臨時のお茶会は針の筵

 屋敷の前で馬車から降りる。そこで張り詰めた空気に気がついた。

 狭い玄関前の敷地に、真っ白な馬車が二台ほど。これは宮廷からの使者だ。ということは、タンディラールからの使いが来た?


 正面玄関が開く。周囲に視線を向けつつ、忍び足でイフロースが駆け寄ってくる。


「来い」


 声を潜めて、彼はそう言う。何があったのか。


「時間がない。手短に訊きたい」

「はい」


 脇の小部屋に連れ込まれた。薄暗い、埃っぽい物置だ。


「デルムからの情報の要点は」

「出会えませんでした。死んだ、いえ、殺されたらしいです」


 一瞬、沈黙したが、すぐに頭を切り替えたらしい。


「では、今まで何をしていた」

「傭兵のキース・マイアスに見つかりました。彼が言うには、危険人物が王都に入ってきているとのことで」

「近衛兵団……ウェルモルドには、どこまで見られた」

「わかりません。僕を付け狙っていたみたいです。済みません」


 腕組みをし、溜息一つ。


「具合が悪いことにな」


 忌々しげにイフロースが言う。


「今朝、殿下からの使者がいらっしゃったところに、ちょうど近衛兵団の者がやってきてしまった。それで使者の方は、お前を通じて閣下が長子派と繋がっているのではないかと疑って、居座ってしまっているのだ」


 つまり、ウェルモルド……長子派が、目立たない形で子爵と頻繁に連絡を取り合っているように見える場面が、太子の下僕達の目前で展開されてしまったわけだ。


 なんとも間の悪い。

 サフィスにとっては、一番いやな状況だろう。また「フェイのせい」だと言われるのか。しかし、今回は俺も用心が足りなかった。機会があれば、隠密系のスキルを奪っておくべきかもしれない。ただ、使おうにも枠がないが。


「報告はあとで詳しく聞く。それより急だが、今から王宮に顔を出さねばならん。行きがかり上、お前を連れていかないというのは通るまい。急いで支度せよ」


 それもそうか。サフィスの「裏切り」を疑っての召喚命令なら、「連絡役」の尋問も欠かせない。

 まさかこうなることを狙って……いや、さすがにそれは考えすぎか。いくらウェルモルドが策略家だとしても、そこまで狙い澄ましてやれるものじゃない。もし可能とすれば、宮廷内部、それもタンディラールのすぐ傍に情報源となる人物を置いておく必要があるわけで……現実的ではない。


 多少は雲があるものの、比較的明るい空の下、白い馬車が駆け抜ける。大きな王宮の正門を潜り、右に曲がって庭園の中を走る。

 ほどなくして、古びていながらもそれなりの品格を感じさせる白い館の前で降ろされた。


「やぁ、サフィス」

「殿下! わざわざこのようなところにまで」


 いつかのように、鮮やかな緑色の衣服に身を包んだ彼が、なんと門前に立っていた。これは異常なことだ。


 普通、貴族同士の面会となれば、まず賓客を庭園の中に誘い、季節の草木を愛でつつ散策させ、しかる後に奥の間の主人の元へ案内するものだ。それが今回、そうした手続きの一切が省略された。

 もっとも多忙な王子のこと、非公式の面会でもあるので、余計な前半部分はカットしてもおかしくない。それより何より、本人がこんなところまで出てきていること、これが普通でない。

 余裕いっぱいに見えるタンディラールだが、実のところは時間もなく、急いでいるのかもしれない。


「悪かったな。今はたてこんでいるので、なかなか暇がない。本当は君とゆっくりワインを飲みたいところなのだが」

「そんな! 殿下の今のご心痛、いかばかりかと」


 俺は忘れかけていたが、一応は死にかけの父親を抱えた男だった。心配です、気にかけています、という言葉が出てくるのも当然か。

 もっとも、こいつらの頭の中には、その後の権力のことしかないんだろうが。


「ま、とりあえず中に入ってくれ」


 さっさと背を向けて、彼は館の中へと踏み込んでいく。作法や順序もあったものではなく、俺達は慌しく後に続いた。


「ピュリスでの暮らしはどうだ、サフィス」

「王都とは比べものになりません」


 広い部屋に、馬の蹄のような形になるよう、大きなソファが並べられている。過剰な装飾のカバーに、これまた刺繍されまくったクッションが無数に置かれている。丈の低いテーブルは古びているが、きっと相当な値打ち物だろう。少なくとも、歴史的価値ならあるはずだ。そこに上品なティーカップと小さなケーキが乗っかっている。

 だが、状況はやはり異様なままだった。なぜなら、そこに腰掛けているのは、王子やサフィスだけではない。エレイアラやリリアーナ、グラーブ王子やリシュニアといった、主人達より一段下の立場にある者達も、同じソファに座っている。しかも、末席には俺とイフロース、ナギアまで。

 さすがに下僕と呼ばれる俺達まで、客として扱われるのはおかしい。普通はサフィス達の後ろに控えているべきなのだから。あまりの奇妙さに、ナギアはもちろんだが、イフロースの顔にも緊張が見て取れる。


「だが、少しは住みよくなったんじゃないか?」


 軽い笑いと共に、タンディラールはサフィスの「実績」を褒め称えた。


「被害を蒙った市街地の再建計画。なかなか面白いことをやっているようじゃないか」

「恐れ入ります」

「あんな計画、見たことないぞ。陛下の摂政を務めるようになってから、過去の様々な工事計画にも目を通してきたが、それらと比べても随分と独創的だ。サフィス、君にあの手の才能があるとはね」


 せっかくのお褒めの言葉なのに、当のサフィスはというと、突っ込まれたらしどろもどろになりそうな顔をしている。それもそうだ。自分で考えたわけじゃない。俺のアイディアにイフロースが肉付けし、それを総督府の担当者が調整した結果なのだから。

 とはいえ、一番認めて欲しい人に賞賛され、親しげに振舞ってもらえているのだ。恐縮しつつも喜悦の表情は隠せない。


「過分な御言葉です。ですが、不肖ながらこの身のすべては王国のために」

「であればよいのだがな」


 突如、ガラッと変わった空気に、サフィスの顔が硬直した。


「はっ?」

「よい話の次に、悪い話もせねばならん」

「といいますと」

「実は、こんな書面がある」


 その言葉と同時に、王子の背後から老執事が姿を現し、封筒を手渡した。中身を取り出し、見えるようにこちらに広げて突き出す。

 瞬間、喉の奥から、いろいろ漏れて出てきそうになった。


「エンバイオ薬品店の印章が押されているが、相違ないな? サフィス」

「は、はひっ?」

「とある薬品の購入証明書だ。ここにはコーナの実の濃縮液を輸入したとある」

「は、確かに」

「だが」


 タンディラールはジロリと俺を見た。


「毒薬だったらしいな」


 この場の視線のすべてが俺に集まる。

 シータが密輸したあの薬か? あの後、彼女は港湾警備隊に逮捕されたし、俺も総督府に自分の不始末についての報告をしにいった。ただ、例の物がどこに流出したかは、結局つかめないままだった。


 サフィスが、俺を焼き殺しそうな目で見ている。無理もない。

 弁明させて欲しいところだが、ここは殿下の御前だ。俺の身分でいきなり口を挟んでいいはずもない。


「恐れながら」


 代わりにイフロースが言葉を発した。


「本件につきましては、確かに私どもの不始末でございました。ですが、エンバイオ家は悪事を許しません。これにつきましては、ここに控えておりますファルス自身が届けを出しているはずでございます」

「確かにそうだな」


 そうだ。あれは俺にとっては事故であって、犯罪ではない。


「残念だが、薬はすりかえられていたらしい」


 タンディラールは、続きを説明するよう、身振りで示した。それを受けて、後ろに控える執事が口を開く。


「ピュリスでの届出を受けて、王都で調査が行われました。結果、発見されたのは書面の通り、コーナの実の濃縮液だったということです。ですが、関係者に対する尋問で、それが偽装工作であること、毒薬を買い取り、横流しした事実が確認されています。その毒薬が現在、どこにあるかは、判明しておりません」


 王后ミーダの時代以後の宮廷は、陰謀渦巻く魔窟となった。そこで一番多くの死者を生み出している道具は、毒だ。

 平均をとったわけではないが、一般に宮廷内で生きる人々の寿命は短い。例えば、タンディラールの兄の一人、つまり第二王子だが、十代前半の若さで夭折している。目の前に座っているリシュニア王女の母親も、とっくの昔に死んでいる。二十代半ばで病死したとされているが、本当の原因がどこにあるかは、知りようがない。


「こういう件は、まったくもって好ましくないからな、サフィス」

「言葉もありません」

「残念極まりないよ。君は王国を支える貴族であり、私の個人的な友人だったはずだ、それが」

「殿下、私は以前も今も、これからも、殿下のお許しがある限り……」

「だがそれなら、なぜ今になって怪しげな人物と会合を持つのかな、サフィス」


 やっと本題。先日のウェルモルドとの会食のことか。

 だが、これについてもやましいところはない。サフィス自身からの報告が、ラショビエ経由で届いているはずだ。


「それについては既にご報告申し上げたはずですが」

「勝手に押しかけてくる客でも、無下にはできまいな。それはいいとして、ではなぜ、こっそり連絡を取るような真似を?」

「わっ、私はそのような」


 俯いたまま動けないサフィスの頭越しに、タンディラールはイフロースに視線を向けた。

 そういうことか。


 タンディラールも馬鹿ではない。サフィス自身が本当に太子派を裏切るだなんて、これっぽっちも考えていない。

 だが、イフロースは別だ。彼は王家に対して、畏敬の念など抱いていない。一方で、エンバイオ家を守るためなら、なんでもする人物だ。

 要するに、家中を切り回す執事が、主家の存続のために、勝手に他所と手を結ぶ可能性だってある。長子派が勝てばそちらに寝返り、太子派が勝ったら自らトカゲの尻尾となる。そして、俺がその手駒として動いた可能性を想定しているのだ。

 だから、牽制している。王家と距離を保つにせよ、やり方は考えろと。表向きの権力で、エンバイオ家など吹き飛んでしまうのだと、そう言っている。


「ふっ」


 タンディラールが破顔する。


「ハハハ、サフィス、そんなに驚くな」

「は?」

「私が今更お前を疑うと思うのか。心外だな、そんなにも信用がないのか? 私は」

「め、滅相も」


 はて。


 これで終わり、か?

 揺さぶりをかけたかっただけ?

 警告をするためだけに、貴重な時間を使って、こんな会合を?


「どうだ、サフィス、あの男は」

「はっ……見た限りでは、まったく恭謙そのものの態度でして……ただ、殿下との距離を縮められないのが泣き所といったところで」

「そうかそうか。だが、あれはああ見えてなかなか油断ならん男でな」


 紅茶を一口含んでから、彼は続けた。


「まあ、明日には戴冠式だ。それですべてが終わる」

「おっしゃる通りです」

「王国を支える貴族の一員として、お前も改めて陛下に忠誠の意を示さねばな」

「無論でございます」


 ここでいう陛下とは、現在病床にあるセニリタートのことだ。

 しかし、どうしてわざわざそんなことを今、強調するのだろう?


