旅の目的を語る

 何度目かの岩のアーチを抜ける。途端に明るい陽光が目に突き刺さる。うっすらと緑の上着を纏う岩山の姿は、サハリアのそれと違って、どこか優しく頼もしげにも見えた。

 足下のやや古びた石のステップは砂に塗れている。大勢の人が日々、ここを行き交う。今も俺達の目の前を、大きな麻袋を背負った男が横切っていく。

 振り返って右手を見渡せば、細長く続く岩と砂の通路の向こうに、目の覚めるような緑が広がる。キトの誇りとする茶畑だ。ここから西方大陸の各地で消費されるお茶が出荷されていく。一方、左手を見ると、この通路はちょっとした上り坂になっており、その向こうにある市街地はまだ視界に入ってこない。切り取られた青空には、白い雲がポツポツと浮かんでいる。


 横にいるノーラは何も言わないが、落ち着きなく左右を見回している。彼女もやはり人の子だ。見たこともない異国の景色に心を奪われることもあるのだろう。

 それに、今までが今までだった。ムスタムを出発してからずっと、落ち着かない環境で過ごしてきた。ドゥミェコンのウサギ小屋から戦場のテントまで。最後はハリジョンのティズの別宅でのんびりしたとはいえ、ほとんど缶詰生活だったわけで、あれはあれで退屈してしまう。


 歴代長官の居館の足下にあたるこの周辺は、ちょうどキト北東部の茶畑と南西部の商業地の中間に位置している。要するに、ここはこの街の住宅地だ。商業地にそのまま暮らすのは富裕層だから、ここにいるのは庶民ばかり。サハリアの家々を思わせる茶色の家々が並ぶが、どこも屋根だけはしっかり作られている。赤みがかった円筒形の瓦が用いられているのだ。それに、足下の通路の脇にもきっちりと排水溝が刻まれている。

 なるほど、サハリアとはあべこべだ。あちらはわざわざ家の中に水と緑を引き込むのに、こちらの人は、少しでも水を流し去ってしまおうとする。


 今日はペルジャラナンには留守番をお願いした。当然、彼は不満そうだった。人間の街を見物するというのは、彼にとって外せない楽しみなのだから。

 だから、そこは俺もなんとか言い訳した。いきなりリザードマンを連れていったら、普通の人は驚いてしまって大変なことになる。街中に魔物が現れたと大騒ぎになり、暴力沙汰になっても不思議はない。だから先に俺とノーラで、遊びに行けそうな場所を見繕ってくるんだ、と。

 もちろん、ただの方便だ。


 石の階段を登り切ると、そこからは街を一望できた。

 こちら商業地区の家々は、みんな壁が白塗りされている。見栄えの問題もあるが、何より重要なのはアルベド、つまり光の反射率だろう。ただでさえ、この地域は蒸し暑い。日光のエネルギーを熱として抱え込まないためには、こうした工夫が欠かせない。逆にさっきの住宅地の家々は、岩山に日差しが遮られることが多いので、そこまでする必要がない。

 ここから見下ろすと、街はきれいな扇形をしていた。そこに高さに従って順々に白い家と、赤みがかった瓦屋根がウエハースのように積み重ねられて見える。断熱性だけ考えるなら、瓦まで白くしてもいい気がするが、そこは汚れが目立つなど、美観の問題もあるのだろう。


 立ち止まり、ここまで届く海風が頬を撫でるに任せた。久しく味わったことのない、穏やかな気分だった。

 シックティルの言う通り、この街には、人の世の喜びを満たす何もかもがある。


 黒ずんだ下り階段に一歩を踏み出す。メンテナンスはされているのだろうが、雨の多いこの地域では、こうしたインフラの劣化も早そうだ。けれども、そうした石段の摩滅も、どこか風情があって好ましい。

 商業地区でもあまりに上の方は、そこまでお金持ちがいるのでもないのだろう。家々の勝手口は開け放たれて、そこにくすんだ色の上着を身に着けた中年女性がぼんやりと座り込んでいた。どこかから、子供達の笑い声も聞こえてくる。

 何かどこか、遠い記憶に触れるものがあった。いったい何を連想したのだろうと記憶をまさぐると、「夏休み」という単語がフッと浮かんだ。


「どうしたの?」


 思わず足が止まっていた。

 ノーラに呼びかけられても、すぐに返事できなかった。


「なんでもないよ」


 遠くまで来たものだ。本当に。


 ペルジャラナンへの言い訳とは裏腹に、俺達の行先はもう、とっくに決まっていた。シックティルが「重要人物の会合」と称して、キトの高級レストランを予約しておいたのだ。詮索無用とのきついお達しゆえか、俺とノーラはその外見と年齢にもかかわらず、何も訊かれずに店内に通され、奥の間に腰を据えた。

 案内されたのは、円形の部屋だった。目に見える範囲では窓もなく、壁も黒ずんでいる。黒い衝立の向こうに照明があるらしく、そこから仄かな光が上方を照らしている。南方大陸の人々はお香を好むのだが、この店でも例外ではなく、女の香水のような匂いが立ち込めていた。

 唯一の出入口だが、俺から向かって左手に細長い通路があり、その向こうに扉がある。間にはカーテンもある。扉の開閉は物音でわかるし、俺とノーラが大声で怒鳴り合うのでなければ、話の内容が外に漏れる心配はない。なるほど、シックティルはいい場所を見繕ったものだ。少なくとも、普通の人間なら、そうは盗み聞きなどできそうにない。


「こういう演出もあるのね」


 フォレス人の発想とはまた異なるデザインに、彼女は感心していた。ピュリスの飲食店の内装に取り入れたりとか、今からあれこれ考えているのだろうか。


「失礼致します」


 扉の開閉音に、俺達は振り返る。

 カートが押されてくる。そこにはテーブル用の丈の低い燭台と飲み物の入ったグラス、それに最初の料理が一皿ずつ。しかし、店員の顔は強張っていた。


「お寛ぎくださいませ」


 そう言い残して、彼は去っていく。

 そのぎこちない態度の原因は、俺だ。正しくは、俺の要求のせいだ。


「これは?」


 ノーラも俺の意図を汲み取って、冷たい視線を向ける。


「南方大陸では、フォレス風の食べ物は、まず望めない。こういう高級店であれば別だけど。奥地に向かえば、どんどん過ごしにくくなる。蒸し暑いし、食べ物も限られてくる」


 彼女は、すぐ目の前の皿……そこには、しっかりと揚げられたバッタが横たえられていた……に手を伸ばすと、あっさりその後ろ脚をもぎ取って、頭からバリバリと食べてみせた。

 砂漠で散々食べたから、もう慣れっこになってしまったのか。赤竜の谷から脱出して以降、彼女はペルジャラナンの調達する食料を口にするしかなかった。昆虫の後脚はトゲが多いので、そのまま食べると口の中が切り裂かれる。だから取り除くのが常識だが、それを身をもって学んでいたらしい。

 南方大陸では昆虫食が珍しくない。ただ、そこはやはり高級店で出すような料理とは考えられておらず、だからこそ店員も、これを何かの嫌がらせのようなものだと察しており、あのような態度をみせたのだ。


「これくらい、今更なんでもないわ」


 わかっていた。これからこういう不自由をするよ、と警告したところで、彼女は覚悟を固めるだけだ。

 タフィロン攻略前の、あのキスカが惨殺された夜にも、あれだけ追い詰めてやったのに。多分、俺を追いかけ始めてから、一番苦しんだのがあの夜だろう。だが、不幸にして彼女は立ち直ってしまった。自ら人を殺めるという最悪の苦痛から、這い上がってきてしまったのだ。


「これから、いくつか大事な話をしなきゃいけない。でも、知れば知るほど、危険が増す。だからこれは、最終確認なんだ」

「聞かせて」


 躊躇はこれっぽっちもなかった。


「わかった。まず、言わなきゃいけないのは、旅の目的だ」


 今まで、俺は何のために旅を続けているのかを伝えてこなかった。しかし、これからもノーラが俺の横で命を危険にさらす以上、何も知らせずにおくのは理不尽に過ぎる。


「僕が探し求めているのは、不老不死だ」

「不老不死!?」


 異常な目的に、さすがの彼女も目を見開いた。


「正確には、死ぬのは構わない。ただ、もう一度生まれないこと。僕自身を封印するのが目指すところだ」

「どうしてそんな」

「理由はいくつかある。僕は、そもそも人が生きるということ、それ自体の価値を疑っている。でも、だからって自殺しても意味がない。また生まれ変わるから」

「生まれ変わる?」


 理解できずに彼女は眉根を寄せた。


「人が死んだら、善行を積んだ人は天幻仙境に招かれて、悪いことをした人は幽冥魔境に落とされるんじゃないの?」


 そうだった。

 ノーラもこの世界の人間だ。女神教でそう教えているのだから、そのように考えるのは当然なのだ。


「それは嘘だ」

「嘘って」

「死んだ人は、魂だけになって別の次元に送られる。そこでまた、新たに次の世界に生まれ変わる」

「どうしてそんなことが言えるの?」

「見てきたから」


 俺が言い切ると、彼女は口を噤んだ。完全に常識外だが、事実を述べているであろうことくらいはわかる。


「不老不死になれば、生まれ変わることはない。あとは眠ってしまえば、生きる苦しみがなくなる」

「で、でも。ファルス、生きててよかったことだってあるじゃない」

「そうだね。せっかくお金持ちになったんだし、贅沢する楽しみだってあるかもしれない。だけど、それ以上に苦しいこともある。それがどんなものか、少し前に見てきたと思うけど」


 快適な生活の代償が、あのような悲惨な殺戮だとしたら、どうして笑って過ごせるだろう?


「だけど、最近になって、別の必要も出てきたんだ」

「それは何?」

「使徒に狙われている」


 ノーラに関わる部分は、むしろこちらだ。


「スーディアの件もそうだ。ゴーファトに取り入ったのはパッシャの連中だけど、そこに便乗したのは使徒だ。人形の迷宮でも、奴はノーラが死ぬのを期待していた。でも本当は、この前の戦争が狙いだった。もし何もかもが使徒の思い通りになっていたら、ノーラも死んでいたし、僕はガッシュやキースを殺していた」

「そもそも旅に出るから付け込まれてるんじゃないの?」

「それはそうだ。でも、旅をやめたらやめたで、もう一度出発させるために、僕の周りの人間が殺される。ピュリスのみんなが犠牲になりかねないぞ」


 これには実績がある。グルービーのバックにいたのが使徒だった。まさしくあのピュリス襲撃事件こそ、使徒の介入が始まった最初の出来事だったと思う。もっともタンパット村の疫病の時点で、既にグルービーは動いていたから、厳密に言えばそちらが先だが。


「僕の力のことは知ってると思う。奴の狙いもこれだ」


 ただ、人一人の命を奪ったり、経験をかすめ取ったりするだけの能力だ。使徒にとって、そこまで魅力的なものであるとは思えないのだが。現時点で奴と戦った場合、俺が勝てる見込みはほとんどないんじゃないか。

 もちろん、ケッセンドゥリアンの石化能力みたいな、とんでもないものを獲得すれば、大変に強力ではある。ただ、そのためにはそこまで行き着けるだけの能力が必要で、一日一度の使用しかできないピアシング・ハンドの制約を考えると、途方もない遠回りが前提となる。毎日有用な能力の持ち主に出会える保証もないのだから。

 むしろ俺が使徒なら、こんな面倒な能力の持ち主は真っ先に殺すか、積極的に封印する。能力の使い勝手は決していいとは言えないのに、時間経過とともに加速度的に強くなっていく。始末するなら絶対に早い方がいい。

 それをしないということは、やはり使徒には確固たる方針があり、目指すべきゴールがある。しかしそれは、どう考えても恐ろしいものだ。サハリアの戦争で一万人以上を手にかけた俺を見下ろしながら、奴は今頃ほくそ笑んでいるに違いない。


