呪われた生
慌ただしげな足音で、目が覚めた。
見えたのは黒い人型のシルエット。それが灰色の空を背景にして立っていた。
「ファルスは生きてる! おい、ジョイス、手伝ってくれ!」
「ラピはどうする!」
「それはマカせろ。ヒトリでいい」
聞き覚えのある声が、頭上で交わされる。だが、まだ体が痺れてうまく動けない。声も出せなかった。何より、ひどく気持ち悪い。
「ノーラは」
「ギィ」
「頼んだ」
少年の声が、おずおずと尋ねる。
「あの……タウルさんは」
「残念だが、近くに見当たらない。もうこのざまじゃ、どこに村があったかもわからない。あいつが死んだのは、俺達も見ている。悪いとは思うが、このまま行こう。クー、忘れ物とか何か、落ちているものがないか確かめてくれ。回収は任せる」
「わかりました」
周囲は、ほとんどが灰色の泥に覆われていた。その中心にあたるここだけは、なぜかさほど溶解が進んでおらず、黒尽くめの死体がそのままに残されていたが、ちょっと離れたところはひどいものだった。枯れ木すら残らず、何もかもが溶かし尽くされて、のっぺりとした丘になってしまっている。
「拾い終わったら撤収だ!」
俺は身動きもできないまま、ただ運ばれるままになっていた。さっきからずっと気持ち悪い。何かがグルグルまわり続けているような感じがする。
この世のものとも思われない景色が続いた。ひたすら灰色の泥が、山や丘にへばりついている。恐らく、その上にあった草木や動植物が溶解して、その場に取り残されたものだ。
少し進むと、ようやく少しマシな風景に切り替わった。といっても、ほとんど同じようなものだ。一応枯れ木が残っている、というだけ。命あるものは残されていない。一行を率いるフィラックは、ここも危険地帯と判断して、なお前進を命じた。
どれくらい経ったか、よくわからない。ようやく立ち枯れの森を抜け、途中まで枯れ果てた草原を通り、暗い緑色の森の手前までやってきた。その頃には、灰色の空がまた泣き出した。
「おい、まだ進むのか」
「いや……みんな疲れているだろう。ここで宿営しよう」
彼らは手際よくテントを立てて、そこに俺を横たえた。隣には傷ついたままのノーラがいる。腹部には深い傷跡が残されているが、ピアシング・ハンドの表示がある。まだ生きているのだ。とはいえ顔色は青白いし、やっぱりミスリルの武器で負傷したらしく、治癒していない。しかも肉体のランクも1まで下がっている。ほとんど死ぬ寸前だ。
俺は横になったまま、自分の中の『超回復』を移植しようとした。まずノーラに空き枠を作るために『魔導治癒』を回収しようとして……できないことに気付いた。
なぜだ? 枠の空きはまだあったはず……
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(自分自身) (48)
・アルティメットアビリティ
ピアシング・ハンド
・マテリアル プルシャ・フォーム
(ランク9+、男性、12歳)
・アビリティ マナ・コア・身体操作の魔力
(ランク9)
・アビリティ 超回復
・アビリティ 病毒耐性
(ランク7)
・スキル フォレス語 8レベル
・スキル シュライ語 8レベル
・スキル 剣術 9レベル+
・スキル 格闘術 9レベル+
・スキル 身体操作魔術 9レベル+
・スキル 病原菌耐性 9レベル+
・スキル 料理 6レベル
・マテリアル 神通力・霊力遮断
(ランク7)
・マテリアル 神通力・高速治癒
(ランク7)
・マテリアル 神通力・識別眼
(ランク6)
・マテリアル 神通力・念話
(ランク6)
・マテリアル 神通力・透視
(ランク7)
・マテリアル 神通力・暗視
(ランク6)
・マテリアル 神通力・魅了
(ランク5)
・マテリアル 神通力・危険感知
(ランク6)
・マテリアル 神通力・疲労回復
(ランク5)
・マテリアル 神通力・鋭敏感覚
(ランク5)
・マテリアル 神通力・超柔軟
(ランク5)
・マテリアル 神通力・俊敏
(ランク5)
・マテリアル 神通力・長寿
(ランク5)
・マテリアル マナ・コア・力の魔力
(ランク6)
・マテリアル マナ・コア・光の魔力
(ランク5)
・マテリアル マナ・コア・精神操作の魔力
(ランク6)
・マテリアル マナ・コア・火の魔力
(ランク4)
・マテリアル マナ・コア・水の魔力
(ランク4)
・マテリアル マナ・コア・風の魔力
(ランク4)
・スキル サハリア語 7レベル
・スキル ルイン語 7レベル
・スキル ハンファン語 7レベル
・スキル ワノノマ語 5レベル
・スキル 指揮 7レベル
・スキル 管理 7レベル
・スキル 政治 7レベル
・スキル 商取引 7レベル
・スキル 刀術 7レベル
・スキル 棒術 7レベル
・スキル 槍術 9レベル+
・スキル 盾術 9レベル+
・スキル 弓術 7レベル
・スキル 投擲術 7レベル
・スキル 拳闘術 7レベル
・スキル 魔力操作 9レベル+
・スキル 力魔術 8レベル
・スキル 光魔術 8レベル
・スキル 精神操作魔術 8レベル
・スキル 火魔術 7レベル
・スキル 水魔術 7レベル
・スキル 風魔術 7レベル
・スキル 土魔術 7レベル
・スキル 軽業 8レベル
・スキル 隠密 8レベル
・スキル 騎乗 8レベル
・スキル 操船 6レベル
・スキル 水泳 7レベル
・スキル 医術 7レベル
・スキル 鍛冶 8レベル
・スキル 木工 8レベル
・スキル 裁縫 7レベル
・スキル 薬調合 8レベル
空き(-15)
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息が止まりそうになった。
見たこともない状態になっている。空き枠がマイナス? しかも、魂の加齢が著しく進んでいる。
原因は……さっきの現象だ。周囲を灰色にした、あの破滅的なモーン・ナーの力。それによって、すべてではないにせよ、暴走したピアシング・ハンドの力に食い尽くされたパッシャの戦士達の能力を奪い取ってしまったのだ。あらゆる制約を受けずにこの力が荒れ狂った結果、俺の寿命すら使い果たそうとしている。
「ク、クー」
力を振り絞って、かすれ声を出した。
「はい!」
「そこの……ポーチから、種を」
「どの種ですか」
「全部、なんでもいいから、ここに出して」
とりあえず、超過分のスキルと空き枠一つを作らないと、ノーラを救えない。今すぐ使わない能力を、急いで空っぽの種に放り込み、ノーラから苦痛の原因を取り除くと、やっと一息ついた。とはいえ、過剰な能力の行使ゆえか、今でも頭がグラグラする。気持ち悪さもなくなってはいない。
「お水を飲みますか。それとも何か食べますか」
「いや……」
俺は、気になっていることをまず尋ねた。
「みんな、どうなった」
「それは」
彼は目を泳がせた。
「ラピは」
少しの間、彼は躊躇するように口篭もっていたが、意を決して言い切った。
「亡くなりました」
「そうか」
やっぱりそうだったのか。
黒いローブを身に着けていた。逆にノーラはあの格好だ。ということは……
「ノーラを庇ったんだな」
容易に想像がつく。
最初の襲撃で、ノーラが負傷した。目先の敵は腐蝕魔術で倒したものの、あまりの激痛ゆえに、すぐには立ち上がれない。ラピはノーラを逃がすべく、近くの森に逃げ込んだ。だが、パッシャの戦士には神通力がある。探知能力を持つ彼らに追われ、逃げきれないと悟ったのだ。
そうとなれば、もう二者択一だ。ほとんど動けないノーラを見捨てて一人で逃げるか。それとも、なぜか敵が執拗に狙ってくるノーラに成りすまして敵を引き寄せるか。ラピは、後者を選んでしまった。
パッシャの連中は、ノーラの特徴を言葉でしか知らない。黒髪の少女で、黒いローブを身に着けている。だから、クローマーも目的を果たしたと勘違いした。
「……俺のせいだ」
「そんなことは」
その時、テントの入口から、フィラックが立ち入ってきた。
「ファルス、どうだ、気分は」
彼はなるべく明るい声色でそう呼び掛けてくれた。元気づけようとしてくれている。だが、その気遣いに応じる余裕は一瞬で吹き飛んだ。
「フィラック! それは」
「あ? ああ、落ちていたから、ちゃんと回収したぞ」
彼が手にしていたのは、俺が持ち歩いていた剣だった。
「大事にしていたものだからな、ほら」
「やめて! 見せないでくれ!」
「どうした?」
俺は目を閉じて顔を背けた。
あの白い光をもう一度目にしたら、今度こそ魂ごと、モーン・ナーの呪いに絡めとられてしまう。
「た、頼むから」
体中が剣を求めている。それがわかる。だが、断固として拒否しなくては。
「そいつを……断罪の剣を、捨ててきてくれ。それはよくないものだから……二度と見せないで、ほしい」
「あ、ああ」
戸惑いながらも、彼は言う通りにしてくれた。
「ファルス様、平気ですか」
「大丈夫、これでいいんだ」
いくつかわかったことがある。
俺がなぜこの世界に転生したのか。あの紫色の大広間で神らしき男に案内されたのもあるが、多分、それだけではない。モーン・ナーは、俺がこの世界に生まれつくことを予期していた。
彼女の目的は、この世界の破滅だ。だが、それを自らの手で成し遂げることはできない。恐らくモーン・ナーは、もう滅ぼされている。その力は既に四散してしまった。だが、それでも彼女は、完全に消滅する前に、自らの神としての権能の中でも、最も重要なものを俺に託すことができた。
だが、なぜ俺なのか? それは、彼女の世界の断片……つまり『世界の欠片』を何かのきっかけで取り込んでしまったから。
何も俺だけが特別だったのではない。無数の欠片があったのだ。だが、俺の魂はまさしく彼女が求める資質を備えていた。
事実、俺は死後、二度と生まれないことを望んだ。この世界に転生してからも不老不死や永遠の封印を探し求めた。世界を滅ぼすのと、黙って一人で眠るのとに大きな違いはない。どちらも一切を拒んでいるのだから。
だからこそ、俺は呪いを宿してしまった。決して存在してはならないはずの、呪われた生命が地上に降り立ったのだ。
その上で、あのリンガ村の惨劇の夜に目覚めた力がピアシング・ハンドだ。人の経験や、成長した肉体を奪い取り、またそれを付与する。生ある何者かが過ごした時間を書き換える。運命に干渉する。まさしくモーン・ナーに相応しい能力だ。ただ、それを行使するのは俺というただの人間でしかない。だから、おのずと制約がかかっていた。もし制限なしにこの力を振るったら、あっという間に自分自身の命を使い果たして死んでしまうだろうから。
そのように考えると、ピアシング・ハンドに付随するこまごまとした事象にも説明が可能になる。例えば動物に変身しても、かくかくしかじかを済ませたら人間に戻る、と決めておいた場合には、その時点で俺自身の意識が吹っ飛んでいても、自動的にそのようになっていた。何のことはない。運命神の代理人たる俺が予め定めておいた運命だから、そうなったのだ。また、ヘミュービやアルジャラード、ゴーファトなどに能力を行使しようとしたときに、結果のビジョンが見えたこともあった。あれも、能力の行使によってもたらされる運命を予見していたのだ。
そして、なぜこの力にピアシング・ハンドという名前がつけられているのか。ハンドというと、人間の手のように思われるが、この英単語が意味するのはそれだけではない。時計の時針もまた、ハンドという。それにピアシングとついているから、意味するところは『刺し貫く時針』。何の捻りもなく、モーン・ナーが俺に運命の時針を突き刺したから。
俺が魔宮で見つけたあの剣は、恐らくはモーン・ナーが自身の使徒に与えた品なのだろう。うっすらと残るモーン・ナーの記憶から、あれが断罪の剣と呼ばれていたことがわかる。時と運命の女神らしく、その時針を模した神器だ。そしてモーン・ナーの残留思念は、俺にあの剣を手に取らせるべく、夢枕に立った。あれを振るって「断罪」を繰り返すたび、俺の精神は、魂は、どんどん彼女の望むように作り変えられていった。
これが神性を帯びることのリスクなのだろう。
イーグーは、能力を奪い取ろうとした俺に対して、よく考えろと言った。シーラは、不死を望む俺に、そんなかわいそうなことはできないと言った。ルアは、来たるべき災厄のことを知っていながら、すべてを語ることができなかった。
モーン・ナーが俺に付与したそれは、不完全な神性だった。それは絶大な力を与えるものではあったが、不死をもたらすことはなかった。そして同時に俺の自由を少しずつ奪っていった。
神性は自動的に機能する。例えば、ついさっき俺は暴走してパッシャの拠点を滅ぼし能力を片っ端から奪取していったが、なぜか料理スキルがまったく伸びていない。この料理スキルは、前世から引き継いだものだからだ。なぜ引き継いでいるかというと、そう望んだから。死と生の狭間で、俺が願ったのは、食卓の団欒だったから。また、だからこそ、然るべき時……あのセーン料理長との勝負の際に、俺はいきなり料理スキルを取り戻したのだ。俺は能力の枠に苦しみながら、なぜか料理スキルを外すことはなかったが、そもそもそれはできなかったのだ。今思えば、そうしようと考えることさえ、封じられていた。
この神性に関するリスクを認識させるためだろうか……モーン・ナーの残留思念が、自分の目的にとってのノイズとなることを嫌っていたのもあってか、俺はヘミュービやアルジャラードのディバインコアを奪うことができなかった。もし俺がそれらを奪っていたら、俺は神の不自由を受け入れなければならなくなる。それは今、ピアシング・ハンドから受けているものより、遥かに厳しい制約だったに違いない。
ただ、彼女の残留思念には、プラスの影響もあった。俺には幻術や精神操作魔術が極端に効きにくいという特徴があったが、これも同じ理由からなのではないか。既にモーン・ナーの強烈な意思が俺に干渉しているのに、ちょっとやそっとの魔法や神通力なんかでは、更なる影響を及ぼすことができなかったのだ。
では、モーン・ナーは邪神だったのか? どうもそうとは言い切れない。彼女の記憶の一部を、俺は垣間見た。法と秩序を司る神々の王、ウィーバルは、冷酷な圧制者だった。彼女はその苛烈な支配に憤って、ついに世界から時を刻む時針を取り外して、彼を討った。それもやむを得ないことだった。彼女の聖殿に残されていたタペストリーの数々には、その世界を生きる人々の悲劇ばかりが描かれていたのだから。彼女は、人々の憎悪からくる祈願を引き受けて、それに従っただけなのだ。
だが、秩序を喪失し、刻む時間を失った世界が存続できるはずもない。彼女の元いた世界を支えていた三つ足の高殿は、崩落してしまった。こうしてモーン・ナーの世界は滅び去り、彼女は従う神々と、憎悪に満ちた人々の魂を連れて、時空の狭間を彷徨った。
あとはシーラと同じだ。ポロルカ王国の政庁の地下、あの秘密の小部屋の記録にあるように、招福の女神が異世界から、更なる祝福をもたらす神々を招き寄せた。ティンティナブリアにはシーラが、南方大陸にはイーヴォ・ルーが降臨したが、やってきたのは善良な神々ばかりではなかった。
だから、この世界にやってきたモーン・ナーが人々に与えた奇跡……創世の女神が与えた神通力に相当する神秘の力とは、時間に関するものだった。つまり、黒竜の魔法だ。
サース帝、いや『裏切りのトゥラカム』は、これを「腐蝕魔術」と名付けた。彼はきっと真実を知っていながら、覆い隠そうとしたのだ。本質は物体が溶けてなくなるところにはない。モーン・ナーの奇跡は時間の操作にこそある。
腐蝕魔術によって物体が溶けていくように見えるのは、時間経過による劣化を引き起こしているからだ。変性毒によって人が死ぬのも、多分、体内で働く触媒や化学反応のタイムスケールを大きくずらす……恐らくは超高速での反応を引き起こすことで、生体反応を狂わせたためだ。反応阻害によって物理的な魔法の妨害ができてしまうのも、物理現象のプロセスに伴う時間経過に干渉するからだ。
そして、こうした時間への介入をもたらす魔力が、物体にこびりつく。空気中を漂う小さな塵などにだ。これらを摂取してしまうと体内で魔力が効果を発揮し、寿命を縮める結果になる。ムーアン大沼沢の汚染とは、これなのだろう。
俺は呪われていた。二つある呪いのうち、一つがこれだった。俺が生まれた意味。それは、モーン・ナーにとっては、この世界に終わりの時をもたらす……つまり、滅ぼすためだった。
そしてこれが、使徒が俺に付き纏う理由でもあるのだ。数多の世界を食らい、滅ぼしてきた女神の力。それを我が物としたいから。
ヘミュービが俺を邪悪なものと断じて殺そうとするのも、これでは当たり前だ。
では、これからどうしたらいいのだろう?
俺とノーラは寝込んだままだった。時とともに、ノーラの方は少しずつ回復してきていたが、俺の方は逆だった。能力枠は解放したはずなのに、それでは済まないらしい。
絶大な力を解き放った代償なのか、それともあの剣の呪詛ゆえなのか。次第に全身を苦痛と倦怠感が蝕んでいった。それに、ひっきりなしに幻聴が聞こえる。それは誰かの悲鳴であり、呻き声であり、また恨み言だった。今や横たわったまま、息をするのが精一杯だった。
夕方頃、だんだんと雨が本降りになってきた。テントの外で、フィラックとジョイスが話し合っている。残りの食料は多くない。このまま、北東地域まで抜けられるのか、次の村まで行き着けるのか。そもそも二人も病人を抱えた状態で、前に進めるのか。俺達に配慮して声を潜めてはいたが、うっすらと聞こえてきた。
だが、俺としてはもう、それどころではなかった。割れるような頭痛が続いていて、目を開けるとかすかな光でも殴りつけられたかのような衝撃を感じる。といって目を閉じていると、あの灰色の腕が今にも俺を取り巻いて、地獄に引きずり降ろそうとするかのような気がした。
だが、夜が近付くと、次第に天候は悪化していった。耳に荒れ狂う暴風が聞こえてきた。
ある瞬間、急に外の空気がテントの中に入り込んできた。と思ったら、あまりの勢いに屋根の部分が吹き飛ばされ、どこかへと飛んでいってしまった。
直に雨のシャワーが俺達に叩きつけられるようになった。外にいたディエドラが慌てて駆けつけてきて、ノーラを助け起こした。見る限り、彼女はやっと少し動ける状態になったようだ。
問題は俺だった。ペルジャラナンに揺さぶられても、立ち上がることもできない。数秒おきに思考が寸断され、意識は混濁したままだった。
暴風に目を庇いながら、ジョイスとフィラックが途方に暮れている。
クーは、この間も忙しく立ち働き、なるべく物をなくさないように回収してくれていた。飛んで行ってしまったテントの部分は仕方ないが、他はしっかり纏めてくれている。
だが、記憶が連続していたのは、その辺りまでだった。
いつの間にか、うなされている俺は誰かに抱きかかえられ、運ばれていた。
俺が目を開けると、その色黒の……恐らく西部シュライ人らしい見た目の大柄な男は、短く言った。
「ヘミュービが来る」
近くに、彼と共に歩く仲間の気配を感じた。
いずれにせよ、それ以上できることはなく、俺は意識を手放した。
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