猊下相手に、目と目で語り合う

 決して広いとはいえない広場。円形に組まれた石の床が、階段状に内側に向かってどんどん狭まっていく形で積み重ねられている。その外周には、一定間隔で石の柱が突き立てられており、天井を大きなドームが覆っている。


 ここがリヴォフラン教会。つまり、あのユミレノスト師が身を置く場所だ。正確にはその門前だが。

 セリパス教会にしては、なかなか解放的かつオシャレな空間だ。どちらかというとこういうのは、女神教の施設に多いデザインだったりする。もちろん、こんな構造になっているのには理由がある。


 一つには、ここは教会前の広場であって、教会そのものではないからだ。この円の北側に、建物への入口がある。分厚い木の扉に、金属板で作ったあの例の特徴的なマークが貼り付けられている。あの内側には他所のと同様、狭苦しい石の通路が複雑な経路で組み込まれているはずだ。それでも、一般信者向けのイベントの多くは、この円形の広場で済ませるのが普通らしい。

 もう一つには、これが後の時代に増築された部分だから、という点が挙げられる。セリパス教勢力は、ギシアン・チーレムの侵攻によって打撃を受けたが、後に彼の許しを得て、一応の復活を遂げた。一度は破壊されたこれらの施設も、ある程度の修復なら許されたし、場所によっては援助さえ与えられた。だからだろう、地味なことこの上ない建物に、派手な女神教っぽいファサードがくっつけられている。


 この教会の創建は、今から千三百年前のアルデン帝に遡る。そして、現在の形になったのが千年前。ただその間、修復や改築がなされなかったはずはないが。諸国戦争の影響をあまり受けなかったこの地域だからこそ、こんな古い建造物もいまだに生き残っている。


 今日も相変わらず空は晴れ渡っており、気温も高いのだが、さすがに石の壁の作った影の下。多少は涼しい。

 見れば、同じように階段の日陰部分に身を置く市民がちらほらいる。数人で固まって、なにやら楽しそうに話をしているのもいる。仕事はないのか、とも思うが、ここは現代日本ではない。やることがあれば動くし、なければ休む。下手をすると、あってもサボる。まぁ、この暑さでは、頑張る気にもなれまい。


 もう少しで、午前中の祈りと学習の時間が終わる。

 サドカットが迎えにきたら、いよいよ師との対面だ。


 狭い西側の市街地の、どちらかといえば南側にあるこの教会。少し足を伸ばせば、あの神の壁も拝める。……そこまで思い至って、しまったと思った。先に神の壁に立ち寄って、祈りの一つでも捧げてくればよかったか。ただの思いつきだが、そのほうが心象がよかったかもしれない。

 祈ってきた、とか嘘をつく? だが、ここの土地柄についてはもう、いやというほど思い知っている。裏を取られたら一発でアウトだ。かといって、今から行っても間に合わない。いやいや、待て待て、衝動的に行動なんかしたって、さして意味などないだろう。

 構うものか。今の時点での最善を尽くすのみだ。


 扉が開いた。

 四角い顔に、ややふっくらした体。ふんわりした黒い僧衣に包まれているのが見える。俺はすっと立ち上がった。


「わざわざ済みません」

「お待たせしてしまいました」


 サドカットは、前回と変わらず穏やかな声色でそう言い、頭を下げた。聖職者特有の穏やかさといおうか。人の邪魔をしない静かさがある。


「済みませんが、師はお忙しい方。あまりお時間もありません。早速参りましょう」

「はい」


 これだけ大きな建物でも、窓は小さいし、ほとんどない。そして、扉を開けたら、まず壁だ。薄暗く狭い通路が左右にあるだけなのだ。


「こちらです」


 彼が壁に掛けられていたランタンを手に取る。はぐれないように、ついていかねばならない。


 何度階段を登り、また降りたのか。もう数え切れない。大人がすれ違うのも難しいほどの狭苦しさ。

 やがて、小さな木の扉の前で、俺達は足を止めた。


「どなたですか」


 ノックの音に、中から静かな声が返ってきた。流れる小川を思わせるその力みの抜けた口調に、俺はむしろ、自分の中の若干の緊張感を改めて意識した。

 相手は、かなりの高齢者で、俺の前世と今回の人生の合計よりも、長く生きている。しかも少年時代からずっと修行に明け暮れてきた人物だ。単純に人間力で押し負けるのではないか、というような予感があった。


