ヨルギズの記録

 休養が精神を落ち着かせてくれた。

 確かにここから脱出したいとは思っている。しかし、闇雲に上を目指すのはどうか。この場所がどういうルールで管理されているのか、ろくに知りもしないのに、強引に先を目指すのは、あまりに危険ではないか。

 幸い、ポーチの中にはシーラのゴブレットがある。絶対量が少ないので、これだけに頼るわけにはいかないが、すぐさま飢餓に陥るわけではない。ならば、時間をかけて調査を行い、準備を整えてから、次のアタックに取りかかるべきだ。


 そういう考えで、俺とソフィアはこの階層をほっつき歩いている。

 それでわかったことが、いくつかある。


 まず、このフロアの大部分は、現在使用されていない。恐らく人手が足りていないのだ。

 どんなに立派な建築技術があろうとも、稼働中の設備というのは、常にメンテナンスを必要とする。金属はそのうちたわんでくるし、錆びたりもする。木材も歪みが出る。清掃だって必要だし、石の床が割れることもあるだろう。

 そうした破損が修復されていない。非常に広い範囲にわたって、二重扉の個室が存在するのに、開けっ放しになっているか、閉じたままかで、中の水路は詰まっているか、水漏れを起こしているかのどちらかだ。


 では、きれいな領域はというと、これが存在する。

 だが、俺達はそこには近付かなかった。それと察した時点で、すぐ遠ざかることにしたのだ。なぜなら、遠くからあのペタペタという足音が聞こえたからだ。


 よって正確なことはわからない。ただ、グレムリン達には、みんないずれか専門特化した生産技術があった。薬を作ったり、金属製品を拵えたり。となると、ここはそういう作業に必要な施設の一つなのだろう。


 ざっと見てまわった結果の判断に過ぎないが、これら二重扉の領域は、あの気持ち悪い樹木もどきの見える中心部の付近に配置されている。そのうち四分の一程度が、今も稼動している。

 もちろん、それだけで終わりでなく、更に外側には別の領域が広がっていた。


 何に使うのかは不明だが、広大な貯水池があった。

 これまた真四角で、その上に手摺りのない直角に交わる通路が引かれていた。そして、石造の家屋のような立方体の構造物が、遠くに点在している。

 水は濁っているわけではないが、光を当てても底までは見通せない。中に変なものがいるかもしれないので、注意が必要だった。


「あの」


 ソフィアが遠慮がちに小さな声で訴えた。


「わかった」


 そろそろ疲れてきた、というサインだ。最後まで言わなくてもわかる。

 そう長い時間、活動したわけではないが、休憩はこまめに取ったほうがよい。俺達は、安全な場所でピクニックを楽しんでいるのではない。暗がりの中で危険に備え、緊張しながら歩いているのだ。まして彼女は、照明を維持し続けるという仕事を引き受けている。トーチもリュックと一緒に全部なくしてしまったので、もうソフィアが力尽きたら、視界を得る手段がなくなってしまう。


 手近な石のブロック。溜め池の上にある、真四角の建物だ。あの中に入って、特に危険がなければ休憩としよう。


 中は、本当にただの小屋のような作りだった。扉のない入口、少し小ぶりの椅子と机、それにベッド。どれも材質はよくわからない。木材というより、やっぱりこう、何か前世の化学製品のような印象がある。もちろん、椅子や机の骨組みは金属だったし、ベッドの土台の部分は石だった。使用者に触れる部分が、謎素材だったということだ。

 物品のサイズから考えると、グレムリンの宿直室といったところか。ただ、生活感がない。やはり最近は利用されていないのだろう。


「ん? ソフィア、ここに何かある」


 掌の上の照明を向けてもらった。部屋の隅に、何かが転がっていたからだ。


「本、ですか?」

「果たして、読めるかどうか」


 取り上げて、広げようとしてみる。紙が湿気を一度吸ったのだろう。変にゴワゴワしていた。

 ページ同士がくっついてしまっている箇所もあるようだ。間違って破ってしまわないように、と格闘しているうちに、紙が一枚、はらりと落ちた。それをソフィアが拾い上げた。


「これは、普通のルイン語ですよ」

「古代のではなくて?」

「ご覧ください」


 確かにそうだった。

 そこにはこう書いてあった。


『後の世の人に託す かなうならば、我らの言葉を届けて欲しい ショルの司祭ヨルギズ 記す』


「ショル?」

「確か、マルカーズ連合国側にある都市の一つだったかと思います。ムーアン大沼沢の畔にあるのですが」


 つまり、外国から来た人、か。

 するとこの本は、彼の日記帳か?


「疲れてるかもしれないけど……」

「構いません。私も何が書いてあるか、気になります」


 俺は頷いて、ページをめくった。


 * * * * * * * * * * * * * * * *


『女神暦 九百三十八年 信仰告白の月 二十八日』


 聖地巡礼の許可を求めてより三ヶ月、ようやく教皇庁の許可を得た。

 やはり無管轄の教会で女神に仕えていること、また国外に出ることを選んだ過去が影響しているのだろうか。

 しかし、私の信仰には傷一つない。それは誰よりモーン・ナーがご存知のこと。

 今回、同行者を連れての巡礼も許された。

 ならば、親愛なるドスティム、コーザ、それとシアバルも連れて行こう。

 彼らはこの教会の設立に際して、本当に私の力になってくれた。


『女神暦 九百三十八年 礼拝の月 十五日』


 真冬の最中にセリパシアの北端を旅するのは厳しい。

 仲間達の燃えるような信仰心を宥めるのは、私にとっても難事だった。

 気持ちだけなら、同じだったからだ。

 今は沼地の傍にも、水気をたっぷり含んだ緑の草葉が芽を出している。

 旅立つにはちょうどよい季節だ。

 秋までには帰ってくることができる。

 それまで教会の管理をポロクスに任せなくてはならない。

 これだけが心配の種だ。


『女神暦 九百三十八年 禁欲の月 七日』


 純白の聖都!

 この日をどれほど待ち焦がれたことか。

 心のどこかで、ずっと引っかかっていたことだ。

 地方で学び、そこで司祭に叙任され、国内の管轄教会の職がないために南を目指した。

 私は貧しかったのだ。

 それでハンターの真似事をしながら糊口をしのぎつつ、人々に女神の正義を説いてきた。

 その生き方を恥ずかしく思うことはないが、ただ一つ、私は聖都を目にしたことがなかった。

 もしかして私は、自分が知りもしないことを人に教えていたのではないか、と。

 だが、憂うことなど何もなかった。


『女神暦 九百三十八年 禁欲の月 十九日』


 昨日は感激のあまり、日記を書くのも忘れてしまった。

 けれども、この気持ちが冷めないうちに、何か一言でも書き残しておきたい。

 なんと教皇聖下じきじきにお褒めの言葉を賜るとは!

 努力次第で、私が設立したショルの教会を、管轄教会にしてもよいとのことだった。

 そのためには更なる善行に励み、男爵の好意を勝ち取らねばならない。

 望むところだ。それに閣下も近々認めてくださるだろう。

 ただ、もしそれが実現した場合に、心残りとなることが一つだけある。

 これまで私を支えてくれていたドスティム達に、なんと言えばいいのだろう。

 もちろん、彼らは許してくれると思うのだが。


『女神暦 九百三十八年 禁欲の月 三十日』


 夢のような時間にも終わりがある。

 明日には聖地を去り、二日後にはもう、ティングラス居留地に宿を取る。

 なんと離れがたいことか。だが、私には使命がある。

 ショルに帰り着き次第、男爵には教会の件について相談させていただこうと思う。

 もちろん、政治的な利益についても説明するつもりだ。

 ドスティム達は、私の悩みを受け入れてくれた。

 せっかく一緒にジェードにまで登り詰めた仲間達だが、私はここで聖なる務めに専念させてもらう。

 残念だが、私は彼らほど若くもないし、体力の衰えも無視できなくなってきた。

 それに冒険者をやめても、彼らの力になることはできると思う。


『女神暦 九百三十八年 喜捨の月 二日』


 頭の上から冷水をかけられたような気分だ。

 まさか、地上で最も清らかであるべきこの聖地の間近で、あのようなものを見るとは。

 ムーアンの畔では、黒地に黄色の毒々しい姿だったが、ここでは灰色だ。

 汚らわしい虫が人々を傷つけるなど、許しがたい。

 とはいえ、私達が居合わせたのは、女神の計らいなのだろう。

 何匹かは取り逃がしてしまった。

 農民達は私達に感謝してくれたが、これで彼らの不安がなくなるわけではない。

 ショルの教会に帰れば、私は冒険者を引退する。

 ならば、ここで最後の奉仕をしてもよいのではないか。

 仲間達は賛成してくれた。


『女神暦 九百三十八年 喜捨の月 四日』


 今、テントの中でこれを書いている。

 ついに奴らの巣穴を見つけた。

 こと追跡にかけては人後に落ちないコーザの手柄だ。

 身をかがめれば、なんとか大人の男が入っていけるほどの入口が、この近くにある。

 明日は中に踏み入って、奴らを一網打尽にしてやるつもりだ。

 女神の加護のあらんことを。


『女神暦 九百三十八年 喜捨の月 七日』


 日付は、はっきりしない。

 コーザは暗闇の中でも正確に時間を測ることができる。

 彼によれば、もう七日だということだ。

 私は今、自分を落ち着かせるためにこれを書いている。

 最初、仕事は順調だった。

 何匹かの大蜘蛛が現れたが、それはドスティムの剛勇とシアバルの奮戦、コーザの機転によって、見事退治することができた。

 だが、それで引き揚げるわけにはいかない。

 まだ私達は、奴らの卵を見つけていなかったからだ。

 それを焼き払うまでは、と奥を目指した。

 しかし、奇妙なことに、どこまで歩いても底が見えない。

 卵も見つからない。

 この穴倉はどこまで続くのだろうか。

 コーザはいったん引き揚げたほうがいいと言う。

 ドスティムとシアバルは、あと少しだけ先を目指そうと言う。

 私は悩んでいたが、多数決でことを決めることにした。


『女神暦 九百三十八年 喜捨の月 九日』


 なんとしたことか。

 確かに私達は、蜘蛛の巣を見つけはした。

 だが、その巨大なこと、数の多いこと。

 とてもではないが、手に余った。

 退路を塞がれた私達は、逆に奥へと逃れるしかなかった。

 だが、そこで見たものは。

 古代の遺跡であろうか。

 広々とした天井、石の壁。

 驚きは小さくなかったが、私達は必要なことについて話し合った。

 明日は全員で巣に戻ろうと。

 退治は諦めて、なんとか外に出る。

 それを教会に伝えて、後の始末を頼むのだ。

 さすがにこれは、一介の冒険者の肩に載せるには重過ぎる仕事だ。


『女神暦 九百三十八年 喜捨の月 十一日』


 私達は絶望しかけている。

 女神よ、迷える者に心の杖を。

 引き返した私達が見たものは、ただの破壊の形跡だった。

 たった一日のうちに蜘蛛の巣は一掃され、私達が通った穴も、埋められていた。

 ドスティムが手にしたツルハシで掘り進もうとしたが、少し進んだところで、ちょうど通路の幅くらいの固い岩にぶつかった。

 四人がかりで動かそうとするも、まるで持ち上げられなかった。

 周囲も完全に埋まっている。

 いったい誰がこんなことをしたのだろうか。


『女神暦 九百三十八年 喜捨の月 十二日』


 上に向かう階段と、下に降りる階段を見つけた。

 ここは地下なのだろうから、上を目指すべきだ。

 私達にはもう、あまり時間がない。

 持参した保存食も、心細くなってきた。

 当初はかなりの余裕をもっていたのに。


『女神暦 九百三十八年 喜捨の月 十三日』


 あのような怪物は見たことがない。

 牛のような巨人とは。

 果敢なシアバルが先手を取った。

 だが、しまいにはドスティムでさえ、敵の刃を支えきることができなくなった。

 不運なコーザが手傷を負った以上、更なる危険は冒せない。

 下に逃れる他なかったのだ。

 しかしそこでまた、いやらしい小人達に追い回されることになろうとは。


『女神暦 九百三十八年 喜捨の月 十五日』


 これほど悲しいことがあろうか。

 手当ての甲斐もなく、コーザは息を引き取った。

 冒険者が危険な仕事であることは、誰もが承知していたし、納得もしていた。

 だが、まさかこのようなところで最期を迎えるとは。

 せめて彼に女神の報奨のあらんことを。

 なお、コーザがいなくなった以上、今後はもう、腹時計でしか時を測れない。


『女神暦 九百三十八年 喜捨の月 十六日』


 コーザの最後の言葉と、シアバルの意見が気にかかる。

 私達はティングラス居留地付近の巣穴から、奥を目指した。

 かなり深い位置まで潜ったが、方角としてはだいたい北に向かっていた。

 シアバルは、よりによってここが聖なる都の地下ではないかと言い出したのだ。

 これにドスティムは怒り出したので、私は宥めなくてはならなかった。


『女神暦 九百三十八年 喜捨の月 恐らく十七日』


 古い兜が転がっているのを見つけた。頭蓋骨も。

 迷い込んだのは私達だけではなかったのだ。

 食べるものが尽きようとしている。

 他の出口も見つからない。

 それにしても、これほど広大な地下空間があろうとは、誰が知ろうか。

 二人は訝しむばかりだったが、私には心当たりがあった。

 だが、それを言葉にすることを躊躇わずにはいられない。


『女神暦 九百三十八年 喜捨の月 恐らく十九日』


 シアバルが死んだ。

 だが、彼の亡骸を弔うことさえできない。

 あれはあまりに強大な相手だった。

 今は下の階層から逃げ帰って、ドスティムの傷が癒えるのを待っている。

 私達は、ここから出られないのかもしれない。

 それでも、最後まで力を尽くすべきだと思う。

 それが先に命を落とした二人の仲間への手向けとなるだろう。


『女神暦 九百三十八年 喜捨の月 日付不詳』


 別の道を見つけて、下に降りることができた。

 相変わらず上に向かう別の道は見つからないが。

 可能な限り節約したが、ついに食料が尽きた。

 だが、私もドスティムも、既に覚悟を決めている。

 女神に仕える者として、堂々と最期を迎えるつもりだ。

 せめて最後に、この場所についての真実を見極めようと、意志を確認しあった。


 これより下に、どれほどの危険が待ち受けているかもわからない。

 だから私は、いったんここに記録を置いていく。

 私達がこの下で息絶える可能性があるからだ。


 考えたくはないが、一つだけ思い当たることがある。

 それについて述べておこう。


 昔から、セリパシアで活動する冒険者達の間に、ある噂があった。

 この地のどこかに「帰らずの迷宮」があるという。

 誰がそう言い出したのかはわからない。

 第一、おかしいではないか。

 生還者がいないのなら、存在が知られるはずもないからだ。

 だが、仮に生きてそこを出ても、すぐ呪い殺されるのだ、という話も聞いた。

 誰が言うともなく語られるその迷宮……


 ここがその場所、あの「魔宮モー」なのかもしれない。


 * * * * * * * * * * * * * * * *


 ……俺は、最後のページを確認して、本を閉じた。


 俺もソフィアも、何も言い出せなかった。

 あまりに状況が深刻だったからだ。


 魔宮モー。

 半ば伝説と化した、世界で最も危険な迷宮の一つ。

 生還者はほとんどおらず、記録もほとんど残されていない。

 僅かな生き残りも、あくまで噂ではあるが、一人残らず早死にしている。


 なぜそうなのか。

 今、数々の事実が符合した。


 生還者が少ないのは、無理もない。

 単純に、ここに出没する魔物の強さが並外れているからだ。

 ミノタウロスなどは、一匹だけでも中堅以上の冒険者の集団を相手取るだけの力を備えている。グレムリンにしても、完全な暗闇の中であれば、一人前の戦士に勝るとも劣らない。加えて、猛毒を持つ巨大な蜘蛛や、いきなり頭上から襲いかかるスライムなどもいる。

 おまけに、あのアルジャラードの存在もある。うっかり大ホールに出ようものなら、奴に追いかけまわされて、何がなんだかわからないうちに殺される。つまり、普通に階段を登るルートでここを脱出した冒険者は、いないことになる。


 では、僅かな生還者はどうやって外に出たのか?

 それについてはまず、どうやって入ったかを考える必要がある。


 ヨルギズ達は、蜘蛛の巣を探してここまでやってきた。

 その蜘蛛は、魔宮モーから這い出てきたものだ。つまり、横穴は彼らが掘った。

 俺達みたいに廟堂の地下の横穴から突き落とされた連中以外は、みんなこのルートで迷い込んだのだ。


 裏を返すと、虫どもはあのアルジャラードの支配下にはないとわかる。知能が低すぎて、命令に従うということができないのだ。

 で、仕方がないので、連中が開けた穴は、グレムリンやミノタウロスが埋めてまわることになる。

 アイドゥスは、たまに聖都近郊の村に、虫型の魔物が出没するのだと言っていた。その発生源は、他でもない聖都の地下にあったのだ。


 この迷宮からの生還者は、そういった虫どもの活動によって脱出を果たしたのだろう。もちろん、虫がいつもいつも穴を開けてくれるわけではない。もしあっても一年に一度とか、ひょっとするともっと稀なことかもしれない。

 多分、脱出できた連中は、最初に虫が作った穴から入って、それが埋められる前にすぐそこから出たのだ。ここの主は、長期にわたって穴が開いたままの状況を許さないからだ。

 彼らは迷宮の深部にまで立ち入ったわけではない。しかし、人工的な建造物を目にしている。そして、謎の迷宮について噂話をするわけだ。


 さて、そこで教会の出番だ。

 彼らは廟堂への不法侵入者を、当たり前のように突き落としていた。俺を別としても、ソフィアに対してもそういう対応を選んだ。迷宮に落としてしまえば、普通は這い上がってこない。そうわかっているからだ。

 しかし、この場所が人に知られては困る。それはそうだろう。女神を崇拝する教会の真下に魔物の巣がありましただなんて、スキャンダルでは済まない。だから、地下には忍者どもを飼っておき、常に見張りをさせる。一方で、魔宮モーの噂をする馬鹿者がいないか、いつも気を配っている。

 もし生還者を見つけたら、どうするか。言うまでもない。どんな手を使ってでも抹殺する。


 魔宮モーの場所がはっきりしないのも、これで納得だ。

 本当の入口は廟堂の地下にある。だが、臨時の入口なら、そこを中心にして、あちこちに発生する。内側からはアルジャラードが、外側からは教会の暗部が、それぞれ穴埋めをする。こうして迷宮があった事実そのものが葬り去られていく。


 では、教会とアルジャラードとの間には、何らかの約束とか、そういうものはあるのだろうか?

 これは、まだわからない。

 奴がなぜ、中にいる人間を、侵入者含め外に出すまいとするのか。何のために武器や資源を溜め込んでいるのか。あの気持ち悪い大木の正体は。


「……休もう」


 ソフィアは黙って頷いた。


 この場所に落ちた以上、外の世界すら、味方ではない。

 だとしても、それがどうだというのだ。


 まだ希望はある。

 過去でもない。未来でもない。

 今を、ただ今を見据えるのだ。

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