地球最終日(仮)(1)
世界が終わるかもしれない状況で、働いている人なんてほとんどいない。そりゃ、明日のために働くんだから。
だけど、大した混乱があるわけでもなく、町はひっそりと静まり返っていた。
普段なら賑わっているだろう大通りも車道に車はない。人通りもまばらだ。
「助かった……」
と俺は独り言ちた。こんな変な乗り物に乗っているのを見られたくなかったからだ。
ウミウシ号は大型バイクほどのサイズで、その名の通りウミウシの形をしている。通信機能やその他ミッションに必要な便利機能が内蔵されているため、このヘンテコな乗り物で行くことを強要されているのだ。
だったら博士が代わりにデートしてくれればいいのに。
「道路がすいてて運転しやすくて良かったな~シュガー! ペーパードライバーだもんナ!」
ウミウシ号がおしゃべりする。ペッパー博士と通信がつながっているのだ。
「……そうだな」
「
「うん……」
確かに……と、佐藤は思う。
昨晩の電話は
デートの誘いだった。
誘われなくてもひそかに身辺警護をするつもりだったので、願ってもない申し出だったが……。
あったばかりの転校生の俺よりも、馬場や千代田など元々仲の良い男子とデートした方が楽しいだろうに。「好きな人とデートがしたい」と言っていたのを覚えている。
彼女が困っているときに何度か手助けをしたことがあるが、その程度だ。詩緒を守る以外はゲームをしているだけだというのに。
こちらとしては都合がいいのだが、何故俺なのか? 理解できなかった。
公道を走るにはファンシーすぎるウミウシ型の白く濁ってぽってりとした乗り物にまたがると触角のようなハンドルを握って、音もなく道路を滑っていく。
一キロ離れればバイクに見えなくもない。そう心の中呟きながら。
ゲームばっかりしてないで デートして世界救ってよ! クミンゴ @kumingo
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