「サドカットです。ファルス・リンガ様をお連れしました」

「お入りいただきなさい」


 俺の中の小さな戸惑いを気にかけもせず、サドカットは構わず扉を押した。


 この建物の中としては、割合明るい空間だった。天井が高く、そこに小さな四角い窓があり、淡い光が差し込んでくる。ただ、低い位置に窓はない。そこから判断して、ここは地下なのだろうと見当がつく。

 壁際には古びた本棚がいくつも並べられており、そこに書物が詰まれている。中には相当古く、また貴重なものも含まれているに違いない。というのも、巻物の状態のものが少なからず見られたからだ。いわゆる「本」、ページ単位で区切られたものが出回るのは、ギシアン・チーレムの時代以降だ。それ以前には、帝国の広い範囲で、こうした巻物型の書物が用いられていたという。ただ、聖女の時代から伝わる書物の中にも、ページで区切られたものがあったそうなので、その辺は技術の有無というより、好みの問題だったのだろう。

 そんな中、部屋の中に二つ置かれた椅子の片方に、枯れ木のような老人が座っていた。髪の毛は既になく、全身の皮膚に皺が寄っていて、ところどころしみになっている。それに、随分とやせ細ってもいる。そんな体に、ゆったりとしたというよりは、ぶかぶかの僧衣が絡み付いていた。それだというのに、彼の目はしっかりと開かれていて、その瞳には知性と……どこか澄み渡った泉のような落ち着きが感じられた。


「ようこそ、罪びとよ」


 左手の杖を支えに、彼は立ち上がろうと身を起こしかける。


「……いや、初めて会う友よ。御身が清らかでありますように」


 俺はこの挨拶に、一瞬、眉を寄せた。

 相手を「罪びと」と呼ぶのは、これはセリパス教における定型文だ。失礼でもなんでもない。だが、続く挨拶がおかしい。普通は、身の穢れを落とせとか、何か戒めの言葉が続くものなのに。


「猊下におかれましては、早速にご面会の機会をいただき、感謝に堪えません」


 考える時間などない。切り替えよう。

 恐らくユミレノストは、俺が聖職者ではないから、世俗の挨拶で済ませたのだ。しかし、どうも引っかかる。


 俺の返事に、彼は体を揺らして笑った。


「これはこれは。随分としっかりしていらっしゃる」

「恐れ入ります」

「ファルス様は驚くべきことに、ティンティナブリアより山脈の道を越えて、ここまでやってきたとのことです。それもたった一人で」


 サドカットは情報を補足しているが、そんなことはとっくに伝えてあるはずだ。

 これは話題作り? それとも、ユミレノストが忘れている可能性を意識して? 別にボケ老人でなくても、彼ほど高い地位にあれば、日々大勢の人と面会する。ローマ時代の名告げ奴隷でもないが、忘れかけた情報を思い出させるのも、立派に下の人間の仕事なのだ。

 しかし……やっぱり、引っかかる。


 俺は凡人だ。

 ピアシング・ハンドのおかげで、超人的な能力こそ得たものの、中身は凡庸そのもの、天才でも英雄でもない。だがその代わりに思考のツールがいくつかある。

 まず、前世の知識と、価値観だ。前者は、先人の考え出した手法を後追いすることで、それに近い結果を導き出せる。後者はというと、何者にも超越的な価値を認めない、権威を盲信しないという態度だ。例えばこの場合、相手にしているのは修業を積んだ高僧だが、俺は彼の背中に後光を幻視したりなんかしない。


 そして最後に……この世界にやってきてから、習得したものもある。一流の人物との出会いがそれを与えてくれた。ミルーク、イフロース、フリュミー、グルービー、キースやアネロス、そしてタンディラール。彼らの目は、常に何かを見出していた。目的も経験も教育の水準もそれぞれに異なる彼らだが、何れも強い意志を抱き、行動にあたっては果断だった。

 俺は、そんな彼らから、見て学んだ。優れた人物は、意味のないことをしない。そして時間を無駄にもしない。もう充分成長したから、裕福になったから、強くなったから、もうここでいいや……と腰を下ろしたりはしないのだ。使い切れないほどの金があろうとも、彼らはなお、仕事を見つけて働き続ける。そして、いつでもどこでも、そこが自分にとっての戦場たり得ることを熟知している。


 ならば目の前のユミレノストは?

 俺は直感した。彼の目にはある種の叡智が輝いている。……何か思惑がある、油断するな!


「それは素晴らしい。サドカット、この方は、エスタ=フォレスティア王国からいらしたとか」

「はい、左様です」

「それならば……ファルス様、まずはお礼を申し上げたく」

「お礼、ですか?」

「その騎士の腕輪を身に授かってより、まず最初にこのアルディニア王国を学びの地として選んでいただいたこと……私ども当地の聖徒にとっても、光栄この上ありません」


 皺だらけの顔だが、その表情は。一見、人を蕩かすような優しげな笑み。春先の日向のように心地よい。だからこそ、気持ちを引き締めなくてはならない。

 俺の意識の中の「人を見る目」は、彼が陽炎のように揺らめいている様を捉えている。俺というピンポン玉を掌中にして、どうやって遊ぼうか、決めかねているのだ。


「これ、サドカットよ」

「は」

「ファルス様は、この地において、どのような智慧をお望みだったかな」

「聖女の奇跡について知りたいと」

「はて、それは具体的にはどのようなことか」

「聖女のいらした祠に詣でて、正義の女神の意志に触れたいとのことでございました」

「ふむう」


 ユミレノストは笑みを消し、顎に手を当てて首を捻った。


「ファルス様」

「はい」

「聖女の祠で、何をなさりたいのですか」

「はっ……聖女の復活と不死の奇跡を確かめたいものと」

「それは奇妙なことをおっしゃいますね」

「えっ」


 ユミレノストは、傷口に沁み込む薬のような、柔和で恐ろしい笑みを浮かべて言った。


「聖女の復活も、その不死も。それは『既知の事実』ではありませんか」


 背中から焼け付く汗が噴き出した。


 しまった! しまった! やられた!

 彼の笑顔の意味。一点減点。


 聖女の不死を確認する? それをしていいのは、リンみたいな聖女派、或いは聖典派の司祭達だけだろう。なぜなら彼らは『聖女は死んで、廟堂に納められた』と考えているからだ。つまり、神壁派の主張に反対しているから。

 そうでない人達は……つまり、そもそも神壁派の信仰を抱いている人であれば、聖女が復活し、降臨したのはただの『事実』でしかなく、ゆえにいちいち『確認』するべきことでもない。もし確認を要するというのであれば、それはむしろ、信仰の喪失、欠落といっていい。

 そんな信仰心のない人間が、神壁派第一の聖地である祠に入りたいと?


