龍神の聖域

 今夕の空も、素晴らしかった。

 この色鮮やかな移り変わりの様は、なんと言い表せばいいのか。西の空にはまだ、橙色の光の帯が残されている。去り行く太陽の名残だ。そのすぐ上には茜色……そこから少しずつ青味を増していく。それをただ紫と言い表すのは、あまりに風情がない。それが東の水平線になると、限りなく藍色に近い色に染まっている。この天上の織物の上に、小さな宝石が散りばめられていく。最初は控えめに、徐々に輝きが増していく。


 会見の後のこと。社から降りると、オオキミが離れたところで待ち構えていた。後ろからやってきた姫巫女は憔悴した様子だったが、いかにも不本意そうな顔で、これからモゥハのところに案内すると言った。小休止をとってから、俺とウナは社の右手のひっそりとした小道を下っていった。峰を一つ越えたところで、岩だらけの海岸のすぐ横にある古道に出た。そこからの道は平坦だった。もっとも島の起伏がないのではなく、進むうちにすぐ岩の割れ目から洞穴のようなところに差しかかった。

 そこを抜けると、海上に細い道が繋がっているだけの場所に出た。左右には島々が浮かんでいたが、それはまるで、この通路を隠し、守ろうとしているかのようだった。恐らくだが、この水上の歩道は、引き潮の時間帯でなければ通行できないのだろう。

 進むうちに、日が暮れてきた。その頃には、周囲を囲む島々の影も低く目立たなくなった。代わりに、目の前に岩礁が現れた。


「ファルス殿」


 不意に立ち止まったウナが、俺に確認した。


「くれぐれも言葉には気をつけよ。なんであれ、そなたがモゥハを害する恐れありとなれば、どのような手段によっても会見を打ち切るものと知るがよい」

「はい」

「それから、ここで目にしたものは他言無用じゃ。それがなぜかについては、説明するまでもない。見ればわかろう」


 それからまた、彼女は前へと向き直って歩き出した。

 ついに俺達は、岩礁の上に辿り着いた。凸凹のある岩場の上を、注意しながら歩く。ところどころ海水に洗われており、滑りやすくもなっている。その上で薄暗いのだ。

 既に東の空は、深い藍色に染まっていた。水平線近くにある星々が、白く力強く輝いている。そして月明かりが、すぐ足下を照らした。


「そこ、落ちぬよう気をつけよ」

「は……えっ?」


 返事をしようとして、そこにある異物に声をあげかけた。

 岩礁のその部分は大きく掘り抜かれていて、海水で満たされている。問題は、その中に沈んでいるものだった。


「これ、人……」

「騒ぐでない」


 ウナと同じような服装をした若い……いや、若く見える女性、だ。


「ここは龍神モゥハの聖域。そして、妾ら姫巫女の牢獄にして墓場よ」

「牢……墓場、ですか?」


 彼女は頷いた。


「ワノノマの皇族とは、即ちモゥハと契約を結んだがゆえに、この世界の安定のために身を捧げる定めにある者達じゃ。世を治め人々を支えるのはオオキミら男達の、神の役目にして神になし得ぬ使命を代行するのは女達の仕事」


 神の役目だが、神にできない?

 いや、俺はそれを知っている。例えばシーラは他者を害せない。では、シーラがウルンカの民のために戦わなくてはいけなくなった場合、どうすればいい? 彼女ならまず、羽衣で身を隠そうとするだろうが、それで済まない場合は? だが、その方法なら、実は一応、用意されている。


「……神を裏切るということですか」

「やけに察しがよいな」


 答えは「神から借りた力を濫用する」だ。

 殺戮を許せないシーラの力を部分的に借りた人間が、その力で殺戮を行う。例えば、俺が。俺は人だから、シーラの加護を利用しても相手を傷つけることができる。例えば辺鄙なところにいる誰かを殺すために、ゴブレットの飲料を飲みつつ長旅をするとしたら、これは彼女の権能を殺人のために利用したことになる。

 だが、そのままでは人の行いが直接に神のありようを揺るがすことになる。殺しができない神が殺しに加担したら、神は自分で自分の存在意義を破壊することになる。多分それは、神というものの性質上、致命的であるはずだ。なぜなら神は、自分自身の決定を撤回できないからだ。人間と違って、思い直したり、間違いを反省したりする余地がない。やっていいことが厳しく制限されているのだ。

 だから彼女の場合、禁忌を犯した誰かがいた際には「祝福を取り上げる」という罰を下した。罪人がいる場合、ティンティナブリアから白銀の女神の祝福は消え去ったという。罰したいのではない。そうするしかないのだ。つまり、人が進んで罰を受ける場合には、実は神を裏切ることができる。思えば、クロル・アルジンにしても、そうした抜け道を利用した結果の代物だった。


「その通り。姫巫女とは、穢れを負うための人身御供よ」


 俺が知る限り、モゥハは殺す神ではない。かつて偽帝アルティが帝都を征服しようとして、西方大陸から大勢の兵士を渡航させようとした時、ヘミュービは彼らを溺死させた。だが、モゥハはそれをよしとせず、自ら顕現することで人々に改心を促そうとした。

 だが、殺さない神では、殺す相手に立ち向かえない。すると、自らが守る人々もまた、一方的に殺されるがままになる。だからモゥハは、人々の望みに従って力を分かち与えた。神は殺せなくとも、人は殺せるから。だがそれは、まさにその力を行使するその人自身に責任を取らせるものとなってしまった。


「姫巫女とて不老不死ではない。だが、常人より遥かに長い寿命と、並の人間には想像もつかぬほどの力を手にすることができる。世界統一前には、この力で海を越え迫ってくるイーヴォ・ルーの戦士達や、東方大陸の魔王の軍勢と戦ったという。しかし」


 彼女はすぐ下の墓穴を見下ろした。


「時満ちて魂が去るべき際には、祝福を授かった姫巫女はこのように、己の罪業を洗い流さねばならん。贖罪が済んで後、ようやく魂魄が解放されて、死の静けさに達することができる」


 ピアシング・ハンドで見る限り、彼女らの遺体は確かに死んでいる。だとすると、その魂は今、どこにいるのだろう? ここに留まってはいるが、肉体との接続は不完全な状態になっているとか? 奇妙なことに、この水の中にある遺体は、まるで生きているかのようだった。

 こんなの、公開できるはずもない。ワノノマの秘密の中でも最悪のものの一つだろう。


「じゃが……」


 それ以上説明せず、彼女は歩みを進めた。


「これ以上のことは、モゥハに尋ねるがよい」


 あるところで立ち止まると、彼女は先に進むようにと促した。

 俺は一人で、藍色の水平線に向かって一歩を踏み出した。


 水際に立った時、波一つない水面に小さな波紋が浮かび上がった。

 そこから、驚くほど静かに、徐々に水が押し出され、波をたてながら、巨大な龍の頭部が暗がりに浮かび上がった。


『ようこそ、迷える人の子よ』


 ヘミュービの時と同じだった。何か言葉のようなものが直接聞こえてくる気がする。


------------------------------------------------------

 モゥハ  (--)


・ディバインコア

・ディーティ:ヴェイス

・ディーティ:フィード

・ディーティ:ヘイル

・ディーティ:リバース

・トゥルーアストラル


 空き(--)

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 ピアシング・ハンドの表記も、ヘミュービと似通っていた。

 ヴェイスは壺だろうか? フィードは……食べさせること、餌などの意味があった気がする。ヘイルはよくわからない。雹とか霰といった意味だろうか。最後にリバースはわかる。再生だ。

 これから判断すると、モゥハもヘミュービ同様、自然神としての側面を持ちつつも、どちらかというとこの世に生まれ落ちた生命を養い、見守るような神性を備えているように思われる。


「尊い御姿を現していただき、感謝に堪えません」

『尊敬も感謝も、人の世のこと……本来、神が人と共にあるのは、自然なこと』


 そうなのだろうか? そうかもしれない。シーラのような神にとっては。いや、イーヴォ・ルーにしても、そのようにしていた。

 ただ、すべてがすべて、そうだったのでもない。モーン・ナーは信者達と共にあっただろうか? チュエンの神だったゼクエスは、チャナ皇族だけの神だった。


『して、ファルスよ、お前の望みは何か』

「そのほとんどは今、叶いました。私を、この身をあなたの目の前に置くことです」


 脇に下がったウナは、俺を注視していた。だが無用の心配だ。俺にはモゥハを害する意志などないというのに。


『む……わかったぞ、おお、この世にあらざる者よ』


 やはりそうだ。ヘミュービと同じことを言った。そしてこの後、ヘミュービは俺を許されざる邪悪と呼び、裁こうとしたのだ。

 今なら、その理由もわかる。だが、そこに小さな疑問が居残ってはいる。ヘミュービは、俺を殺そうとしたのか、それとも封じようとしたのか。仮に殺そうとしたのだとすれば、当面の時間稼ぎにしかならない。俺はもう一度生まれ変わり、再び呪詛を持ち込むだろうから。

 では、モゥハの結論はどうだろう?


「どうなさいますか」


 モゥハは、すぐには答えなかった。


「私がこの世にいる限り、いつまた災厄が招き寄せられないとも限らない。もしできるのであれば、あなたは私を封印するべきです。永久に」


 モゥハは俺を注視したまま、黙考していた。


『……知っている』


 だが、俺に死を齎そうとするでもなく、何か命じるでもなく、彼はじっと俺を見下ろしていた。一方、離れたところに立っているウナは、何か言いたげにしながら、わなないていた。


『見るがいい』


 そう言うと、モゥハはその鎌首を擡げ、岩礁の上にその身を横たえた。


「うっ!?」


 俺は思わず顔を覆った。

 胴体の半ばに、深い傷跡が残されている。何かで抉った後、焼ききられたような。


「これは?」

『人の子よ、知っているか』


 モゥハはあくまで穏やかに、優しく語り続けた。


『神はその名において述べたことを取り消せない』

「……はい」

『人の子が神と盟約を取り結び、これに反した場合、自らの魂で贖うものと定めたなら……人の過ちは、その人自身が負うことになる』


 それはさっき、ウナと話したことだ。

 では、この傷は?


『だが、その過ちを自ら償うことなく死ねば、その不履行は、やはり神が負わねばならない』


 ということは、例えばウナがこの墓地に辿り着けず、例えばどこかで戦死した場合、彼女が生前に犯したモゥハの神格からの逸脱は、やはりモゥハ自身に跳ね返る。


『人の目から見れば、神は大きな存在に見えるかもしれない……だが、神は人と違って、脆い』

「モゥハ様!」


 ほとんど泣きそうな顔をしているウナが、よろめきながら前に出てきた。


「訊かれもしないのに、どうしてそのようなことまでわざわざ告げてしまうのですか!」

『ウナよ、この者は真実を求めている。一切を、あるがままを語らねば、決して納得などすまい』


 モゥハはそう諭した。


『なぜこの聖域に留まっているのか……かつて遠い昔、人は神と共にあった』


 懐かしむように、彼は目を細めた。


『今ではブルダの浜と呼ばれるあの場所で、幾度となく子供達にせがまれては、海の上を駆けた。呼びかける者がいれば、必ず応えた。その日々のなんと喜ばしかったことか……だが、だからこそ、あの浜は禁断の地となったのだ』

「それはどういう……いえ、つまり、それも盟約だったのですね?」


 遠い昔に人と結ばれた盟約であっても、モゥハはそれに抗う術をもたない。人があの浜に立って呼びかけたら、駆けつけなくてはいけないのだ。

 そしてそれが、本来なら人と共にあることを望むモゥハが、あえてこの聖域に閉じこもる理由にもなっている。


「トゥー・ボーは、イーヴォ・ルーの使徒達によって滅ぼされたそうですが」

『その通り。最初はギウナ、続いてゴアーナもまた、滅ぼされた』

「滅ぶとは、どのようなことを指すのでしょうか」


 ウナは俺に恨めしそうな視線を向けたが、モゥハは躊躇わず言った。


『神の意志と力が、食い違うことを意味する』

「食い違う……」


 想定した通りだ。

 神格に反した行いは、彼らにとってあまりに致命的だった。


『ギウナは知恵と繁栄を司る龍神だった。だが、自ら清浄なるムーアンを水没させ、沿岸の街を、そこに住む人々を葬り去った。それゆえに、自らの神格が揺るがされ、権能を引き剥がされた』


 だが、奇妙な表現だ。

 では、権能そのものはまだ、どこかに残されている? だが、あったとしてもそれを機能させる手段など、ないのだろう。


『人の子よ、お前は裁きを求めているのだな』

「その通りです」

『それをなす権能を有しているのはヘミュービだ』


 では、もう一度、リント平原に赴けばいいのか?


『とはいえ、それではお前の魂をこの世から去らせるばかり……だが恐らく、その呪詛は、それで終わりなどはしない』


 予期されていることだ。死んでもまた生まれ変わる以上、俺は何度でもこの世界を脅かす。


「ですから、封印を。永久に閉じ込めておけば」

『それは誰にもできない』


 誰にも?


『誰しも死ねば世界を去る。だが永久に封じる、ということは、お前は永久に死なない、ということ』

「そう、です、ね」

『この世界の神々の中で、人の不死を許すものはいない。ゆえに、お前を永久に封じる術を、いずれの神も持ち得ない』


 そんなことが?

 異界の神には簡単にできるのに? イーグーの中に宿っていた精霊、あれがあれば、あとは不老の果実を手にするだけで、不死に至れるというのに?


『死んだ後に封じる術もない。我らはこの世界の神であるがゆえに、世界の外に及ぼせる力には限りがある。確かにとはいかぬ』

「ま、待ってください。では、ギシアン・チーレムはどうなのですか」


 俺は食い下がった。


「女神の祝福を受けて天幻仙境に至ったという彼は、やはり死んだのですか?」

『かの者は、唯一の例外』


 例外?

 では、砂漠で見たあのナード王子は……


「彼はどこにいるのですか」

『天幻仙境に。そこから出ることは許されぬ身の上』


 では、やはりあれはハッタリだったのだ。

 しかし、それはそれとして、どうして彼だけ不死を与えられるのか?


「なぜですか。不死を与える権能を、この世界の神は持たないと仰ったではないですか。なのにどうして彼はまだ生きているのですか」

『厳密には、かの者も不死を得たのではない。ただ、唯一、天幻仙境の主となったがゆえに、年月を超越した』

「なら、私もそこに。どうしてそこで封印してくれないのですか」


 モゥハは静かに首を振って、拒絶を示した。


『どうにもならぬ。かの者の役目はただ一つ。また、仮にかの者を害そうとも、その座が空くことはない』


 どうもモゥハの言うところによると、ギシアン・チーレムは不死ではない。不老ですらない。ただ、天幻仙境からは出てはならず、それに従う限りにおいては、死を免れる。そういうことのようだ。

