9:(今のところは)順調
『おおー』
目の前の光景に、俺は感嘆の声をあげる。
5体もの灰色さんによる襲撃があったのだ。
だが、総数はすでに3体になっていて、今ちょうど2体に減った。
何故かと言って、それはあの方のお働きによるものだ。
ツリードラゴンのリリーさん。
あの子がお手々を振るう度に、灰色は他愛なく黒い霧と散る。
(つ、つよいなぁ……)
感心している内に、最後の1体も霧となって消えた。
リリーさんはじっと俺を見つめてきた。
その眼差しの意味するところを、俺はなんともなしに理解する。
『すごいっ! 最強っ! よっ、世界一っ!!』
きっと褒められ待ちなのであり、実際そうであるらしい。
リリーさんは「むん」って感じで、得意げに胸を張った。
かわいい。
ほんとかわいくて、ほんとに強いなぁ。
───────《ステータス》───────
【種族】ツリードラゴン
レベル:18
神性:0
体力:72/72
魔力:55/55
膂力:60
敏捷:45
魔攻:50
魔防:63
【スキル】[スキルポイント:26]
・光合成Lv10
──────────────────────
ステータスはこうであり、俺とはもはや比べる必要もないだろう。
種族間の格差を如実に感じさせるよなぁ。
もちろん、外れ枠は俺で間違いない。
思い返せば、最初白い空間で出会った女性はどうにも不機嫌そうだった。
俺の『人間関係で苦しむのは嫌だ!』って発言に対し、眉根にシワを寄せていたような。
俺のこの姿は、彼女による嫌がらせの産物なのかもね。
とは言え、グリーンスライムだからこそリリーさんを生み出すことが出来たのかな?
となるとやはり、彼女には感謝の思いしかないかな。
リリーさん、最高ですからね。
かわいいし、その上強力無比だし。
ただまぁ、そんなリリーさんも完全無欠とはいかないようだった。
生み出す前に懸念はしていたのだけど、案の定緑化には貢献しにくいみたいなのだ。
この子もスキルを獲得出来るが、候補に挙がるのは戦闘に役立つもののみ。
ツリードラゴンは生粋のファイター枠って理解するのが正しいようだ。
でも、緑化にまったく貢献出来ないかと言えば、それはまた話が違った。
『リリーさーん、石をおねがーい』
灰色さんたちが退場した後、俺は麦畑作りに精を出していた。
目的はスキルポイント稼ぎであり、いずれ人間さんを接待するためなのだけど、ともあれリリーさんは立派に貢献してくれている。
先ほどの俺の呼びかけに応え、リリーさんはたったか動き出す。
俺が改良した土壌は、栄養に富んでいても不純物まみれだ。
特に小石なんかが一杯紛れ込んでいるのだけど、それをリリーさんは掴んではポイっと遠くに投げ捨てる。
お手々があるとやっぱり違うよね。
俺にはとても真似出来ない器用さで、畑作りを手伝ってくれていた。
『次は種をよろしくね』
リリーさんの器用さは種植えにも発揮されていた。
スキル『種子生成』によって生み出した種を、俺はポーンと空中に吐き出す。
リリーさんはそれを見事にキャッチし、器用に穴を掘ってはそこに埋めてくれる。
これまた俺には出来ない芸当であり、選択肢にあったツリースライム、ツリーワームにも多分無理なんじゃないかな?
やはり、リリーさんを選んで良かったなぁ。
ほんと、素敵すぎる。
『リリーさーん』
俺は思わず呼びかける。
リリーさんは「なに?」とでも言いたげに、首をかしげつつ近づいてきた。
俺はぐにょんと体を伸ばす。
結局、俺はスキル『形状変化』を獲得していた。
戦闘のためではなく、こういう時に役立ってもらうためだ。
俺は伸びた体で、リリーさんの頭を可能な限り優しくなでる。行動によって、愛情を表現する。
嬉しいことに、喜んでもらえているようだ。
リリーさんはうっとりとお目々を細め、「きゅー……」なんて声を漏らした。
きゅー。
そう、リリーさんは俺と違い、鳴くことが出来た。
その声はおそろしくかわいらしくて……好き。
誰かを好きになるって感覚を、俺はスライムになってようやく理解出来たかなぁ。
これはもう、人間さんには是非ここに来てもらわないとね。
リリーさんのかわいさを共有したいし、あとこの子の一生を彩ってあげてほしい。
やっぱり、俺ばかりが世界の全てみたいなのは、リリーさんにとって良いこととは思えない。
と言うことで、作業は続く。
リリーさんのおかげで、全ては順調だった。
麦の作付けは無事終わり、次は雑草畑に手を加える。
スキル『種子生成』のレベルが上がった結果、俺は花の種も生み出せるようになっていた。
試しにと、パンジー、ハイビスカス、リリーさんの名前の由来であるはずのユリの種などを、適当に埋めておいた。
成長した暁にはかなり人目を引くことが出来るんじゃないかな?
実際として3日後には、枯れ木の森には華やかな光景が生まれることになった。
「きゅーっ!」
リリーさんはもう大喜びだ。
俺もそうだけど、雑草よりもお花がお好みらしい。
特にパンジーをお気に召したようで、黄色い花々の間をてってこ駆け回っている。
(うわぁ、癒されるぅ……)
俺はもう、幸せ心地にとろけそうと言うか、実際にベチャリと形を崩していた。
ずっと眺めていたいなと思うわけですが、本来の目的を考えるとそうもいかないか。
(やっぱり、目立つのは難しいよなぁ)
俺は周囲を見回す。
そこには枯れ木の森が鬱蒼としてそびえ、目隠しとして機能してしまっている。
お花さんだったら目立つかも! って楽観して育て始めたけど、この環境じゃちょっと無理そうだ。
そうなると、ここは……最終兵器にご登場願うとしましょうかね?
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