試験運用

 夜明けと共に、既に収容所内には、張り詰めた空気が満ちていた。

 朝食も、いつもより早い時間に供される。時間がないのだ。

 いつものことだが、市が立つ都市に行くには、朝早くに出発しないと間に合わない。城門の閉じられる夕暮れ時までに到着して、中で一泊。俺達は、ミルークやジュサの手をいったん離れて、市の担当職員の手に引き渡される予定となっている。

 その後も暇ではない。俺達はその日のうちに、担当者との面接を済ませる。中立の立場で奴隷市を運営する組織が、競りの参加者に書面で情報伝達をするためだ。当日はきれいな服を着て、お立ち台の上で突っ立っているだけだから、購入希望者にわかるのは外見だけ。きちんとした受け答えができるか、読み書きはできるか……そういう重要な情報は、運営側から朝一番に伝えられる。

 だから、時間を無駄にはできない。俺は大急ぎで朝食を済ませると、いちいちジュサの許可も取らずに、懲罰房を巡った。


 房の中で、モータスは力なくしゃがみこんでいた。それはそうだろう。本来の計画では、彼らはとっくに脱走しているはずだった。イリクがその怪力で、壁をぶち抜いて助けてくれるはずだったのだ。なのに、結局、オークション当日まで、何のアクションもなかった。


「モータスさん、朝ごはんですよ」


 声をかけても、身動きすらしない。まあ、彼の態度に興味などない。俺が彼に求めるものはただ一つ。長年、様々な犯罪現場で活躍したと思われる、その棒術の経験だけだ。


「置いておきますからね、早く食べないと、時間、なくなっちゃいますよ?」


 できればイリクから、ルイン語の能力を奪っておきたくもあったのだが、それは断念した。いきなり母国語が理解できなくなったら、さすがにイリクも異変に気付く。まだ明日、一日だけチャンスがあるのだから、今から大騒ぎされたくはない。


 次は入浴だ。なんといっても時間がない。昨日のうちに、荷物の整理は済ませておいたから、やることは少ないのだが。カラスの行水で済ませて、背負い袋を手にすると、俺は中庭に出た。

 あとちょっとでここを離れるのか。なんだか、現実感がない。


「やあ、ノール」


 後ろから、優しげな老人の声がした。


「先生ですか。お世話になりました」

「はっは……先生か。それを言ったら、ノールもここでは先生だったな」


 ここに来て、最初の頃には先生にもよくお世話になった。夜にはしばしば、あのリンガ村の惨劇を夢に見て、うなされた。そんな時、駆けつけてくれたのが彼だった。

 もっとも、収容所の生活に慣れてからは、あまり接点がなくなった。彼は、もっと手のかかる子供の相手に忙しかった。それにまた、七歳までに引き取り先がいなかった子供に、木工や裁縫などの技術を手解きする役目もあった。


「前回のオークションは残念なことになったが、今回は期待が持てそうだというのう。大丈夫、ノールには、いい引き取り手がつくじゃろう」

「ありがとうございます」


 ここへは三年半前に来たわけだが、あの頃と比べても、彼は更に老いた。ミルークが取り組んでいるような、子供を育てる奴隷商をするには、こういう人材が不可欠だ。あと何年、この仕事を続けられるのだろうか。


「寂しくなるがの……しっかり頑張るんじゃぞ」

「はい」


 彼は大きな手をそっと俺の頭に添え、優しく撫でた。

 そうして彼は去っていったが、次の相手が既に、待ち構えていた。


「あっ、ノール」


 タマリアだ。


「……行っちゃうんだね」


 そりゃそうだ。一応、俺はここの奴隷で、売り飛ばされる予定になっているのだから。そして、それは俺の意志ではどうにもならない。あくまでも建前でしかないが。


「売れれば、だけど」

「あっさり売れちゃう気がするよ」

「今回は、景気が持ち直したって話だから……もしかすると、一気に寂しくなるかも」


 事実を述べると、タマリアは一瞬、ひどく悲しそうな顔をした。

 こういう表情を目にしてしまうと、ミルークの表向きの冷酷さの必要性が、よくわかる。愛着がわけばわくほど、悲しみも深まる。それではみんな、前を向けない。人生は孤独だ。今、ここで寂しい思いをしても、十年後、二十年後には、たまに思い出すだけ。だが、それを知りながら、あえて彼はここで生きている。


「そっか……でも、みんな、いいところに買われていくんだもんね、いいことだよ」

「あの、タマリアは……?」


 訊きにくいが、彼女にもそろそろ、運命が迫ってきている。


「うん、私も、どうせ夏前にはここを出るんだ。引き取り先も決まってるみたいでさ」

「じゃあ、ガラッと世代交代だ」

「六年前からいたからね、私」


 収容所の中庭から見える、四角い青空を彼女は見上げた。


「生まれてきて、半分はここにいたんだなぁ」

「それを言ったら、僕もだけど」

「なんだか……なんて言ったらいいか、わかんないよ」


 不意に彼女は俺の手を取り、それを胸元でぎゅっと包み込んだ。


「特別な人と一緒に暮らしてた。そういう感じかな」

「って、六歳になったばっかりの子供にそういうのは早いと」

「そういうことじゃなくってさ」


 そう言うと、彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべ、俺の耳元に口を寄せた。


「……ノールってさ、実は、いつでもここから出られたでしょ?」

「えっ?」

「見ちゃったんだ」


 何を? 変身するところを、か?


「あっ、びっくりしてる! ……ふふ、あのね、服に花びらがついてたんだよ」


 言われて二、三秒、考えて、はっと行き当たった。ドナに花を届けるために、鳥になった。彼女の誕生日の、前日の夜だ。


「どうやってかは知らないけどね」

「あ、う、うん」

「腕輪も外れてたし」


 見られてた。そりゃそうか。腕輪だけなら、服の裾をよく見ないと気付かないかもしれないが、その前にまず、花びらを見られていては。注意を引いてしまったわけだ。いや、そもそもその前年にも花を贈っている。だからもし今回も花を贈る人がいたなら……と、彼女らが気をつけていたのかもしれない。

 案外、しっかりしてたつもりが、失敗だらけだったと気付かされる。


「……できたら、思い出してね」

「えっ?」


 俺が訊き返すと、彼女は少しむくれてみせた。


「私はドナちゃんじゃないけど! あと二年もしたら、客も取らなきゃいけなくなるけど! ね?」


 じゃ、軽口で返してやろう。


「じゃあ、あと十年して、お金も持ってたら、お店にお邪魔しますよ」

「こらぁ! そういうのじゃなくってね」

「顔くらいは見に行きますよ、そのうちに」

「ほんと!?」


 彼女は、ぱっと表情をほころばせた。そしてすぐに、また例の、冗談めいた声色で言い出した。


「ノールからはお金取らないから、待ってるね!」


 精一杯のジト目を向けてやる。こういうやり取りも、きっと最後だ。

 果たしてこの後、何十人、何百人と客を取り、一人きりでお金だけを支えに生きる彼女が、子供の頃の心なんて、覚えていられるものだろうか? 前世の俺にとって、過去には痛みと悲しみしかなかった。だから、その経験からすれば、彼女もきっと、俺のことをきれいに忘れるだろう。この笑顔は、きっと今だけのものだ。


 ふと、中庭の中央に視線を向けると、ジュサが馬車に荷物を詰め込んでいる。その脇に、コヴォルとディーが立っていた。

 コヴォルの様子がおかしい。ジュサに声をかけたいが、かけられないのだ。この半年近くもの間、彼は黙って体を鍛えてきた。その成果を見せたい。つまり、もう一度勝負を挑みたいのだろう。

 だが、ここで俺は思いついた。というより、重大な問題を意識したのだ。


 今の俺には、こんな能力が備わっている。


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 (自分自身) (7)


・アルティメットアビリティ

 ピアシング・ハンド

・マテリアル ヒューマン・フォーム

 (ランク7、男性、6歳・アクティブ)

・マテリアル バード・フォーム

 (ランク6、オス、8歳)

・スキル フォレス語  3レベル

・スキル 商取引    4レベル

・スキル 薬調合    4レベル

・スキル 身体操作魔術 5レベル

・スキル 棒術     4レベル


 空き(0)

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 身体操作魔術と棒術。それぞれ、中級者から、上級者に足をかけるくらいの段階には達している。だが、肝心の俺はといえば、まだ子供の体だ。

 ……能力すべてを行使した場合、俺はどこまでやれるんだろうか?


 これは確認できるなら、しておきたい。先日、イリクから奪い取った能力が機能するのは、多分、確実だ。それでも、俺はまだ、例の秘薬の効果を試してもいない。

 特に、この怪力の秘薬は、一度は体に通しておくべきだ。どれだけの恩恵があり、またどれだけの副作用があるか。数も限られているし、使うとなれば、きっとここぞという場面になる。最終兵器たるピアシング・ハンドに頼る前の、大事な切り札だ。


 目の前では、ディーが悪態をついている。


「コヴォルはお馬鹿なのです」

「なんでだよ!」

「この前も、コテンパンにやられたのです。またやっても、同じことになるだけなのです」

「そんなの、わかんねぇだろ!?」


 言い争う二人の間をすっと抜けて、俺は訓練場の武器置き場から、長い棒を抜き取った。


「あの……」


 俺が声をかけると、ジュサは手を止めた。少しびっくりしている。俺がこんな真似をしでかすとは、思わなかったんだろう。

 それはディーやコヴォルも同じで、目を白黒させている。


「……なんてこと! コヴォルのお馬鹿が、ノールにまで感染ったのです!」

「馬鹿野郎、これは馬鹿なんじゃねぇ! 男の夢なんだよ!」


 ちょっとした事件に、注目が集まり始めていた。いつの間にか、ウィストも顔を出して、こちらを興味いっぱいに見つめている。ドナもそうで、降って湧いた暴力沙汰にオロオロしていた。


「マジかよ、ノール。お前はもうちょっとおとなしい奴かと思ってたんだがな」

「まぁまぁ。これも思い出ですよ」


 しょうがない、とジュサは作業の手を止め、訓練場から木剣を取り出した。だが、彼が構えても、俺はそ知らぬ顔をした。


「おい、やるんじゃねぇのか?」

「盾がありません」


 ジュサの能力なら、把握している。


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 ジュサ・トリコロマ (42)


・マテリアル ヒューマン・フォーム

 (ランク4、男性、42歳)

・スキル フォレス語 6レベル

・スキル サハリア語 2レベル

・スキル 商取引 5レベル

・スキル 剣術  4レベル

・スキル 盾術  3レベル

・スキル 料理  2レベル

・スキル 裁縫  2レベル

・スキル 農業  4レベル


 空き(34)

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 彼がここ二、三年で上達したのは、悲しいことに、料理と裁縫だけだ。ここでの生活を思えば、無理もないが。

 ともあれ、片手剣だけでは、彼の本来の実力は発揮できまい。まあ、以前、魔獣にやられて左腕がダメになったらしいので、何れにせよ、思った通りの動きはできないのだろうが。

 俺にいわれて、ジュサは小型の盾を取り出し、革紐の一本を腕に通し、もう一方を左手で掴んで、しっかり構えた。


「よぉし。本気でやりたいっていうなら、かかってきてみろ」


 俺も、棒をまっすぐジュサに向ける。その構えを見て、ジュサの表情が変わった。

 さすが歴戦の冒険者。俺の力量をなんとなくとはいえ、察したらしい。


 俺は、すり足で近付いた。少しずつ間合いを詰めていく。俺は子供で手足が短いが、それでも、この両手で扱う棒のほうが、間合いは長い。だから、ジュサはどこかで動かなければならないはずだ。