「つまり、この旅の終着点は、二つに一つしかない。僕が使徒の思い通りになって、何か恐ろしいことに手を染めるか……この前の戦争みたいに。或いは僕の目的が達成されて、不老不死になって、誰にも見つけられないところで眠り続けるか。どっちかだ。悪いけど、いくら頑張ってもノーラが報われることはない」


 残酷だが、はっきり言った。

 俺を無理やり連れ戻しても、使徒が嫌がらせを始める。だから旅を続けるしかないが、もし奴らの妨害の一切を撥ね退けて目的を達成したところで、俺は永遠の眠りにつくだけ。ノーラは一人になってしまう。


「まだ選択肢ならある」

「どうすればいいと思う」

「使徒を倒すことはできないの?」


 目から鱗、と言いたいが、まるで現実的ではない。


「こちらから奴を探し出して倒すのか。どうやって? 奴は多分、まだこちらに正体をさらしていない。第一、あれだけの力がある相手だ。仮にもし、世界中の国々に協力を仰いで全力で討伐に向かったとしても、犠牲者がどれだけ出るかわからない。いいか、今の時点でも、僕が全力で戦えば、赤の血盟を一人で滅ぼせるかもしれない。それと同じか、もっと強い相手と戦うんだ。巻き添えになって何十万人、いや何百万人も死ぬ。国がいくつ滅んでもおかしくない」

「そうね……」


 自分の頭につけたままの、あの蝶の魔道具に手を触れて、彼女は少し考えた。

 彼女自身、使徒の力の一端を目にしている。彼の道具一つで、ノーラはフマルの弓騎兵の集団を一方的に蹂躙できた。あの程度のことなど、使徒にとっては朝飯前なのだ。


「人が勝てないなら、神様に頼むのはどう?」

「なに?」

「ワノノマには、龍神モゥハがいまだに人々の傍にとどまっているというし、助けを求めるというのは」

「それはなしだ」


 俺は言い切った。


「ヘミュービにも殺されかけている。もちろん、これまで殺した人の数を思えば、今更殺さないでくれとは言えないし、言わないよ。だけど、死んでも生まれ変わる。使徒も、僕が死ぬこと自体はどうでもいいと思っているふしがある。待てばまた、僕の魂と一緒に、この力も戻ってくると思っているんだろうな」

「そんな」

「モゥハが僕を見て、好意的に振舞うとは考えにくいんだ。どんな扱いを受けるかはわからないけど、ひょっとすると想像もつかないほどひどい目に遭うこともあり得る。死ぬより苦しい何か、とか」


 要するに、俺は魔王からも女神からもつけ狙われる立場なのだ。

 そう考えると、シーラが俺を楽園に留まらせようとしたのも、わからなくはない。あれだって時間稼ぎにしかならないのだが、少なくとも俺が死ぬまでの間、その魂はあの場所に留まり、誰にも発見されることはない。世界の欠片も封印しておけるし、俺もつらい人生を避けることができた。


「でも、じゃあ、待って」

「なにか」

「それじゃあ、ファルスが人形の迷宮で求めていたものって、本当は」

「ケッセンドゥリアンの力で、永久に石像になるためだった」


 さすがにノーラも絶句した。

 そもそも死ぬための旅をしていたのだ。俺の「役立たず」発言の意味を、ここでようやく確認できたわけだ。


「一応、目的地についても説明しておく」

「うん」

「まず、これから大森林の奥地を目指す。不老の果実があるというから。今まで、聖女リントの不死伝説と、人形の迷宮の石像について確認した。その次に可能性が高いのが、これだ」


 しかし、その他の候補はもはや、あまり期待できない。


「これで不死を得られないと、かなり困ったことになる。次の目的地は、神仙の山だ」

「それって、アドラットさんの」

「そう、修行していた場所だそうだけど。でも、アドラットさんは不死について、何も言わなかった。寿命を延ばした職人はいても、不死になった人がいるとは言ってない。だから、望みは薄いと思う」


