37:選べる3種(実質2種)

 俺、無能。

 全然土壌の改良を進めることが出来ません。

 

 何が問題って、土壌を改良する速度自体には問題は無いのだ。

 必要な時間は表記上は0秒。

 多分コンマ秒はかかっているんだろうけど、体内に入れた矢先に吐き出せる水準にある。


 ただね?

 取り入れて吐き出す過程は0秒とはいかず、そもそも小さい我が身で取り入れることの出来る土の量はまぁうん。

 さらに俺の移動速度もネックなのだ。

 現状1メートル間隔で改良しているけど、その移動にかかる時間は相当のものになってしまっている。


 よって、リリーさんたちをヒマさせちゃってるんだよね。

 埋める場所がねぇぞコラァ!! って、そんな感じで。


(う、うーむ)


 俺は悩まざるを得なかった。

 これはうん、もったいない。

 もっと早く土壌を改良出来れば、多分2倍以上の効率は見込めることだろう。

 ただ、俺は無理。

 これ以上は無理。

 土壌改良のレベルを上げたところで、改良までの時間と魔力消費が小数点以下のレベルで改善されるだけだしなぁ。


 新たにスキルを獲得するという選択肢はあった。

 敏捷向上とか、あったら取ってみる?

 でも、スキルポイントがもったいないような。

 神性の上昇によって、きっとこれから新たなスキルを獲得出来るようになるのだ。

 となると、スキルポイントは余らせておく必要があるわけで……戦闘のことを考えてもねぇ?

 俺が多少敏捷になったところで、闇ゴリラ戦で役に立てるとは思えないし。


 困った。


 俺は悩みつつに土をモグモグし続けるわけだけど……んん?


(そう言えば?)


 俺は思わずリリーさんを見つめる。

 すると、リリーさんは手の中にある種を見せてきた。

 種子の変更を強く要求する。

 そんな主張であるに違いないけど……ご、ごめん。その点については後で考えさせて。


 そう言えば、そうだったよね。

 以前神性について考える機会があったけど、それはこの子だったよね。

 正確には、スキル木獣きじゅう使役。

 その説明の中で、神性なるワードが出てきたんだよねそう言えばね。


 その時が来たのかもしれなかった。


 リリーさんがお兄さん……いや、お姉さん?

 ともあれ、年長さんになる時がね。


 ということで、


 ───────《木獣きじゅう使役》───────

・木獣の生成、使役を可能とする。

・Lvの増加と比例して、使役可能数は増加する。

※使役可能数はステータス神性の値の制約を受ける。

 ──────────────────────


 なつかしの説明文にご対面だった。

 神性について初めて意識したきっかけであるこれだけど、重要なのはここか。

 使役可能数はステータス神性の制約を受ける。

 そして、俺の神性は今ゼロでは無いのだ。


(……あるのでは?)


 今であれば、2匹目が解放されていたりとか?

 で、木獣使役のレベルを1上げてみたところ、


 ────────《生成候補》────────

・ツリースライム

・ツリーワーム

・ツリードラゴン

 ──────────────────────


 いけそうですね。わーい。


 んで、問題は何を選ぶかだよな。

 現状で必要なのは、土壌改良が出来るどなたかである。

 リリーさんは出来ないので、選択肢は2つかね。

 ツリーなスライムか、もしくはワームさんか。


(う、うーむ)


 なかなか、悩ましい選択肢だった。

 スライムの方はある種間違いはない。

 おそらくは俺に近しい存在であり、土壌改良スキルを獲得出来る可能性を信じることが出来る。


 一方で、ワームさんは?

 ミミズさん的な存在であれば良いのだ。

 その場合には、俺なんかと比べものにならない土壌の改良を披露してくれるような気がするし。


 ただ、草花むしゃもぐ系であれば……でも、どうだろうね?

 その場合でも、戦闘は期待出来たりする?

 害虫系となると、雰囲気はなんか強そうだし。

 少なくともスライムよりかは戦闘貢献度は高そうか?


 ほんと悩ましい。

 安定のスライムか、可能性を信じてのワームか。

 まぁ……正直、俺が2匹に増えてもたかが知れているようなは気はするよな。

 それに最初期の俺のことを考えると、生まれたからといってすぐに役立ってくれるとはあまり思えないし。


 リリーさんのように一点特化型であり、生まれてすぐにでもある程度活躍出来る。

 そして、その活躍の舞台が土壌改良である。


 この2つに期待させてもらうことにした。

 よって、俺の選択は、


 ────────《ログ》─────────

・ツリーワームを生成中[所要:60分]

 ─────────────────────


 こうなりましたとさ。


 後は待つだけだ。

 リリーさんと女の子の冷たい視線を浴びながらに、俺は土壌改良を続ける。

 ほ、本当、どうかなぁ?

 あまり期待しすぎるのもどうかとは思うけど、土壌改良系であって欲しいよなぁ。


 ともあれ、俺は60分をなんとか耐えしのいだ。

 俺は緊張感たっぷりにグニョグニョ。

 懐かしい感覚だね。

 俺はリリーさんたちを困惑させながらに、体内にある期待の新人さんを……あらよっと。


「きゅ、きゅう!?」


 リリーさんは驚きの声を上げ、女の子さんはと言えば「うわっ!?」って感じで目を丸くした。


 まぁ、俺がゴポっていきなり何かを出したらそうもなるだろうけど……この子がそうなのか。


 俺はじっと見つめることになる。

 茶色の土壌に上にいるのは……えーと?

 なんか丸かった。

 直径が20センチぐらいの、木目の丸いのがいらっしゃる。

 見覚えはあるような気はした。

 カブトムシの幼虫とか?

 それが丸くなっている様子に非常に似ているような。


 やっぱりと言うか、ツリーワームは虫さん系で間違いはないのだろうね。

 問題はそれが害虫系かミミズさん系なのかであるが、さてはて。


 俺が期待を込めて見つめる中で、彼ないし彼女はもぞもぞと動き出した。

 そして、ちょろっとお顔が見えることになったけど……お、おぉ?


 俺はリリーさんとの初対面を思い出していた。

 テディベアじゃん! って俺は感動したものだったけど、今回は、


(……好き)


 って感じでした。

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