 だが、彼はじっとしている。もう、打突が届く範囲だ。


 よし。

 意を決して、俺は全力で彼の顔に突きを繰り出した。だが、一撃目は避けられ、続いての攻撃は盾で流される。ただ防御するのではなく、横へと俺の力を逸らすのだ。体格差もあって、俺は姿勢を崩しかける。それを見逃す彼ではなかった。

 ぐっと盾に力を込めて、前に押してくる。子供相手に力技とは大人気ない、とは言うまい。使えるものはすべて使う。それが戦いというものだ。

 俺は一歩下がって体勢を整える。その間にも距離を詰めたジュサが、右手の剣を振りかぶり、叩きつけてくる。俺は間一髪で、後ろに飛びのいた。


 勝てない。

 リーチの差は、盾がカバーする。また、戦いにおける判断の素早さでも、遠く及ばない。おまけにこの体格差。


「どうだ? まだやるか?」


 ジュサがそう尋ねてくる。怪我をさせるわけにはいかないからだ。今ので力量差がわかったはずだ、と言わんばかりだ。

 だが、俺にはまだ、試さなければいけないことが残っている。


「もうちょっとだけ……お願いします」


 そう言いながら、俺は手を口元に押しやった。水もなしに、俺は怪力の秘薬を飲み込む。

 効果は……


 剣を構え直したジュサは、盾を前にして、また突っ込んできた。体格の違いは、短時間のうちには覆らない。よって一度使用した戦術でも、必ずまた通用する。普通ならこの判断は正しい。あくまでも、普通なら。

 俺は、これに打突で応えた。かわそうとした彼だが、予想外に鋭い一撃が、頭を軽くかすめた。それに驚いて、彼はいったん後ろに飛びのく。

 正解だ。今ので下がらなければ、続く一撃が顎に届いていた。


 ジュサの目が、いよいよ真剣になる。ようやく、俺をまともに戦う値打ちのある相手とみなしたらしい。

 体が軽い。手足にじわじわと力が漲ってくる。それに、やけに世界がクリアに見える。空気の流れや温度差、ものの色合い、動き、匂い。何もかもが鮮烈だ。

 いける。


 俺はふっと舞うようにして一歩を踏み出し、続いて右に左にと、大振りの打撃を繰り返した。型も何もない、ただの乱打だ。

 だが、この力押しに、ジュサは防戦一方となった。一撃を防ぐ木剣や盾から、凄まじい音が響く。

 当然の結果ではある。こちらのがリーチは長い。それが攻撃に次ぐ攻撃だ。先にこちらの体勢を崩したり、後の先をとったりして、こちらの間合いの内側に踏み込む必要のあるジュサとしては、こういう行動が一番困るはずだ。

 とはいえ、彼に戸惑いはない。こんな猛攻、いつまでも続けられるはずがない。今は集中力を維持して、一撃を浴びないこと。必ずどこかでスタミナ切れを起こす。その隙をついて、一気に反撃に出る。

 ……そんな風に考えているのだろう。だが、残念なことに、恐らくだが、俺のこのスタミナは、あと一時間、薬の効果が切れるまでは、ずっと続く。これだけ暴れ続けているのに、疲労感がまったくない。多分、この膠着状態を続ければ、先に疲れ果てるのはジュサのほうだ。


