13:彼らの謎
『……うーむ』
ひどいの一言だった。
緑の園は見事に荒らされ尽くされていた。
下手人は当然あの黒カニどもであるが、俺は『んー?』と声を上げることになる。
疑問が湧いて出てきたのだ。
あいつらって一体なんだったろうかね?
おそらくはあの灰色と同種だ。
見た目は月とすっぽんどころでは無く違ったが、行動からはそう思えた。
どちらともに、緑の破壊を至上命題にしているようにしか思えない。
しかし、何故今になって黒カニは現れたのか?
考えられるとすれば……どうだ?
灰色を倒し続けたからってこともあるか?
俺はなんとも腕組みの心地だった。
(なんか機能的だな)
グレースライムでは緑を処理出来なかったため、障害があるとしてより上位の存在が派遣された。
そう理解出来るのだ。
効率的に緑を排除するための仕組みのようなものが裏にはあるように思えて仕方なかった。
(ほんと、なんだ?)
疑問は尽きることはない。
グレースライムに黒カニ。
アレらは一体何者なのか?
きっとこの環境──どこまでも続く枯れ木の森は、あの怪物たちによるものだった。
しかし、なんだろうかね?
その目的は?
食事なのか?
そういう
ただ、なんか違和感があるんだよな。
そんな生に根ざした行動にはどうにも見えないと言うか。
じゅわって消えるのも変だし、やはり機能的に過ぎるような気もするし、一体コイツらは……
「きゅーっ!!」
俺は現実に意識を戻すことになった。
『ど、どうしたの?』
俺はなにやらご立腹の様子のリリーさんに尋ねかけた。
すると、リリーさんは元畑の一画をどこか荒っぽく指差した。
自然と目で追うことになる。
そこでは見慣れた灰色の軟体生物がうごめいている。
『あ、いたんだ』
そこにいたのはいつものグレースライムだ。
テケテケ鳴きながらに地面を灰色にすることに精を出していた。
どうにも黒カニが現れたからといって、灰色さんが出なくなるわけじゃないらしい。
まぁ、どうでもいいけど。
あの黒カニを目の当たりにしたあとじゃ、もはや脅威には欠片も思えないと言うか。
ただ、無感動なのは俺だけだったようだ。
リリーさんには許しがたい
別に問題は無かった。
危険は無い。
灰色はリリーさんにとって敵でもなんで無いのだ。
でも、俺は『あっ』だった。
少し思うところがあり、慌ててリリーさんを制止する。
『り、リリーさん! ちょっと待って!』
リリーさんはいぶかしげに首をかしげて見せてきた。
俺はすかさず説明を返す。
『ごめんだけど、一度観察したいからさ』
リリーさんは変わらず首をかしげているけど、とにかくそれが俺の目的だった。
この謎の生き物についてちょっと理解を深めたくなったのだ。
よく分からないといった様子ながらも、リリーさんは俺の言葉に従ってくれた。
2匹で灰色さんの行動を見守ることになる。
まぁ、目新しいところはなかった。
灰色さんはいつも通りと言うべきか、妙な声を上げつつに地面を灰色にするのみだ。
(……まぁ、いっかな?)
新しい発見は無さそうなのだ。
ウズウズと暴力に飢えている様子のリリーさんに、あとは任せてしまっても良さそうだった。
ただ、俺はゴーサインを出すことは無かった。
原因は、灰色さんの振る舞いだ。
満足したのかどうか。
彼はピタっと1度動きを止めた。
そして、動き出した。
畑の残骸を離れて、いずこかへ。
枯れ木の森の奥へと這っていく。
(……おや?)
俺はちょっと思い出していた。
確か、黒カニも同じじゃなかったか?
同じ方向に去っていかなかったか?
(巣でもあるのか?)
俺は『ふーむ』と悩むことになる。
これはどうするべきか?
まだこれからの方針は決まってはいない。
再び緑を再建し、人間の誘引を図るのかどうか。
ただ、なんにせよかな?
これから俺がどんな道を選ぶにせよ、灰色や黒カニの生態については知っておいた方が有益だろうか。
『……ついていってみる?』
リリーさんにもお尋ねしてみる。
この子もあの連中の生態について気になっていたのかどうか。
返ってきたのは、すかさずの頷きだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます