第56話 【精霊騎士】、縁日に行く。
俺たち3人が縁日にやってくると、会場は既にたくさんの人でにぎわっていた。
「へぇ、思ってた以上に盛大だな」
俺はいたく感心しながら、お
足下では歩くたびにカラン、コロンと下駄が耳に心地よい音をたてていた。
特殊な形状をしていたため最初は歩くのが難しかったものの、すぐにコツは掴んだ。
「ハルトのおったリーラシア帝国にも、大きな祭りはあったじゃろ? そんなに驚くものかのう?」
田舎者丸出しの俺を見て、右隣りを歩く幼女魔王さまが、「わたあめ」をはむはむ食べながら首をかしげる。
「もちろん祭りはあったんだけどさ。でもリーラシア帝国のお祭りは方向性っていうか、内容ががちょっと違ったんだよな」
「ハルト様、具体的にはどう違うんでしょうか?」
左隣を歩くミスティが興味深そうに尋ねてくる。
ミスティは右手には「りんご飴」、左手にはクレープを持っていた。
ちょっと食いしん坊っぽくて、普段は小食なミスティなだけに、祭りで浮かれてるんだなってのがよく伝わってきて、なんともほっこりしてしまう。
「うーん、そうだな。例えば秋の収穫祭とか、皇帝陛下の生まれた日を祝う太陽祭とか、先代皇帝の亡くなった日をしのぶ月光祭とか。なんて言えばいいのかな。帝国の祭りは、どれもこれもおカタい行事の延長だったんだよな」
「あ、そういうことですか」
ミスティがガッテン! って感じの納得顔をした。
「しかも北部魔国との戦争が長く続いていたから、大武術会とか戦勝式典とか慰霊祭とか、そういった
「つまりお祭りもある意味、戦争の一環だったというわけじゃな?」
「そういうこと。だからお祭りには必ず軍のパレードや、亡くなった将兵に黙とうしたり、ってイベントが入ってたんだ。でもこの縁日は、そういう意味合いがほとんどない気がする」
さっきから見ているが、ただひたすらに
そこには切迫感や堅苦しさなどは、全く感じられない。
ただ楽しむことだけを目的に、たくさんの人がお祭りに参加しているのだ。
「この縁日も、もともとは土地神様に
ミスティの言葉を、
「聖魔王がおったじゃろ?」
幼女魔王さまが引き継いだ。
「聖魔王っていうと、たしか南部魔国を統一して、最後は餅をのどに詰まらせて亡くなった開祖様だよな?」
忘れもしない。
世紀の偉人なのか、それとも一周回ってただのアホなのかが微妙な、例のあの人だ。
「その聖魔王はの。いわゆるパーリーピーポーでヒャッハー体質だったのじゃ。お祭りの堅苦しさを減らして、楽しむことの比重をどんどんと高めていっての。楽しくなければ祭りじゃないと、事あるごとに言っておったそうな」
「ぱ、ぱーりーぴーぼー……? ひゃっはー……?」
言葉の意味はよく分からないが、アレでナニな感じは伝わってきた。
「聖魔王さまの改革によって、南部魔国のお祭りはどこも盛大になったんです。そしてたくさんの人が集まってはお金を落とす、大きな経済効果を生む一大イベントになったというわけです」
「これも観光立国の一環と言えるかの」
「なるほどなぁ。やっぱり聖魔王って、すごい王さまだったんだなぁ……」
最後にちょっとドジっ子しちゃっただけで、すごい人ということで間違いはなさっそうだ。
「ま、堅苦しい話はもういいじゃろ。
「お、さすがは魔王さま。精霊使いだけあって、周囲の精霊がたかぶってるのを感じていたか」
「さすがにこれだけ騒がしくされると、
幼女魔王さまはそう
精霊の声が聞ける精霊使いは、100万人に1人のレアスキルだからな。
気持ちは分かる。
だがしかし。
「実はわたしも最近、なんとなくですが精霊の存在を感じるんですけど、これってやっぱり勇者になったからでしょうか?」
ミスティが何気なく言った一言に、
「な、なんじゃと!? ミスティが精霊の存在を感じられるようになったじゃと!?」
なぜか、幼女魔王さまが激しく反応した。
―――――
良かったら、似た感じのこちらの作品も……(*'ω'*)
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