「ただ、な」


 顔を伏せ、タンディラールは言いにくそうにする。


「実はかなりのところ、思わしくないのだ」

「聞き及んでおります」

「いや、ここだけの話、もう……はっきり言ってしまおう。立ち上がることさえできないほどなのだ」

「なんと」

「立てるなんてものじゃない。少し起き上がって、座っているだけでも難しいだろうな。声すらろくに出ないのだ」

「そんな! では、こうしているうちにも……」

「ああ、何かあれば、すぐ連絡はくるとも」


 もはや瀕死の病人、か。

 さすがにこれはこれで好ましくない。確かに、死ねば自動的に太子が繰り上がるとはいえ、さすがに国王の死を弔いもせず戴冠式とはいくまい。つまり、短く見積もっても数日間、権力の空白ができてしまう。

 安全に権力の継承を済ませたいなら、どうでもとにかく、正式に譲位して欲しいところだろう。


「であればこそ、尚更陛下には寂しい思いをさせて欲しくはない」

「はい」

「くれぐれも礼を損なってはならん。陛下は王国そのものなのだからな」


 変な言い方だ。

 いったいなんだ? どうにも引っかかる。当たり前のことを、どうしてこうも繰り返す?


「その、陛下のご健康ですが」

「うん?」

「声も出ないほど、そんなにも……」

「ああ、侍医のモールが言うには、もう手の施しようもないとのことでな」

「名医と知られる彼にして、そうなのですか」

「そうはいっても、もういい歳だからな」


 足を崩して、背凭れに体を預けつつ、タンディラールは続けた。


「本人がもう、へばってしまっているよ。今は看護の大半は、補佐のドゥリアに任せてしまっている」

「それは……」

「まあ、仕方がないさ……それより」


 彼の視線が、こちらに向いた。


「サフィス、これは噂で聞いたのだが」

「はい」

「なんでもピュリス復興のために、金貨三万枚を供出した少年がいるというではないか」

「は……それは」


 俺の失態を追及した後、今度は俺への褒め言葉。忙しい奴だ。

 この男の本音はどこにある?


「どうした? ファルス君。遠慮はいらんぞ?」


 俺は目を見開く。タンディラールは俺に注目していた。


「そこに『座らせた』のは、そういう意味だ……置物として突っ立っていればいい立場ではない。その代わり、好きなことを喋っていい。なにしろ君は、この私の客なのだからな」


 この言葉に、周囲が息を呑んだのがわかった。

 奴隷上がりの、今はやっと庶民になったばかりの少年が、次期国王の『客』なのだ。


「……身に余る光栄です」


 やっと言葉を搾り出す。

 まさかいきなり話を振ってくるとは。いくら「遠慮はいらない」と言われても、相手は王子様だ。迂闊な言動は命取りになる。


「サフィス、王国の未来を支えるのは、若者だ」

「はい」

「お前の目から見て、このファルス少年はどうだ? 有望そうか?」


 複雑な感情がサフィスの内面を駆け巡る。戸惑い、焦り、そして殿下から注目された俺に対する妬み……


「先はありそうですが、まだ鍛錬が必要かと」

「ほほう、厳しいな」


 そこでタンディラールは視線を遠くに向けた。


「ベルノスト」

「ははっ」

「あれから腕はあげたか」

「日々、修練を欠かしてはおりません」

「ならばどうだ。次はファルスに勝てそうか」


 一瞬、彼の口元が歪む。

 彼は頭のいい少年だ。知っているのは一年半前の俺だが、今の彼自身がまだ、当時の俺ほどの技量に至っていないと自覚できている。


「ご命令とあれば、誰が相手であろうと、死力を尽くすのみでございます」

「ああ、いい。また今度にしよう。今日はそんなにゆっくりできないからな」


 とはいえ、プライドが傷つかないわけではない。

 唇をきつく引き結んで、彼は俯いてしまう。


「話は聞き及んでいる」


 座り直して、タンディラールは俺を見据えた。


「ピュリスの軍港が海賊に占拠された際に、戦ったそうだな」

「働きといえるほどのものは何もございません」

「謙遜するな。頭目を降したのも君だとか」

「バルド軍団長が討ち取りました。私は隣にいただけです」

「そういうことになっているらしいがな」


 彼は鼻で笑った。


「サフィス」

「は、はっ」

「お前は彼に、どんな恩賞を与えた?」

「おっ……?」


 何も与えていない。

 タロンを打ち負かし、ウィーの手から守るために駆けつけ、怪我人だらけの官邸を救うためにリン達を連れてきた。だが、恩賞はおろか、褒め言葉の一つも受け取ってはいない。もらったのはせいぜい、小言と恨み言だけだ。

