第12話 ぎこちないデート②

メニューを手に取った太陽だが、どれを頼むかを一旦悩み始めると、ずっと悩んでしまう性格だ。


それに相まって、入ったパンケーキ屋は普段はカップルや女子が多いような、オシャレな店。そのせいか太陽はいつになく緊張している。


ピンとくる商品がなく、ずっとメニューを睨み続けていた太陽に、凛が声をかける。


「そんなに悩むなら、私が決めちゃってもいいかな?」


どうせこれ以上悩み抜いても、ピンとくるメニューを決めきれないと判断したので、


「じゃあよろしく」と一言言い、メニュー表を凛に渡した。


凛はメニュー表を見た途端、髪を耳にかけながら、まるで最適解を見つけたかのような笑みを浮かべながら、


「これにしよう」


と言いながら、店員を呼んだ。


「なんか嬉しそうだけど、食べたかったパンケーキでも見つけた?」


そう太陽が聞くと、


「うん、見つけちゃった。とっておきのやつ」


と答えた。

なぜか凛は勝ち誇ったなような顔をしている。

よっぽど食べたいものを見つけたのか?と思ったが、それに対する答えが直後に判明した。


店員が「お伺いしまーす」と言いながら二人の座る先へと近づき、ハンディを手に取ったので、注文するメニューを答えた。


「ご注文をお伺いします」

「この、限定特大ホットケーキを1つください」

「特大パンケーキですね、かしこまりました。他にご注文はございますか?」

「いえ、大丈夫です」


(…なるほど、特大のホットケーキか)


「どう?このパンケーキ」

凛がメニュー表の、特大ホットケーキの写真を指差しながら聞いてきた。


彼女の人差し指の先に視線を向けると、そこには豪勢な見た目のパンケーキが載っており、なぜ凛がさっき笑みを浮かべていたのかを察した。


名前の通り、とても大きなホットケーキだ。

見るからにとろふわであろうふっくらしたホットケーキが三枚重ねになっていて、上にはばなとクルミが綺麗に並ぶ。さらにチョコソースまでかかっている。いわゆるバナナフォスターだ。


片方が迷うくらいなら、お互い同じものを頼んだ方が手っ取り早い。


「なるほど、だからさっき笑ってたの?橋岡」

「ん?どういうこと?」

「どういうことって…さっき顔に出てたよ、不敵というか、勝ち誇ったというか…そんな感じの笑い方」


凛は明らかにドヤ顔をしているが、まるで知らないと言わんばかりの顔をしながら「知らなーい」と言って誤魔化す。


しかし、よく凛の顔を見ると、確かにドヤ顔はしているが、少し口元が引きつっているように見える。

凛は照れくささを誤魔化すために、無理やり余裕があるように、表情を作って見せていた。


最近、凛は太陽のことをからかうようになってきていたので、太陽は少しからかい返そうと心の中で伺ってはいたが、結局、からかい返してしまったらボロが出てしまいそうな気がした。


お互い心の底では"照れくさい"という感情が湧き出ていたので、結局一言も発することもなく、


「お待たせいたしました、限定の特大ホットケーキです」


と、注文したものが机の上に置かれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君がくれた光は道を照らす ただの通りすがり @tadanotoorisugari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る