第8話 いつもと違う理由は?
いつもなら、早くて三十分。
だが、今回は
(なにかが、いつもと違う……?)
不審に思った
「お早いですね? あの……
いつも
険しく、そしてより悲しげなのだ。
「
「あぁ、任されたとも。じゃあ……よろしく頼むよ?」
二人だけにしかわからない会話をされ、
突然、バイブ音が響く。
「……急いだ方が良さそうですね?」
先を行く
いつもと違う二人の様子に戸惑いながら、
****
時刻は二十二時。
夜の静かな住宅街を抜けた河川敷に、一人の中年男が佇んでいた。
名前を、
オールバックに黒いスーツ。左手には金色の腕時計をしている
……今まで
だからこそ、今回の殺しは……自分の命を捨てたようなものだった。
――自分の組のボスを、殺したのだから。
(もう嫌なんだ! あの感覚を味わうのは!)
彼の言う感覚とは、殺しではない。
(
そう。彼は……殺しの仕事をして行く内に、皮肉にも霊感が強くなるという、ある意味覚醒をしてしまったのだ。
仕事をする度に、自身の背後に増える怨みの気配。
それが不快かつ恐怖であり……とうとう許容範囲を
逃れるために。
自分が壊れるのを畏れたために。
彼は初めて私情で。
自分の意志で。
殺しをしたのだ。
それは、裏であろうと社会に組み込まれて生きている以上、やってはいけない
元々、人を殺す事自体が、罪とされている世の中。
それでも、彼が生きる事を
そこから外れれば、裁かれて当然。
わかっていた。
わかっていて、殺した。
だが……。
(計算できねぇ人間は損だな……。まさか、ボスも含めて……とんでもねぇ怨みの気配に、さらされちまうなんてな……クソが!)
そう。
ボスを殺した事で、
(どうすりゃいい! どうすりゃ俺は……生きたままで、こいつらから逃れられるんだ!!)
必死に思考を巡らせていた時だった。
――今まで感じた事のない気配を察知したのは。
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