「そ、そ……」


 待て。

 慌てたまま、口を開くな。


「失礼致しました。若輩者ゆえ、物の道理を弁えず」

「いえいえ、そのようなことは」


 うっかり「そうでした」なんて言ったら。

 俺は神壁派の信仰を抱いてはいるが、それを疑ってもいる、という意味になる。


「ただ、お許しいただきたいのです」


 忙しく頭を回転させながら、俺は一つ一つ、言葉を選んで語る。


「なるほど、この世界は女神の手により創造されたものであり、その意味では、石ころ一つとっても偉大な奇跡に違いありません。けれども、だからといって日々の暮らしの中にその偉大さ、宇宙の真理を見出せというのは……猊下のように、真理に近付かれた方であればともかく、私ども凡俗の者どもには、なかなか難しいことでございます」

「ほう」

「人が皆、おのずと真理を弁えるのであれば、聖典も僧侶も教会も必要ありません。人々はこうして奇跡に触れ、世界のありようを確かめることで、ようやく信仰を自覚できるのです」

「それも道理ですね」


 よし、なんとか説明が繋がった。

 女神の偉大さを否定などはしていない。疑ってもいない。ただ、俺が愚かであるがゆえに、聖典の言葉だけでは聖女の復活を語られても実感できないのだ、と。


「聖女の祠を見たいというのも、そういうことでした。偉大な時代の貴重な遺物から、尊い事跡に至らんとする望みです」

「なるほど、なるほど」


 だが、ユミレノストの視線には、まだ油断ならないものが潜んでいる。


「ところでファルス様、街の南にある、神の壁はもうご覧になられましたか」

「それはもう」

「壁にはもう、挑まれたのでしょうね」


 また痛いところを。

 聖女の奇跡を実感したいというのなら、まずあの白い壁にこそ注目すべきなのだ。あそこなら誰でも立ち入りが許されているし、ツルハシで叩くのも、手で触れるのも自由だ。熱心な神壁派の信徒であれば、とっくにそれはしているはず。


 さっきから何を確認しようとしているのか。司教の真意がわかってきた。

 答えにくい質問の数々だが、彼とて俺に意地悪をしているのではない。この地の宗教指導者として、是が非でも守らなければならないものがある。


 だから、あとは俺が決断するだけだ。

 正直に言うか、それともなお、うまく切り抜けるか……


「いいえ」

「おや」

「はっきり申し上げます。僕には僕の知りたいことがあります。知りたいのは歴史であって、それ以外の何でもありません」


 決めた。

 搦め手は使わない。正面から行く。小細工を弄しても、俺では彼に勝てないからだ。


 ユミレノストが何より恐れているのは、他派閥の敵意だ。


 聖女が復活し、この地に降臨し、人々に神の壁の発掘を命じた。これがこの地の宗教の根幹となっている。その証拠のうち、半分は自由に公開している。神の壁は、破壊できないために、かつ破壊しても許されるがゆえに、安全だからだ。

 しかし、言ってみればこんなものは、ただの固い壁でしかない。この発掘作業を始めさせたのが聖女であるという証拠にはならないのだ。ということで、根拠を充分なものにするためには、その他の材料、つまり聖女の遺品や生活空間なども、閲覧可能にしておくべきだ。とはいえ、それらは普通の物品であり、洞窟だ。もし、悪意ある誰か……聖典派の息のかかった工作員が、そこに火を放ったら?

 まだそれならいいかもしれない。もっと怖いのは、何もかもを白日の元に曝した結果、別の事実が浮かび上がってくる場合だ。発掘作業を命じたのは、どう考えても聖女ではあり得なかった、なんて調査結果をぶちまける馬鹿がいたら、大変なことになる。

 では、聖女の降臨が事実であればいいのか? 話はそう単純ではない。世界中の学者が集まって遺物を検証し、確かにここには聖女がいました、彼女は復活しました、と太鼓判を押したら。聖典派の面子は丸潰れになり、それこそ戦争にまで至ってもおかしくない。

 更に言えば、こういう『調査結果』は、事実である必要すらない。誰かが大声で、聖女の真実はこうでした、と言いふらすだけでも、悪影響は生じ得る。


 だから、聖地に誰も入れないのだ。


「歴史、ですか」

「はい。あくまで僕が学びたいだけ。それ以上でもそれ以下でもありません」


 これは言外に『神壁派の信仰など抱いておりません』と述べているのと同じだ。

 信仰などない。これは本心だ。ただ、それとはっきり言い切ってしまうのは具合が悪い。そしてきっと、彼もそれを見抜いている。

 いや、もしかすると、既に俺の周辺の情報も仕入れているのかもしれない。この地に到着するまで、俺はかなり足止めされてきた。特に、シーラの側には二ヶ月ほども留まったのだ。その間に、情報を持った誰かが俺を追い抜いていてもおかしくはない。