 よって、ここも駄目だった場合、最悪の目的地に向かわねばならない。


「神仙の山でも何も見つからなかったら、次は……ワノノマの姫巫女の伝説を調べる」

「さっき、モゥハには頼れないって言ったじゃない」

「頼れない。話をしにいったら、いきなり捕らえられて殺されるかもしれない」


 だが、他に選択肢がない。


「これはそういう旅なんだ。だから、ここでノーラには降りて欲しいと思っている」

「ペルジャラナンはどうするの?」

「先祖の歴史を知りたいと言っていた。だから、ナシュガズまでは案内したいと思っている」

「フィラックさんやタウルさんは」

「途中までは連れていく。大森林の探索を終えて、何か手柄とかでハクをつけてあげることができそうだったら、そこで後々までの面倒をみて別れるつもりだ」


 夢も希望もない先々に、ノーラは言葉を失った。


「今、引き返すなら、なくすものは少なく、得られるものはある。シックティルにキトの税収の大部分も譲るように言ってあげられるし、自分から僕の傍にいることをやめれば、使徒もノーラに注目する理由がなくなる。大変な苦労もしないで済むし、怖いこともなくなる」


 容赦なく現実を叩きつけられたノーラは、しばらくじっと考えているようだった。

 それでも、ついに彼女は静かに言った。


「わかった。それでも私は帰らない」

「どうするつもりだ。僕では使徒に勝てない。龍神に頼るのも無理だ。うまいこと不死を手に入れても、自分で自分を封印する。ついてきてもどうにもならないんだぞ」

「それはわかってる。でも、どうにかなるかどうかは、私が自分で見極める」


 まったく、ノーラの頭はどうなっているんだ。

 石頭どころか、もうこれ、アダマンタイトか何かでできてるんじゃないのか。ノーラの背骨に垂直に持ち手をつけて殴ったら、使徒だって粉砕できそうな気がする。


 とはいえ、これは予想の範囲内の回答だ。


「わかった。なら、もう命の保証はまったくできないが、それでも僕としては可能な限り、生き延びられるようにしたい」

「うん」

「僕の力を使って、出来る限りノーラの力も高めるつもりだ。ただ、今のところ、年齢もあってノーラをこれ以上強くするのが難しい。つまり、枠が足りないんだ」


 加齢によって増える枠が少なすぎる。といって、歳を重ねた分だけ肉体も劣化を避けられないので、結局、強くなるにも限度はある。


「だからといって、フィラックやタウルを強くするわけにもいかない」

「どうして」

「こんな秘密を知らせたら、もっと危ない目に遭う。ノーラはもう、ここまで知ってしまったんだから、どうしたって同じだ。だけど、二人はまだ引き返せる」

「そうね」

「それに、僕のことをあちこちで言いふらされたら大変なことになる」


 そこまで喋ったところで、ノーラも察したらしい。


「つまり、ペルジャラナンを強くしたいということね」

「そうなる。ただ、限度を考えないと周りから怪しまれるし、もちろんペルジャラナン自身にも本当のことは教えないつもりだ」


 彼との意思疎通には、今のところ精神操作魔術が不可欠だ。俺が自分でやってもいいのだが、これまでそうしてきたのだから、ノーラを介したほうが自然だろう。


「何より、最悪の場合は、僕が抑え込める程度の強さにしておかないといけない」

「信用できないということ?」

「それもないでもない。いや、ペルジャラナンには感謝してる。信頼もできると思っている。だけど、前に怖い能力みたいなものが引っ付いていたから、最悪の場合を考えると……リザードマンの体は人間より強いから、無制限に力を与えてしまうと、殺す以外に止める方法がなくなる」


 なんとも匙加減が難しいところだが。


「お金もどんどん使う。クース王国から採掘された貴金属のおかげで、優れた武器がカリで手に入るらしい。お金に糸目をつけずに、フィラックやタウルのための武器を買い揃えるつもりだ」

「いいと思うわ」

「話したいことはこれだけだ。せめて、みんなには無事でいて欲しい」


 ノーラが頷くと、俺は呼び鈴を鳴らした。

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