07 兄は義妹に敵わない!?
酷いありさまだった。
部屋中に撒き散らされたゴミの山。悪臭が立ち込め、息をするのもやっとだ。
「っ!」
そんなゴミの山に、1人の女の子がうずくまっていた。痩せ細った体には所々傷があり、見ていて痛々しいものがあった。
俺はゴミの中をゆっくり歩きながら、女の子の近くに寄った。
「?」
女の子は体育座りをしてうつむいていたが、俺に気がついたのか顔を上げた。その目は虚だけど、俺のことをはっきり見ていた。
「……誰?」
「俺はキミのいとこのリツっていうんだ」
「リツ、さん?」
「ねぇ、京ちゃん。ここから出ようよ」
「でも……」
「大丈夫だよ、俺たちがそばにいるから。だから、ねっ」
俺は女の子に手を伸ばすと、安心させてあげられるように優しく微笑んだ。
「俺と一緒に、こんなとこから抜け出そう」
*
「ふがっ!?」
自分のイビキに驚いて、俺は机に伏せていた顔を慌てて起こした。
「(何か懐かしい夢を見ていた気がするが、気のせいか?)」
不思議に思いながら、俺はうーんっと腕を伸ばす。そしてイスから立ち上がり、チラリと時間を確認した。
時間を見ると朝の5時30分だった。どうやら早く起きすぎてしまったようだ。
「……顔でも洗いに行くか」
起きて何もすることがなかった俺は、そのまま1階へと降りていった。1階へと降りていくと、香ばしい匂いがしてくる。
くぅっと静かにお腹がなった。匂いにつられるまま、俺はそのまま台所へと向かう。
「ふんふんふーん♪」
台所には京がいて、トントンっとリズミカルに包丁で野菜を切りながら、鼻歌を歌っていた。
そして切り終わった野菜を鍋に入れ、煮立ったら味噌を溶いている。どうやら今日の朝ごはんは、和食みたいだ。
「あれ?」
「っ!」
「お、おにいちゃん!? もう起きたんですか!?」
京が振り向いた時、パチリと目が合った。京は驚いているのか、口をパクパクさせている。
「あぁ、早く目が覚めちゃってな」
「うっ」
「京?」
不思議に思って京の顔を見てみると、京はショボーンとした顔をしていた。
「うぅ、これじゃあ朝の日課ができないじゃないですかぁ」
床にしゃがみこみながら、指でのの字を書いている。
「(朝の日課って、俺を起こすこと……じゃないよな、多分。聞いちゃいけない気がする!)」
「はぁ、おにいちゃんの部屋に入りたかったです。クンクンしたかったです。ぐすん」
「(やっぱり!)」
「まぁ、入れなかったなら仕方ないです! その代わり別のことをやればいいんですからね!」
「別のこと?」
「それ!」
「わっ!?」
不思議に思っていると、京が勢いよく俺にしがみついてきた。その勢いで俺は床に倒れこんでしまう。
気がつけば俺は京に押し倒される形になり、京は俺を押し倒しながら満足そうに笑った。
「えへへっ、これでおにいちゃんの匂いをたっぷり嗅げます!」
「きょ、京?」
「ふんふん」
まるで犬が尻尾をブンブン振り回しているように、京は俺の首筋に顔を埋めてクンクンし始めた。
「はぁ〜、やっぱりおにいちゃんの匂いは落ち着きます」
「ちょっ! くすぐったいんだけど!?」
「うは〜〜っ」
離そうにも、まったく離れない京。あまりのくすぐったさに、プルプル震えてしまう。
「? おにいちゃん、どうしてプルプル震えてるんですか?」
「京に首筋をクンクン嗅がれているからだけど!?」
「そうなんですか? もしかして、おにいちゃんは首筋が弱いんですか?」
「ち、違うからな!?」
良いこと聞きました! みたいな顔をする京。手を口に当て、ニンマリと笑っている。
「これはいい情報を入手できました。いざという時におにいちゃんの首筋を攻撃しましょう」
「丸聞こえなんだけど……」
「ち、ちがくて、これはですね」
「(めっちゃ目が泳いでるんだけど!?)」
俺は良からぬことを考える京に、仕返しとして腕を頬へ伸ばした。そして、両手でむにゅっと柔らかな頬を掴む。
「お、おにいふぁん?」
「うりゃっ!」
「ひゃっ! いたいれす! ごめんなふぁい!」
少し強めにやったが、痛かったのか京はそうそうに降参した。
手を離すと京は「う〜」っと言いながら、自分の頬をさすった。
「おにいちゃん、痛かったですよ」
「京が良からぬことを考えているからだ」
「か、考えてませんって!」
「本当か?」
「は、はい」
互いに顔を見合わせる。
「ぷっ」
「あはは」
が、すぐにおかしくて笑ってしまった。2人して何やってるんだろうって。京もおかしかったのか「あはは」っと笑っている。
「(楽しいな)」
こういった何気ない日々が、俺は幸せだと思った。それに、今笑い合っている俺たちは兄妹らしく見えるだろう。
「(俺たち、"兄妹らしく"なれたんだな)」
なんて思っていたが、
「やっぱりわたしたち、恋人らしくみえますかね?」
やっぱり京は、俺とは違う意見のようだ。
「どう見ても、兄妹に見えると思うぞ?」
「そうでしょうか? 今は歳の差恋愛だってありますし」
「さすがに小学生と付き合ったら、俺白い目で見られるんだけど!?」
「つまり、大人になったらってことですね?」
「違うから!!」
相変わらずの京に、俺はツッコミを入れた。しかし、京には俺のツッコミが意味ないらしく。
「ふふ、おにいちゃんは恥ずかしがり屋さんですね。でも、大丈夫ですよ、おにいちゃん。わたしはおにいちゃんの側をずっと離れませんから! ずーっと一生一緒ですよ、おにいちゃん」
京はそれはもう、満面の笑みで笑っていた。
俺はそんな妹の笑みをみながら、決意した。
「(やっぱり何とかしないと!!)」
これからも、京との生活は苦労が絶えなそうだ。
おしまい。
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ここまで、読んでいただきありがとうございます!
みなさまからの☆や♡、フォローとても嬉しいです!(*´Д`*)
《小学生の義妹が、何故か俺を支配しようとしてくるんだけど!?》の本編はここで終了させていただきますが、不定期でSSを上げていこうと考えています。
本当に読んでいただき、ありがとうございます!! 大変嬉しいです!!
風松 丸。
小学生の義妹が、何故か俺を支配しようとしてくるんだけど!? 天春 丸。 @amaharu01
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