闇医者

 祭りの町は、根本的には娯楽施設ではない。ゆえに、手に入る食べ物にも限りがある。

 北上すればするほど、どんどん制約がきつくなるのだが、ここでは串焼き一本買うのにも、一苦労だった。鶏肉を提供できないほど農民が貧しいわけではない。もし自宅の庭に鶏がいても、それをここで販売する理由が求められるからだ。

 別に例のゴブレットの飲み物だけでも生きられるとは思うのだが、やはりいろんなものを口に入れたくはある。だから探し回っていたのだが、もうこんな時間になってしまった。


 既に日もとっぷり暮れて、建物の入口付近に点々とランタンの灯が見えるだけだ。

 ここからは、お楽しみの時間になる。歌や踊り、大道芸などはもう見物できない。出店もみんな閉まってしまった。となれば寝るしかない。それはわかるのだが。


 ぼんやりと窓の外の薄暗い景色を見ながら、俺は頭を抱えていた。

 右隣からも、左隣からも。うるさいったらない。おっぱじめるにしたって、もうちょっと後にしたらどうなんだ。こっちはまだ、串焼き肉を食べきってもいないんだぞ。


 とはいえ、文句を言うのは筋違いだし、酷でもある。ここに来られるのはよくて月に一度。町が開放されるタイミングなら月に二、三度はあるのだろうが、毎回通っては白い目で見られる。だからそれまで、彼らは欲望を溜めに溜めている。それにここで頑張らないと、子宝を得られない。


 聞こえないふりをして、最後まで食べきった。さあ、どうしよう。寝られる気がしない。

 多少待てば、ちょっとは静かになるだろう。なら、それまで散歩といこうか。


 夜になっても、守衛は門の前に立っていた。さすがに司祭はいなくなっている。兵士も、さっきのとは交替しているようだ。

 俺は、立ち並ぶ家々を見上げた。あそこにある部屋、部屋、部屋……ほとんど全部が夫婦で埋まっていると思うと。前世の知識などから、性欲自体が理解できてしまうだけに、ちょっとだけ羨ましく思わないでもない。だが、それ以上にいびつさを強く感じた。

 普通、人が便意を感じたら、どこへいく? トイレだ。排泄物は、そこに集中する。一方、食事はというと、一応食堂というものが存在するとはいえ、基本、どこで食べてもいい。持ち込んだパンを、ハイキングのついでにかじっても、何ら問題はないのだ。

 そういう文脈で考えると。セリパス教徒にとっての性とは、やむを得ない排泄行為同然なのだ。どれほど嫌っているかがよくわかる。だが、自分の体の自然な衝動なのに。


 どうしてそんなに性を忌み嫌うのか。

 何か特別な理由でもあるのだろうか?


 広場を離れて、暗い脇道に入った。

 目的地などない。どうせ夜間は柵の外には出られないし、迷ったところで大した問題はない。厳重な警備体制が敷かれているので、逆に盗難の心配もないくらいだ。だから気楽に歩ける。

 さあ、ここを左に曲がろう……


 そこで俺はギョッとして立ちすくんだ。

 数人の女達の目が、暗がりの中で光っていたからだ。


 ああ、またか。


 恐らくだが、彼女らは「隠れ娼婦」だ。

 この場所では、夫婦間の性行為が容認されている。これに便乗して、夫婦のふりをして売春に勤しむ。これが儲からないはずがない。特に未婚の若い男は、激しい性欲をもてあましているはずだ。しかも、この国では自慰さえ難しい。

 もちろん、発見されれば大変なことになる。とはいえ、常に危険というほどでもない。兵士や異端審問官も、まさか行為中の部屋に殴りこむわけにはいかないからだ。他人の性的な姿を見物するのも、重大な罪だ。

 だが、密告があれば話は別だ。だからこそ、彼女らの商売は大変にリスキーだ。客が金を踏み倒しても、騒ぎ立てるなんてできない。事実が知られたら、どちらにも重い処罰が下される。特に、どちらかが既婚者だった場合、命にかかわる。


 俺は手をあげて、無言で通り過ぎようとした。密告なんてしません、詮索なんてしません……


 砂利を踏みにじる音がした。

 月光が人の影に遮られる。


 女達は、俺の通行を許そうとしなかった。顔には緊張の色が浮かんでいる。

 なんだ? 今までも祭りの町で娼婦達を見かけることならあった。だが、こちらが無関心なことを伝えれば、大抵は丸く収まった。


 睨みあう俺と女達の間に、沈黙が横たわった。


「アウッ、アアッ」


 すぐ脇の建物の裏口。そこから女のくぐもった悲鳴が聞こえてきた。声色には余裕など一切ない。客に聞かせるお芝居の喘ぎ声なんかとは、まるっきり違う。

 俺が顔色を変えたのに気付いて、女達は身構えた。二人が回りこんで、俺の背後を塞ぐ。残りは前だ。合計七人。だが、手強いのはいない。


 しかし、困った。片付けるのは簡単だが、ここでトラブルを起こしたくないのは、俺も同じなのだ。


「あの……」


 言い終わる前に、鼻先を棒がかすめた。


「オアッ!?」


 剣を抜きざま、棒を弾き落として、刀身の腹で手の甲を打った。

 ほぼまったく武術の経験のない、完全な素人。それもただの農婦だ。難しくもなんともない。


 だが、これでも残りの女達は怯まなかった。いや、恐れならあるのだろうが、退こうという気配が見えない。みんながみんな、必死なのだ。


「やめてください」


 俺は、なんとか言った。


「でないと、大声で騒ぎますよ」


 この宣言に、彼女らは硬直した。進むもならず、退くもならず。どうしても譲れないらしい。

 面倒なことだ。こうなれば、一人か二人、蹴散らして走って逃げるか?


 そう思った時だった。


「静かにしてくれないか」


 小さな裏口から、大柄な男性が姿を現した。

 それは異様な外見だった。全身、紺色の分厚いマントに覆われている。頭にも同じ色の帽子。そして顔には、鼻の部分が尖ったマスクをつけている。

 声色から判断するに、あまり若くはなさそうだった。


「その子供は?」

「先生、済みません」


 女の一人が、棒を手にしたまま、小声で謝罪する。

 彼は俺を見やると、少し思案してから言った。


「旅人だな。珍しい。今、手が離せない。邪魔しないでほしい」

「邪魔ってなんですか。そっちが勝手に襲いかかってきたんですよ」


 すると、彼は脇に立つ女に視線を向けた。女は、棒に寄りかかったまま、顔を伏せた。


「慌て過ぎたようだな」

「何をしているかは知りませんが」


 俺は納得していない。何もしていないのに、いきなり襲われたのだ。


「中で誰かを傷つけているというのなら、僕は守衛を呼びます」


 この宣言に、女達は色めき立った。だが、男は動じなかった。


「納得したら、おとなしく帰ってくれるか」

「ええ」

「では、中へ」

「先生」


 女達は非難するような目を向けるが、彼は構わなかった。俺も構わず、彼の後を追った。


 ランタンの橙色の光に照らされた室内に入ると、熱気と湿気が顔を覆った。

 室内の中央にはベッド、そして一人の女性が半裸で横たわっている。下腹部が大きく膨らんでおり、両手には棒を握らされている。


「済まない。続けよう」

「先生……」


 部屋の中には、また三人ほど女達がいた。

 それと、小さなコンロのようなところに鍋が置かれて、そこで湯が沸かされている。


 考えるまでもない。

 これはお産の現場だ。しかし、なぜ?


「しっかりするんだ。ベッドを蹴って。そう、足踏みするんだ」


 青いマントの仮面男は、そう指示をする。

 額に汗の雫を浮かべながら、妊婦は言う通りにしている。だが、かなり長いこと苦しんだせいか、どうにも力強さがない。


 これはどういう状況だろう? 質問していいのかどうか。ただ、周囲の女達の様子からすると、どう考えても深刻な状態なのだろう。

 目の前の男は、医師らしいが、信用できるのか? 下手をすれば、母子ともども命を落とすことになるが……


 俺は、ピアシング・ハンドで正体を見抜いてやることにした。


------------------------------------------------------

 アイドゥス・ハイブ (57)


・マテリアル ヒューマン・フォーム

 (ランク6、男性、57歳)

・マテリアル 神通力・予知夢

 (ランク4)

・スキル ルイン語   8レベル

・スキル フォレス語  7レベル

・スキル サハリア語  7レベル

・スキル シュライ語  4レベル

・スキル ハンファン語 5レベル

・スキル ワノノマ語  3レベル

・スキル 政治     4レベル

・スキル 指揮     4レベル

・スキル 管理     6レベル

・スキル 光魔術    7レベル

・スキル 治癒魔術   7レベル

・スキル 料理     4レベル

・スキル 医術     7レベル

・スキル 薬調合    7レベル

・スキル 騎乗     5レベル


 空き(41)

------------------------------------------------------


 どうしてこんなところに。

 まさか贖罪の民……いや、それは違う。彼らは俗世のことには関わらない。神通力はあるが、一つだけだ。恐らく、ジョイスのように何かきっかけがあって、偶然に覚醒したものだろう。

 してみると、彼はその偶然を生かした天才だったことになる。予知能力は強力な武器だ。何をすれば自分の成長に繋がるか。よりよい機会を選び取りながら、努力を重ねてきたに違いない。でなければ、身に備えた能力について説明できない。

 しかし、それでも辻褄が合わないのが、政治その他の能力だ。これらは人を統率する立場にならなければ、伸ばす機会自体がない。そしてこの国での指導者とは、即ち聖職者だ。ならば彼は、かなりの地位の高僧であることになる。


 だが……


「済みません、これは」

「見ての通り、お産の現場だな」

「順調……ではないような」

「君」


 彼の視線が険しくなった。余計なことだった。確かに。患者の前なのだ。


「いえ、素人が済みません」


 アイドゥスは妊婦に向き直り、言った。


「不安に思うことはない。もっと難しい患者など、掃いて捨てるほどいた」


 なるほど、わかった。

 彼がどういう立場で、またどういう理由で出産を介助しているのかはわからない。だが、今はとにかく、彼女と子供を救うことしか考えていない。


「多少、陣痛が弱いだけだ。最悪の場合には、薬もある……さ、いきんで」


 押し寄せる陣痛に、彼女は眉根を寄せる。口から苦しげな呻き声が漏れる。へし折らんばかりの握力で、木の棒を握り締める。

 だが、やはり駄目だったらしい。


「……いつからですか」


 今度は小声で尋ねる。

 うるさいかもしれないが、俺も力になれる可能性がある。アイドゥスは俺を手招きして、物陰に引っ張りこんだ。


「一昨日の深夜からだと聞いている」


 ならば二日近くにもなる。明らかに長引いてしまっている。

 出産が長引くと、母子ともども衰弱が進む。このままでは危険だ。


「薬があると」

「あるが、子宮口が十分に開いていない。強すぎる痛みがきたら、それはそれで負担になる」


 思うに、それは陣痛促進剤のようなものか。

 とはいえ、弱りきった患者にやすやすと投与できるものでもない。


「彼女は荷物に紛れてこっそり運び込まれた。その時点で衰弱している」

「他には何かないんですか。その……治癒魔術とか」


 俺がそれについて口にすると、彼は驚いたように目を見開いた。それでもすぐ気持ちを落ち着けて、静かに、しかし早口に言った。


「産後の処置には有効だが、産むまではむしろ逆効果だ。傷を塞いでしまうのだから」

「産んでしまえば、あとはなんとかできますか」

「もちろんだ」

「では何があれば」

「強いて言えば、一時的にでも母体の体力を……それと、薬が強く出すぎた場合に、うまく痛みを抑えることができれば」


 なら、俺は役に立てる。


「できます」

「なに」

「これでも、『活力』の術と、『苦痛軽減』を行使できます」

「本当か」

「はい」


 言ってしまっていいのか? 問題ない。彼は俺の秘密を漏らさない。

 なぜなら……


「頼む。まず『活力』を」


 思いがけない支援に、彼は勢いを取り戻した。身を翻して部屋に戻ると、胸元から緑色のガラス瓶を取り出した。


「薬を使う。そう、これを飲んで……大丈夫、もうすぐ終わる」


 陣痛がひどくなる薬なのだ。彼女は恐る恐る口にする。だが、この際、やれることをやるしかない。

 俺は横で、静かに呪文を詠唱する。


「ウッ、アアア!」


 激しい痛みに彼女は身を仰け反らせる。


「きたか! ……君、詠唱は」

「終わりました。『苦痛軽減』は」

「まだいい」


 そうして彼は、前のめりになった。


「よし、いいぞ! もうちょっとだ!」


 濡れた髪の毛が見える。あれは赤ん坊の頭の部分だ。

 ズルン、と頭が出た。


「お湯! タオル!」


 それで彼はやさしく赤ん坊の汚れを拭っていく。ストローのような器具で、鼻や喉に詰まった羊水を取り除く。と、途端に赤ん坊が大声で泣き叫びだした。


「はっ、はははっ、やった! じゃ、君!」

「はい!」

「早速だが『苦痛軽減』を。産後も妊婦は痛い思いをするんだ。それに、少し裂けているから縫わないと」

「わかりました」


 と答えているが、ちょっとグロい。出血も結構あるし。

 戦場で死体を見るのとはまた違った気持ち悪さがある。といったら失礼か。でも、見て楽しいものでもない。


 アイドゥスは手際よく臍の緒を切り、産湯をつかった赤ん坊は、柔らかな産着に包まれて、母親のすぐ横に置かれた。

 それから声色低く、詠唱を始める。負傷からの回復を促進するためだろう。感染症の予防も必要だ。医薬品にも頼るが、魔術も大きな役割を担っている。


「もう大丈夫だろう。あとは」

「はい、ありがとうございました」


 親族らしき女の一人が頭を下げる。アイドゥスはさっさと背を見せると、部屋から出て行く。俺も一緒に外に出た。


 彼は裏通りから出ると、町の広場に向かってまっすぐ歩いた。俺がついてくるのも承知といった様子で。

 それにしても、さっきまで蒸気と人の吐息でいっぱいだった空間にいたので、冷たく乾燥した夜の空気が、やけに気持ちよく感じる。あとは、人を死なさずに済んだという安堵の思いもあるのだろう。

 と、そこでアイドゥスは振り返った。


「さ、この辺でいいだろう」

「はい?」

「覚悟はできていた。どこにでも連れて行くがいい」


 言っていることの意味ならわかる。

 彼のやったことは、この国では「違法行為」だ。それも重大な犯罪になる。


 出産を助けるためとはいえ、婚姻関係にもない女性の体に触れる。それも一番性的な部分に。まず、この点からしてまずい。

 基本的にセリパス教の聖職者は、基本的に全員が医師でもある。異性に触れてはいけないので、男女別に医者が必要なのだ。


 また、特に女医としての女司祭は、いないでは済まされない。出産に関わるからだ。産婆が仕事を引き受ける場合でも、必ず女司祭が立ち会うことになっている。生まれた子供は男か女か。きちんとその場で見届けなければいけない。男児であれば、本来は女司祭も産婆も触れるべきではないのだが、やむを得ない例外ということで、後で清めの儀式が必要となる。

