日記を読むと死にたくなる。
きせのん
第1話
日記を読むと死にたくなる。
黒歴史が思い出されて、という訳ではない。
ただそこにある景色が、今の僕にはもう届かないそれが眩しすぎるだけだ。
「この給食がおいしかった」「〇〇くんの家で遊んだ」
そんな文字を見る度、忙しない日々に流され埃の山に埋もれていた記憶が掘り起こされる。
不思議なものだ。僕はそんな記憶など意識していなかったのに、忘れたことなんて無かったように思い出される。もう戻れないそこへの望郷の念が、否応なしに湧き上がる。
「幸せは過ぎ去ってから気付く」——とはよく言ったものだ。あのときはそれが当たり前で、なにも疑っていなかった。遠い友人との記憶に手を伸ばしつつそんなことを考えていると、薄く涙が滲んだ。
きっと、今も同じだ。いつか僕が大人になったとき、また今の日記を読んで死にたくなる。
だが、それでも——と思う。
この日々に押し流されたまま本当に忘れてしまうよりは、この寂しさも幸せのひとつなのだろう。
日記を読むと死にたくなる。 きせのん @Xenos
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
エッセイ その二(仮)最新/サバトラひろ
★9 エッセイ・ノンフィクション 連載中 6話
宅浪時々日記最新/Zenak
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 7話
ローカルニュース・雑記最新/晁衡
★64 エッセイ・ノンフィクション 連載中 826話
茶うさぎから白うさぎへの手紙 2024最新/メラニー
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 153話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます