グリーンスライムに転生した俺は、呪われた異世界を緑でいっぱいにするようです。

6：急募：肉壁が出来る方

　よって1人作戦会議の幕開けだった。

（……ふーむ）

　枯れ木の洞（ほら）に隠れて怯えつつ、俺は脳裏に浮かぶログに意識を集中させていた。

　────────《ログ》─────────

※スキルポイントは8あります。

・『候補』硬化Lv1［必要：1ポイント］

・『候補』形状変化Lv1［必要：1ポイント］

──────────────────────

　我に灰色を駆逐する力を与えたまえ。

　そう願って、示された可能性はこれだった。

　まぁ、絶対に有益だろう。

　体を硬化させれば、攻めるにも守るにも威力を発揮してくれるに違いないのだ。

　その上で、形状変化は面白いだろうか。

　体の一部を伸ばしてベチコーンだったり、ウニみたいになってブスブスーだとか応用は効きそうだった。

　ただ、うん。

　じゃあ、これにします？

　そう問いかける俺に対し、一方の俺は「んー」と言葉を濁すのだった。

　いや、有益なのは分かっているのだ。

　でも、ぶっちゃけ戦いたくないし。

　少なくとも肉弾戦とかゴメンだし。

　魔法とか使えたら良かったのだ。

　滅びよ……とか言って、灰色を消し炭に出来たらそれが一番だった。

　ただ、現状ではそんな選択肢は無し。

　すると、やはり肉弾戦を頑張るしかなさそうなのだが……う、うーむ。

　したくない。

　怖い。

　それに、肉弾戦はかなりリスキーである気がするのだ。

　俺は戦闘に関して素人以外の何者でも無い。

　さっきもテンパってしまったが、次以降もきっとテンパる。

　枯れ木に体当たりしての自滅や、小川に飛び込んでの溺死などは普通にあり得た。

　さらに、灰色が1匹で来てくれるとも限らないのだ。

　そうなったらどうしようも無かった。

　あたふたしている間にあえなく死んでしまうことだろう。

　理想はアレである。

　魔法が無理だとしたら、味方が欲しいかな？

　俺に代わって戦ってくれる誰か。

　なんとも都合の良い望みだが、本当これが理想だ。

　誰かがいたら俺も冷静に戦えそうな気もした。

　肉弾の乱戦はお任せして、俺は機を見て体当たりも出来るかもしれなかった。

　では、ログよ。

　我に都合よく前線を張ってくれる味方を与えたまえ……！　って願ってみて、その結果である。

　────────《ログ》─────────

※スキルポイントが8あります。

・『候補』木獣（きじゅう）使役Lv1［必要：8ポイント　　　　　　　

　────────────────────

（……はい？）

　俺はログをまじまじと観察する。

　木獣使役。

　木獣って何？　って疑問点はあるけど、え？　あるの？

　嬉しさよりも、なんか違和感が先に立つのだった。

　今までは無かったのだ。

　孤独で寂しいんですけど？

　ペットでもなんでもいたら嬉しいんですけど？

　そんなことを思い続けてきたのが、こんな親身な提案は一度として無かったのだ。

（……何故？）

　ログにもその時々の気分でもあるのかどうか。

　だとしたらなんとも扱いにくくて仕方ないが、そういうわけでも無いのか？

　注目したのは必要ポイントだ。

　8。

　俺の現有するポイントと同じ量である。

　そして、俺は今までこんな量を溜め込んだことはない。

　最高は確か6だったか？

（獲得出来るスキルをってことかな？）

　多分、そういうことだった。

　ログが掲示してくれるのは、有益かつ現状のポイント量で獲得出来るものなのだろう。

　これは考える必要がありそうだった。

　もしかすれば10や20と貯めると、魔法が候補として掲示されるかもしれないのだ。

　ある程度貯めて、自らの可能性を探る。

　そんな行動が今後必要になるのかもしれなかった。

　ただ、灰色の脅威にさらされている現状ではそんな悠長なことはしていられない。

　選択肢はたったひとつだ。

　───────《ステータス》───────

【種族】グリーンスライム

レベル：13

神性：0

体力：5/18

魔力：9/17

膂力：6

敏捷：7

魔攻：6

魔防：8

【スキル】［スキルポイント：0］

・光合成Lv15

・種子生成Lv6

・土壌改良Lv6

・木獣使役Lv1

──────────────────────

　さーてはてさて。

　俺はちょっと緊張だった。

　大枚はたいて手に入れたスキルだが、ちゃんと役に立ってくれるのかどうか？

　───────《木獣使役Lv1》───────

・木獣の生成、使役を可能とする。

・Lvの増加と比例して、使役可能数は増加する。

※使役可能数はステータス：神性の値の制約を受ける。

　─────────────────────

　説明は短いが、直感的に理解とはいかなかった。

　木獣とやらの入手手段について俺はまず考えることになる。

　種子生成の延長って理解で良いのだろうか？

　魔力と時間を消費しての生成と考えて、まぁ、間違いはなさそうか？

　これはひとつ朗報だった。

　探し出し、見事倒して屈服させよ！

　そんな感じであれば、俺にはもう無理だったからね。

　木獣なんて、枯れ木の森のどこにいんのよ？　といった話であり、また戦えと言われても困るのだった。

　木獣がどんなものかは知らないが、俺の戦闘力では返り討ちに遭う未来しか視ることは出来ない。

　使役数の増加についてはひとまず考えないことにした。

　獲得に必要だったスキルポイントから考えても、レベルアップなんて遠い話になるに違いないのだ。

　また、神性などというステータスが関わってくるようであり、これも理由の1つだ。

　アレは一体何だろうか？

　今までまったく役に立っている気配は無く、ようやくここで役に立ちそうな雰囲気が出てきたが、レベルアップで上がる様子は欠片も無い。

　とにかく、神性が上がらないと使役数は増えないとしか読めない。

　だから、無しだった。

　神性が上がらない現状では、使役数についてはおそらく考えても仕方がない。

　俺は先に進むことにした。

　さてはて、木獣とは一体どんな存在であるのか？