゃっているのだろうけど、うん。
伝わってはこないね。
これはアレかな?
聖性を付与した結果として、一方通行の意思疎通が可能になったのかな?
(へー)
円滑なコミュニケーションとはいかないみたいだね。
その辺りは、スキルとしての意思疎通に期待すべきところなんだろうけど……うん。
これは思わぬ副産物だった。
ありがたいことこの上ない副産物だ。
『えーと、ごめんね。君の言葉は分からないんだ。それで……ありがとう。手伝ってくれて本当に助かったよ』
こうして、お礼を伝えることが出来るのだ。
ただ、彼女は手伝ってくれているつもりは無かったらしい。
かわいらしく小首をかしげておられるのでした。
どうやら種植えは、彼女にとってはリリーさんたちとの遊びだったみたいだね。
なるほど、なるほど。
楽しんでくれていたのなら、うん。
それはそれで悪くないかな。
良かった、良かった。
なんにせよ、不完全ながらに交流が出来るようになったらしい。
がんばれば、人間さんたちの事情と言うか、どんな経験をしてきたのかを聞くことも出来るかな?
まぁ、しないけど。
正直気にはなる。
ただ、どうせ悲惨極まる体験であり、女の子さんに嫌なことを思い出させるだけだろうしねぇ。
俺たちが味方ですから一緒にがんばりましょう。
そう伝えてもらうってのはアリかな?
ただこれも……人間さんたちがなぁ?
誰かの言葉を聞ける状況には無いだろうし、俺達が味方になるっていってもね?
じゃあ、闇ゴリラなんかをどうにか出来るのか? って聞かれたら、俺は口をつぐまざるを得ないし。
なんか、うん。
あらためて思うのだが、俺たちが強くなるってのが重要だろうねぇ。
人間さんと共に生きようと思えば……彼らに生きていてもらおうと思えば、それが本当にね。
ただ、どうだ?
俺は疑念の思いに駆られることになる。
神格とやらを得て、2つのスキルを得たけどさ。
俺たちは強くなったのか?
(ど、どうだろうなぁ?)
俺は『うーむ』と苦悩を漏らす。
強くなったのは間違いない。
聖性付与にしても、まだ試してはいないが神格解放にしても戦闘に貢献するもので間違いないし。
ただ、程度問題と言うか。
闇ゴリラを蹴散らせるほどの強化であるかと言えば……リリーさんに至っては強化は誤差レベルだしなぁ?
う、うーむ。
本当、光明と言えるほどじゃ無いな。
となると、残るは……特性か。
スキルと同じように、新しいものがあるのかな?
俺は確認を
い、嫌だなぁ。
もし何も新しい特性が無ければ?
あったとしても、それが役立たずであれば?
もう絶望だ。
本当嫌だなぁ。
現実と向きあいたく無いなぁ。
ただ、そういうわけにもいかないのだ。
俺は全身全霊で祈る。
どうかお願いします。
現状を変えうる特性をどうかご披露お願いします。
俺は緊張で死にそうになりつつに確認に入る。
そして、
(……ほほぉ?)
俺は内心でそんな声を漏らすことになったのでした。
これは……面白いんじゃないかな?
ちょっと、うん。
絶望と仲良くなるのはちょっと無理そうだよな。
やるじゃん、女神様。
俺はもうウッキウキだった。
これはもう神社
俺はそれどころでは無くなった。
なんか聞こえたわけですよ。
枯れ木の森の奥から、確かに何かが響いてきたのだ。
……オオォ……オォ……ッ!!
うん。
聞き覚えがあるけど、アレだよね。
闇ゴリラの咆哮だね、これね。
(は、早いな)
俺は動揺を禁じ得なかった。
まぁ、今までの経験からさほど
それにしてもお早い到来だ。
なんだろうね?
アイツらにとって人間は特別だったりするのか?
緑に対するヘイトも相当だったけど、それ以上に顔真っ赤になっちゃうような存在ってことなのかね?
なんにせよ、この異常なる
まずはリリーさんだ。
闇ゴリラとのバトルはあまり良い思い出じゃ無かったらしい。
リンドウさんが「はて?」と首をかしげている一方で、「きゅっ!?」なんて悲鳴を上げていた。
人間さんたちもそれぞれに反応を見せる。
いくら生を諦めたところで恐怖からは逃れ
多くの者が悲鳴を上げた。
切なげに
女騎士さんも似たようなものだった。
ぎゅっと自らの膝を抱くと、そこに顔を埋めて震えるばかりとなった。
んで、女の子さんもね。
響き続ける咆哮に肩を震わせていた。
目の端には涙がこぼれんばかりに浮かんでおり……だよね。
大人たちからは立ち向かおうとする
終わりが来てしまった。
そう絶望してもおかしくはないだろう。
ただ、ね?
『大丈夫』
俺の声かけはそうなったのでした。
女の子は「えっ?」って感じだった。
なに適当言ってんだコイツ? って思っているかもだけど……きっと大丈夫なのだ。
きっとなんとかなる。
サンキュー、女神様だった。
この特性があればね?
負けない。
辛勝もきっと無い。
人間さんたちに希望を抱いてもらえる結果になるんじゃないかな? まぁ、多分。
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