 だが、その地位を得られるのは彼だけで、俺がこれからどれだけ努力しても、なり替わることはできないという。


 しかし……


「なぜですか」


 ……俺は、静かな、けれども熾火のような、忘れかけていた怒りに動かされ始めていた。


「なぜ、死ななければいけないのですか」


 この旅を始めた理由。生まれ生きる苦しみ、死の恐怖と死を見送る悲嘆。それを終わらせるために、世界の果てまで歩き通した。

 それなのに、モゥハはそんなものはないと切り捨てた。悪意がないのはわかる。わかるが、だからといって納得できるものではなかった。


「自分のことはいい。命乞いなんかしない。どんな罰も受け入れる。だけど、今まで大勢の人が苦しんで、死んでいくのを見てきた」


 蓋をしていた感情が、今になって蘇ってくるのを感じた。それを抑えようとは思わなかった。


「この手で、数えきれないほど殺した! 家族も友人もいる人達を、同じように苦しみや悲しみを抱えた人達を、死に追いやってきた!」


 俺は裁かれる。それでいい。

 だが、神々はどうなのか。責任を問われはしないのか。


「それで災厄の原因がわざわざやってきて、封じてくれといってもしない。できない。じゃあ、どうするんですか。どうしようもないんですか!」


 ヘミュービならどうする?

 では、俺がこの世界に生まれるたびにやってきて、殺し続けるのか。永遠に。誰かに苦しみを押しつけ続けることで、こんな何の役に立たない世界を……


「あなたは女神と一緒にこの世界を創造したんでしょう。なぜですか。なぜ、こんな世界を生み出したのですか。人も動物も、誰も彼も、みんな苦しみながら、恐れながら、悲しみながら死んでいく。初めからこんな世界そのものがなければ」

「やめよ、ファルス! それ以上」

『よい、ウナよ……人の子よ、答えよう』


 モゥハは俺を見下ろし、短く言った。


『死もまた祝福であるがゆえに』

「祝福? 死ぬことが祝福だって!?」

『然り』


 急に暗闇に放り出されたかのようだった。

 死ぬことが、あんなにつらくて惨たらしいものが、祝福?


「あ……あなたは、あなたは! 神だから、死ぬことがない神だから、途方もない高みから人を見下ろしているから、そんなことが言えるんだ! この手を、この手を見ろ! 何千も、何万も殺した! 自分も相手も怯えながら、喚き声をあげながら剣を振り回して、殺しあった! この手もこの世界も、何もかも血塗れだ! こんなものが、こんな世界が」


 今になって自覚した。俺は、この東の果てで滅ぼされることに希望を見出していたのだ。多くの罪を犯した自分でも、裁かれることでその運命に決着をつけることができる。これ以上、誰も傷つけずに済む。

 だが、その希望は断ち切られた。モゥハは俺を封印できない。ヘミュービも俺を都度殺すしかない。女神達にもできることなどない。そして、俺がこの世界からいなくなっても、悲劇は終わらない。使徒達も暗躍し続ける。

 なんてことだ。歩いてきたつもりで、俺は一歩も前に進めていなかったのか? すべては無駄だったのか?


 俺は膝から崩れ落ちて、嘆くしかなかった。


「……どうしようもないのですか」


 モゥハは、静かに宣言した。


『龍神モゥハの名において。モゥハは人に不死を授ける術をもたない』


 神が神の名においてする宣言。俺を封印するという役目を果たすことはできないと明言したのだ。


『おお、人の子よ』


 その声色には、明らかにモゥハ自身の苦痛が滲んでいた。


『なぜそのように嘆くのか。見れば歳若く、まさにいよいよ花開かんとする季節ではないか。なぜ喜ぼうとしないのか。どうして自ら破滅を願うのか』


 彼はなおも語りかけてきた。


『花咲く大地を駆けよ! 星降る夜空を仰げ! 乙女を愛し、愛されよ! 友と語らえ! この世でお前のために取り置かれた楽しみを捨て去るな』


 俺は首を振った。


「私は、呪われています」


 これにモゥハは、宣言でもって応えた。


『モゥハの祝福は、ファルスの頭上にある』


 背後でウナが息を呑むのがわかった。

 けれども、モゥハの選択はもはや明らかで、撤回できないものだった。


『幸いあれ、吉兆の子よ』

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