 こういう必要のため、聖職者を複数置けない教会には、しばしば女司祭を一人だけ派遣する。ピュリスの教会にリンが送り込まれたのも、そういう事情ゆえだ。

 聖職者が国を治めるここでは、更に重要な役目もある。住民としての登録も、女司祭の報告によっているのだ。この国では、人間なら誰でも、誕生の瞬間から監視されている。


 だが、今回の妊婦は「こっそり運び込まれた」らしい。ということは、彼女の妊娠は秘密にされなければならない性質のものだった。あまり若くはなかったので、未亡人か何かだったのだろう。夫がいれば、実際の父親が誰であれ、夫の子供として堂々と産めただろうからだ。してみると、彼女は貧しい未亡人で、隠れ娼婦としての働きによって収入を得ていた。だが、意図しない妊娠によって追い詰められていた。

 そういう娼婦を守るために、医療行為を行ったのだ。当局に通報するでもなく。こんなの、発覚すれば、死罪すらあり得る。


 だから、こんな変な格好をしているのだ。この紺色の衣装は芸人のそれだ。本当は闇医者なのだが、その素性を隠すために、それと偽装しているのだ。


「何を言っているのかわかりませんが、僕には関係ないことです」

「ははは……ごまかさなくていい」

「ごまかしてなんか」

「では、なぜ私が治癒魔術を使えることを知っていた? 私の正体を知らないのなら」


 それはピアシング・ハンドのおかげだが、それこそ口には出せない。


「なんとなくそうじゃないかと思っただけです。医者みたいですし」


 これも苦しい言い訳だ。

 治癒魔術の使い手は、他と比べても希少だ。宗教組織の一部に伝わっているケース以外には、あまり見かけない。そもそも、諸国戦争の際に、習得者が一掃されたという経緯もある。


「それだけじゃない。君も、どうしてその若さで魔術を駆使できる?」

「貴族の下僕で、今は修行中の騎士だからです」

「ふうん」


 それで納得したのか、彼はふっと息をついた。


「ともあれ、今日はまだ、死ぬ日ではないということか」

「それは知りませんが、僕は何もしません」

「何もしない? いいや」


 彼の口元には、穏やかな笑みが浮かんでいた。


「しているとも。今、母親と赤ん坊の命を救ったろう?」

「それをしたのはあなたです」

「君もだ。共犯だよ」


 確かに。

 なんてことだ。結局トラブルに巻き込まれている。


「ははは、そんな顔をしないでくれ」


 そう言うと、彼はマントの留め具に手をかけた。

 円形で金色のそれは、表面に細かな紋様が刻まれていた。中央に小さな緑色の宝石が嵌っている。これは翡翠か。


「これを」

「えっ」

「口止め料だよ。それと、労働の対価だ」

「いりません」

「口止め料だと言ったろう? 渡さないわけにはいかないんだよ」


 そういって彼は留め具を押し付けた。


「あの」

「なにか」

「さっきの子供は、どうなるんですか」

「ああ、それかね」


 アイドゥスは周囲を見回してから、そっと小声で説明した。


「この国にも裏口がないでもないのだよ。だから、別の夫婦の正式な子供ということにする。それをあの未亡人が、養子にもらうという筋書きだ」

「手は打ってあると」

「赤ん坊だけ見殺しにするというのなら、はじめから手は貸さないとも」

「大胆ですね? 捕まったらどうするんですか」


 俺の質問に、彼は微笑を返した。


「心配要らない。私は明日にでもここを発つ」

「いつもこんな仕事を?」

「そうだな……そうだ」

「なぜですか」


 すると彼は、肩をすくめてみせた。


「理由なんかいるかね?」


 すっと身を翻すと、彼は片手をあげて言った。


「おやすみ!」


 そのまま、暗闇の中に消えていった。


 確かにいい時間だ。そろそろ部屋に戻って寝たほうがいい。

 そう思って自室に引き返した。左右の部屋からは、まだ嬌声が続いていた。毛布をかぶって丸まって寝てみたが、ついに一晩中、静寂に恵まれることはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る