日記を読むと死にたくなる。
きせのん
第1話
日記を読むと死にたくなる。
黒歴史が思い出されて、という訳ではない。
ただそこにある景色が、今の僕にはもう届かないそれが眩しすぎるだけだ。
「この給食がおいしかった」「〇〇くんの家で遊んだ」
そんな文字を見る度、忙しない日々に流され埃の山に埋もれていた記憶が掘り起こされる。
不思議なものだ。僕はそんな記憶など意識していなかったのに、忘れたことなんて無かったように思い出される。もう戻れないそこへの望郷の念が、否応なしに湧き上がる。
「幸せは過ぎ去ってから気付く」——とはよく言ったものだ。あのときはそれが当たり前で、なにも疑っていなかった。遠い友人との記憶に手を伸ばしつつそんなことを考えていると、薄く涙が滲んだ。
きっと、今も同じだ。いつか僕が大人になったとき、また今の日記を読んで死にたくなる。
だが、それでも——と思う。
この日々に押し流されたまま本当に忘れてしまうよりは、この寂しさも幸せのひとつなのだろう。
日記を読むと死にたくなる。 きせのん @Xenos
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