 まぁ、褒美など欲しいとも思っていないが……


 イフロースが苦い顔をしている。

 手遅れだ。そう気付いてしまったからだ。


 しょうがない。サフィスのためではなく、イフロースのために、一応、言い訳してやろう。


「殿下、畏れながら」

「なんだ」

「閣下は王国を守る使命を担っております。その下僕たる私は日々、閣下の庇護をいただいて暮らしているのでございます。してみれば、近くは主君の恩義に報いるため、遠くは王国を守るため、身を投げ出すのも当然のこと。いちいち恩賞を求めて騒ぎ立てるなど、品がないにもほどがあります。ゆえに閣下は私の矜持を慮って、あえて何もおっしゃらずに済ませたのです」


 自分で言っておいて、軽く引いた。

 どれだけきれいごとなんだろう、と。


「このように言葉にしてしまっては、まったく野暮ではございますが」

「ふっ、ふははは」


 タンディラールは、俺の回答に噴き出した。


「おい、サフィス」

「はっ」

「これは、どうやら私にお鉢が回ってきてしまったぞ」


 俺の言い訳も、王子には通じなかったらしい。


「ピュリスは王家の領地だ。それを守るために総督の下僕が死力を尽くした。だが、下僕は日頃の恩義ゆえに、ことさら褒美を受け取ろうとしない。その誇りを知って、総督もあえて何もしない……では、私はどうなる?」


 面白そうに、彼はそう言う。


「それでは、王家ばかりが借りを返せずにいることになるな?」

「殿下、閣下は既に、王家の恩寵に与っているのでございます」

「それでも、一大事があれば、改めて褒賞をとらすものだ。それが常識というものだ。なのに物惜しみしては、王家の恥となろう」

「ならば殿下、その功績に対して恩賞を受け取るべきは閣下でございます」

「ふうむ」


 タンディラールは腕を組んで、ふんぞり返った。

 冗談じゃない。こんな狡猾な男の持ち物なんかにされたら。

 さっきの海賊の件にしても、白々しい……


「失礼致します」


 突然、メイドがそっと駆け込んできて、一声。


「レセー子爵がお見えです」

「ああ、もうそんな時間か」


 残念そうに、王子は首を振った。


「通せ」


 メイドは一礼し、すぐさま引き下がる。

 ややあって、ガシャガシャと金属の擦れ合う音が聞こえてきた。


「殿下、お寛ぎのところ失礼致します」


 顔を出したのは、白髪の年老いた騎士だった。とはいえ、その顔立ちに刻まれた皺、そして表情は、騎士というには相応しくない。まさにこれこそ宮廷人、黒い目の奥に何が詰まっているのか、見当もつかない。


「ジャルク、少々早すぎたぞ」

「とんでもございません。殿下はこれからもっとお忙しくなられるのですからな」


 思い出した。

 こいつ、近衛兵団第五軍団の長だ。


 しかし、いくら近衛兵団が王宮の守護を任されているといっても。ここまで帯剣したまま踏み込んでくるなんて。


「サフィス、奥で少し話そう。ジャルクもこっちだ……ソルニオーネ」

「はい、あなた」


 夫人は別、というわけだ。しかもソルニオーネは、イフロース相手に軽く一礼した。主人同士の会話には加わらず、こちらで夫人の世話をせよ、と暗に求めたのだ。これではサフィスの後ろに立つわけにはいかない。


 大人達がいそいそと席を立ち、残されたのは子供ばかりとなった。

 途端に場が気まずい沈黙に支配された。

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