17:光明?
俺は早速願う。
あの肉塊、どうにか出来ないでしょうか……?
残念ながら、いつものログさんは良い反応を寄越してくれなかった。
候補として現れたのは、スキル硬化。
灰色の打倒を願った時と変わらない感じか。
かつては候補に形状変化もあったけど、それは獲得してあるのでまぁそっくり同じだね。
(戦闘向きじゃないんだろうなぁ)
おそらくはそうだった。
グリーンスライムという種族は、そもそも生態として戦うことの出来る存在では無いのだろう。
せいぜいが体を硬くしたり、形を変えられる程度。
いくら硬くなれても、肉塊目玉の熱線的な何かに耐えられるとは思えないしなぁ。
攻撃性能は上がるかもだが、それでも黒カニにすら通じる予感がしないと言うか……うーむ。
現実は厳しそうである。
ただ、俺はあがいてみることにした。
願い方を変えてみる。
現状で獲得出来るスキルを全て掲示して下さいませんか?
ログさん的には戦闘向きじゃないけど、工夫次第では戦闘に活かすことが出来る。
そんなスキルがないかと探すことにしたのだ。
まぁ、期待は薄いけど。
スキルに精通しているであろうログさんが無いと言っているわけであり、さらには俺の頭の出来も問題だよな。
工夫出来る思考の柔軟さとか、俺には無縁も良いところなのだ。
だが、それでも探してみる。
ズラリと並べられたスキルは俺が見慣れたものばかりであり、やはり戦闘に活かせそうにはなかった。
う、うーむ。
これは良い予感は無いけど……お?
────────《ログ》─────────
・『候補』促成栽培Lv1[必要:15ポイント]
─────────────────────
見慣れぬスキルが目に留まった。
多量のスキルポイントが得られたからこそ候補に上がったスキルだろうかね。
促成栽培。
俺は『んー?』だった。
語感から理解するに、植物の生育を早めるって感じか?
(……どうだろうな?)
間違いなく有用なスキルではあるだろう。
緑を広めるためには間違いなく有用だ。
黒カニが出現する前であれば、俺は喜び勇んで獲得を選んでいたことだろう。
だが、現状では?
戦闘には活かしようがあるのか?
正直分からなかったが、まぁ、他に獲得したいスキルや鍛えたいスキルも無いのだ。
───────《ステータス》───────
【種族】グリーンスライム
レベル:35
神性:0
体力:40/40
魔力:39/39
膂力:14
敏捷:16
魔攻:15
魔防:18
【スキル】[スキルポイント:9]
・光合成Lv25
・種子生成Lv15
・土壌改良Lv6
・木獣使役Lv1
・形状変化Lv1
・促成栽培Lv1
──────────────────────
よって、とりあえず獲得してみた。
早速試してみるとしようかね。
実践して、初めて見えてくるものがあるかもしれないし。
「……きゅ?」
リリーさんが首をかしげたが、それは俺がいきなり土壌を改良し始めたためだ。
実践のための前準備である。
促成栽培を試すためには、その対象である植物が必要であり、育つための土壌が欠かせないだろうし。
当然、俺は同時並行で種子を生成もしていた。
リリーさんお気に入りのパンジーである。
ほどなくして十分な土壌が生まれ、種子の生成も終わった。
俺は種子を吐き出して、リリーさんを見つめる。
『ちょっと試したいことがあってさ。お願いしてもいい?』
わけが分からないといった様子だったけど、リリーさんは俺の言葉に従ってくれた。
すかさず種を埋めてくれまして、よし。
スキルを試してみるとしましょうかね。
──────《促成栽培Lv1》────────
・消費した魔力に比例して、対象植物の生育を促進する。
・レベルの上昇により、魔力の消費は軽減される。
─────────────────────
説明はこんな感じだったが、多分にもれず魔力を消費するスキルであるらしい。
では、はい。
俺は土の下にある種子に対し、育てーと念じてみる。
すると、
「きゅー!」
リリーさんが歓声を上げた。
お気に入りのパンジーが、咲き誇った形でいきなり目の前に現れたのだ。
そりゃ驚きもしたし、喜びもしてくれたんだろうね。
俺もまた『おぉ……!』って感じだった。
かなり驚いていた。
こんな一瞬なんだな。
もっと緩やかなものだと思っていたけど、瞬きの間にこんな成長を見せてくれるのか。
俺は考える。
これは……え? かなり使えないか?
例えば、木を促成栽培して盾のように利用するとか?
あるいは、ツタを伸ばすタイプの植物を利用して、相手を絡めとるとか?
まぁ、制約は多いだろうけど。
土壌を改良し、種を植える必要があるというのが1つのネックか。
あと、魔力の消費量。
ステータスを確認したのだが、39あった魔力がこの一瞬で9にまで目減りしていた。
スキル光合成によって自然回復はするのだが、現状では戦闘中に一度しか使用は出来ないだろう。
ともあれ、うん。
可能性はあった。
肉塊大目玉を打倒する。
そこに俺が貢献出来る可能性は出てきたかな。
『リリーさん』
「きゅ?」
『がんばろっか?』
もちろんといった様子だった。
リリーさんは大きな頷きを俺に見せてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます