36:希望とちょっと誤算
神性の値が2になりました。
この結果に、俺は思わず『うおおっ!!』なんて歓声だった。
リリーさんをビクっとさせてしまい、そこは何とも申し訳ないところだったけど……光明だよね? 光明がぴっかぴかだよね?
まぁ、2になってもスキルにも特性にも変化は無かったけどさ。
だが、ログさんは嘘をおつきになったことは無いのだ。
神性を増やせるのであれば、新たなスキルや特性に出会えることは間違いない。
そして、その中には素晴らしく有用なスキルだって……あるかなぁ? どうかなぁ?
不安は否めないが、まぁ、そこは考えても仕方ないものとしまして。
(これはもうね?)
方針ははっきりと決まったのだった。
土壌を改良しまくり、種子を植えまくって神性を稼ぎまくる。
ただ、俺は即行動とはなれなかった。
説明書が読めない系の俺だけど、くだんの特性の説明については目を凝らしていたわけでして。
──────《神域の
・この特性を付与された植物は、周囲を神域化する権能を得る。
・特性のレベルに比例し、影響を与える範囲は拡大する。
・付与対象の成長段階に比例して、影響を与える範囲は拡大する。
・付与対象の魔力量に比例して、影響を与える範囲は拡大する。
─────────────────────
注目すべきは後半かな?
種でも神性は増えたけど、成長するとさらにって感じか?
そして、魔力量。
植物に魔力量?
さっぱりよく分からないが、ログさんは嘘をつかないのであり植物にも魔力量はあるのでしょう。
んで、どうだ?
魔力量を増やす特性なんてものもあったりします?
ということで少しばかり検証が必要そうなのでした。
闇ゴリラの襲撃がいつあるのか分からないのだ。
俺は早速、リリーさんに手伝ってもらって色々と試すことになりまして……
────────《結果》────────
・パンジー(種) :神性への影響はプラス1、神域化の範囲は半径30センチぐらい?
・パンジー(花) :神性への影響はプラス3、範囲は半径45ぐらい……か?
・竹(種) :神性への影響はプラス2、範囲は半径30後半?
・竹(青々) :魔力からっぽにより無理
・魔力を増やす特性:にゃい
────────────────────
みたいな結果を得られましたとさ。
ちょっとがんばりました。
神性への影響はステータスで簡単に確認出来たとして、ちょっと理解に
どうにも神域化は重複しないみたいで、パンジーの種を同じ場所に2つ植えても、神性は1しか増えないようでして。
よって、2つの種をちょっとずつ離していって、神性の増加が2になる地点を探ったと言いますか。
まぁ、適当な検証で定規も無いので、数値は本当に適当なものでしか無いけれどね。
ともあれ、色々と分かりはしたかな?
まずログさんのご説明に嘘は無かったよね。
パンジー基準だけど、種と花とを比べると素直に3倍だったのでした。
花の状態の方が神域化の範囲は広く、比例して神性への影響も大きい。
んで、パンジーと竹では、神域化の範囲及び神性への影響に2倍の差がありました。
多分だけど、これが魔力量の違いになるのだろうかね。
そう言えばだけど、種子生成でも竹の方がコストも時間もかかるよな。
種子生成で高コストの植物は、魔力量に恵まれているって理解でいいのかしらん?
あと、魔力量増加的な特性はありませんでした。
これは、うん。
これからの神性の増加に期待ってことで。
(……ふーむ)
俺はぐねっと悩む。
検証結果からすると、どうだ?
効率的に神域を広げ、神性を得るにはどうすれば良いか?
ポイントはいかに俺の魔力を活用するかだよなぁ。
パッと思いついたのは、高コストの種を生成して、それを促成栽培するという方法だ。
魔力量が多いであろう植物を、成長した状態にしようというわけで。
多分、一瞬でドバっと神性が増えてくれるよな。
ただ……うん。
これは無しかなぁ。
問題は、いつ闇ゴリラが攻めてくるのか分からないことだ。
促成栽培は魔力の消費が大きい。
魔力空っぽの状態で戦闘なんかになったら、俺はスライムソードとして利用していただくしかなくなっちゃうし。
となると、これか?
数で攻めるパターン。
ひたすらに土壌改良をして、低コストの種を埋めまくる。
今の光合成のレベルであれば、魔力の消費量と回復量はトントンぐらいになるだろうし。
余力を残した上で、神性を稼ぐことが出来るだろうかね。
んじゃまぁ、早速行動に出ましょうか。
俺はとりあえずリリーさんに説明をさせてもらった。
神性について、そして神性を増やすことによって得られる可能性について。
結果、リリーさんは「……きゅう?」でした。
可愛らしく首をかしげておられたけど、ま、まぁ、うん。
よく分かんないよね。
神様に神性をもらって……っていうくだりからして意味不明だしね。
むしろ理解出来ない方が自然のような。
俺の正気が疑われている可能性もあるけど、それは置いておくとしまして。
俺は種子を生成にかけた上で、墓場の土をモグモグし始める。
種子はパンジーでは無いけど、生成のコストは大体同じ。
となると、神域化の範囲も同じぐらいかな?
範囲が重ならないように、1メートル程度の間隔を空けつつにモグモグモグモグ。
改良された土壌の島を点々と作っていく。
んで、すぽーん。
出来上がった種をリリーさんにプレゼント。
説明が通じた気配は無いけど、優しいリリーさんだからね。
俺の必死さに
「…………」
手の中の種を一瞬見下ろした上で、きゅーとも鳴かずに俺をじっと見つめてきたのでした。
そ、そうだね。
それ、パンジーじゃないもんね。
適当な雑草の種だからね。
作業しやすい平坦な土地に埋めるつもりであって、人間さんに踏まれるかもなのだ。
だから雑草の方が良いかなと思ったんだけど……ふ、不服だろうねぇ、うん。
『ご、ごめん。他の場所ではパンジーにするから』
どうか堪忍して下さい。
そんな思いが伝わったのかどうか、リリーさんは
んで……おぉ?
俺はちょいと見上げることになる。
そこには女の子の手のひらがあった。
両の手のひらであり、水を汲むような格好で器が作られている。
彼女はニコリとしているけど、そういうことかな?
手伝いましょうか? って感じ?
俺が必死になっていることを察していただいた?
(……やさしー)
俺の琴線に触れまくったわけだけど、ともあれ俺は彼女の優しさに甘えることにした。
人間さんの手のひらはやっぱり大きいなぁ。
すぽぽぽぽーんと、出来上がった種を残らず差し出させてもらう。
女の子さんは、熱心に種を植え始めてくれた。
これは……良いよね。
作業効率すごいんじゃないの?
神性稼ぎまくれるんじゃないの?
とか思って、数分後。
「「…………」」
リリーさんと女の子さんによって、俺はじっと見つめられていた。
うん、そうだね。
俺は必死に土をモグモグしつつに自覚せざるを得なかった。
遅いよね。
俺、めっちゃ足を引っ張ってるよね。
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