 しかし、そんな戦い方をするわけにはいかない。この勝負が終わらないと、出発できないのだ。だから、手早く決着をつける。


 俺は、あるところでピタッと攻撃をやめ、構えを直して一歩下がろうとしてみせた。

 これがジュサの待っていた状況だった。今こそ勝負を決めようと、彼は前に一歩踏み出した。

 その足が、変な方向にもつれた。


「がっ……!?」


 口の中でそっと呟いた行動阻害の呪文が、ジュサの動きを止めた。今だ。

 俺は前へと飛び出し、全力で棒を打ち下ろした。ジュサは咄嗟に盾を掲げる。だが、体勢は崩れたままだった。

 一際大きな音がしたかと思うと、木製の盾は弾け飛んでいた。古傷の残る左手で辛うじて掴んでいた革紐を、手放してしまったのだ。正しく攻撃を受け流せなかった結果だった。

 尻餅をついていたジュサに、俺は踊りかかる。もう一撃。ジュサは慌てて起き上がり、それを木剣で受ける。

 鈍い音がして、ジュサは後ろへと盛大に吹っ飛んだ。彼が手にしていた木剣は、見事に砕け散っていた。


 ずっと後ろで這いつくばるジュサが、やっとのことで起き上がると、手をあげた。


「ま、待った……! 負けだ、ノール、俺の……!」


 見れば、肩で息をしている。

 だが、さすがは元冒険者。さっき、勢いに乗って激しい攻撃を浴びせたのに、怪我はどこにもないようだ。それに、一撃を受けつつ、彼は後ろに跳び退った。これが実戦なら、なるほど、勝ち負けでは俺の勝ちになるのだろうが、ジュサはこれで、すぐさま逃走に移ったはずだ。


「ほほう」


 いつの間にか観戦にまわっていたミルークが、顎鬚をしごきながら、愉快そうに声を上げた。


「ますます化け物じみてきたな? ノール?」


 その隣に立つジルや、二人の守衛は、びっくりして青い顔をしていたが。


「それだけやれるとなると、私でも、近寄られたら危ないな。遠間から弓で射抜くなら、まだ勝ち目もあるだろうが」


 静まり返った中庭に、ミルークの足音だけが聞こえる。


「砂を払え、ジュサ」

「あ……はい」

「さて」


 俺に向き直ると、ミルークはもう一度、念を押すように言った。


「この馬車は、奴隷の競り市に向かうためのものだが……どうする? ノール、お前はこれに乗るのかな?」

「乗ります」

「よし!」


 彼は手を打って子供達の注意を引いた。


「そろそろ時間だ! みんな、馬車に乗るように!」


 それでまた、一気に中庭が騒然となった。


 子供の奴隷を運ぶ馬車は、ジュサが御者を引き受ける。今回は犯罪奴隷もいるので、ミルークとジルが、別の馬車に彼らを押し込めて、先に立つ。

 俺は、馬車の後部座席から、見送るタマリアや先生に手を振って、意気揚々と収容所を後にした。


 だが、元気はそこまでだった。

 草原にポツンと建つ収容所が視界から遠ざかり、海沿いの街道を馬車が走る中で、俺は急激な疲労感を味わうことになった。これはひどい。指一本動かしたくないほどの、体の重さだ。まるで病み上がりの体のような、いや、ある意味、もっとひどい感じだ。


「……なんだか、ノールがまたおかしい」


 ドナが心配そうに言う。


「ああ、うん、ちょっと、ね。さっき、はしゃぎすぎちゃったんだよ」


 なんとか笑顔を浮かべて、ドナを安心させる。


「お前、すげぇな」


 コヴォルがポツリとこぼす。


「う、運がよかっただけだよ、たまたま勝てたんだ」


 普通に考えて、六歳児があんなふうに、力押しで大人の戦士を打ち負かすなんて、あり得ない。すごい、ではなくて、不自然なのだが。

 それを察してか、ウィストは何も言わない。


「……ノールはお馬鹿じゃなくて……馬鹿げてるのです」


 ディーが呆れたように、締めくくった。


 馬車の後ろから、明るい朝の光が差してくる。収容所にはない、新鮮な野原の空気も。でも俺は、それらを味わう余裕もなく、疲れ果てて眠ってしまった。

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