 エスタ=フォレスティア王国の内紛で活躍した少年騎士。経歴から判断するに、到底、セリパス教徒ではあり得ない。ならば、彼は俺がどこまで正直に話すかも、確認しようとしている。


「ふふふ」


 司教は静かに笑った。

 その意味は、俺にもわかった。どうにか合格。


 彼は懐から手紙を取り出した。俺がサドカットに托した紹介状だ。


「何年も前に、聖女派の学生がやってきた時には、なんとしたものかと思ったものですが……」


 リンにも、本当のところ、深い信仰心などなかったと思う。そして、だからこそユミレノストは、彼女に調査を許可した。だが、許したのはそこまでだった。

 そして、俺の認識が正しいかどうかを、遠まわしに確認する。


「彼女は、ちゃんと証明してくれました。この地に降り立った聖女は、確かに本物であると」

「それは素晴らしいことですが、だとすると一つだけ、彼女は大事な仕事を怠けたようですね。せっかくだから、本にでも書いて、世界中に伝えたらよかったのに」


 俺と司教は目を見合わせる。

 彼の顔には力みのない微笑みが、俺の顔には引き攣った笑みが、それぞれ浮かんでいる。


 リンが調査結果を発表しなかったのは、もちろん彼女自身の保身のためでもある。聖典派、神壁派にとっては、長年の論争に決着がつく代物なのだ。神聖教国でまだまだ留学を続ける彼女からすれば、こんな爆弾発言、できるはずもない。

 だが、神壁派はといえば、やはりこんな調査結果など、ぶちまけて欲しくなかったのだ。或いは独立派の司祭達であれば話も違ったかもしれないが。何しろ、アルディニア王国は小国なのだ。


 ちゃんとわかってますよ。

 よくできました。

 俺と司教は、目だけでやり取りする。


「ふうむ」


 杖を脇に持ち直す。石の床がカツッと乾いた音をたてる。


「彼女は聖職者でしたからね。後に続く人にも、自らの努力で聖女の真実に至って欲しいと願って、あえて事実を広めようとは思わなかったのでしょう」

「で、では」


 やった! と跳びあがりそうになった。

 後に続く人、つまり俺もまた、自分で聖女のことを調べるべきだ、と。これは、祠への立ち入り許可にも前向きですよ、という意思表示だ。


「ただ、ファルス様、今は時期がよろしくない」

「えっ」

「祭りの季節ということもあり、街中も騒がしく……聖地に間違いがあってはなりません。それに」


 はやる気持ちを抑えて、俺は改めて座り直す。

 大丈夫、これは拒否ではない。条件提示だ。


「失礼ながら、あなたはこの地では新参者です。それゆえに、信仰心を顕かにしなくては」

「それは、正式に……」

「いやいや」


 彼の目に、一瞬、『残念』という色が浮かんだ。

 すぐに思考が追いつく。危なかった。正式にセリパス教徒としての洗礼を受けます、なんて言い切らなくてよかった。それじゃあ本当の新参者だ。聖女の祠に入るのだから、もともとセリパス教徒であるのが大前提なのだ。

 そうではない形で、何か信仰心を見せ付ける行動が必要になる。彼はそう言っているのだ。


「そうですね……サドカット」

「はい」

「アイクに連絡を。彼にファルス様を任せます」

「承知致しました」


 改めて俺に向き直ると、ユミレノストは言った。


「少々お待ちいただくことになりますが、ご辛抱いただけますか?」


 その顔には、心なしか、悪戯めいた笑みが浮かんでいた。

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