百五十一話 郭嘉の対策
時を同じくして、許昌の方も出兵した
曹操軍も動ける部隊を集結させ、持ってる武将も全て引っ張り出した。
出発の日、許昌城の北門に居た面々は豪華その物だった。
三大将の典韋、許褚、趙雲はもちろん、徐晃、于禁、楽進、張遼、高順、張繍、曹洪、臧覇。
策士の方も、徐州に残された程昱と荀彧以外は全て遠征組
そして最も可哀想なのが曹仁と夏侯淵、前回同様八千の兵で魯陽の守備に充てられた。
これも仕方の無い事、曹仁と夏侯淵は攻めよりも守りの方が得意分野。荊州軍の動きを見張るのにうってつけ。
天子鑾儀を勝手に乗り回す曹操はこめかみを揉みほぐしながら
「この陳琳と言う奴は凄いな!この討伐檄文一つで袁紹軍の軍心を再び固めた、しかもついでに我の事を祖父の代まで罵てやがる!ここ数日はこの檄文のせいで夜も眠れなかったぞ!劉備が罵声で気絶した気持ちがわかったぞ……」
本来天子鑾儀には乗る事が許されない典黙も許昌城を出た後こっそり乗り込んでいた、もちろん曹操は大歓迎だった
典黙は笑いながら
「丞相、実はこっそり笮融も連れて来ました」
「笮融?」
曹操は少し顔を上げて典黙をチラッと見て
「数十万の大戦だぞ、そんな奴連れて来てどうする……」
曹操は再び檄文の事を思い出したのか
「いやっ、丁度いい!機会を作って暴言吐かせてやろう!アイツの舌剣が鈍ってない事を見せてもらおう」
「僕もそのつもりです」
二人は顔を見合わせて意味深な笑みを浮かべた
官渡に着くと趙雲が先鋒として既に本陣を築いた
曹操の指示で要塞を二つ作り互いに三里の距離で互いに援護出来るようにした。
本陣の大帳で曹操は文官武将を一同に集め、趙雲が調査結果を記した地図を広げた。
中には袁紹軍の本陣の場所も位置関係も詳細に記してあった
「これ程詳細とは、よくやったぞ子龍!」
曹操は満足そうに頷いた
「いえ、当然の事です!」
一同が地図を囲み袁紹軍の本陣を見ると、袁紹軍の本陣がここから五十里離れていて要塞が三つあった。そして延津方面を見ると荀攸が不思議そうにしていた
「どうして袁譚が屯所を山林に設置した…?」
許褚「そりゃ暑いからじゃないか?」
「包原澤阻険で屯所造りは禁忌だぞ……」
荀攸が言い終わると皆も視線を地図にある袁譚たちの本陣に集めた
武将たちはさ程も気にしていなかったが典黙を含む策士たちは皆考え込んだ
「わざと誘い込んでいるのか、それとも袁譚は兵法を知らないのか……?」
少しの沈黙を経て曹操が口を開いた
「いくら袁譚が兵法を知らなくても統率者として策士の補佐が必ず居るはずです。待ち伏せがあると考えるべきでしょう」
郭嘉が言い終わると皆も頷いた
曹操も顎に手をつけて地図に指差しして
「待ち伏せするならここだろうな。子龍、この山は調べたか?」
「はい、山の名前は雁落山、山の規模も大きく密林になっています。数万人を隠しても痕跡を見せないことができます」
官渡の辺りは平原が多く、山自体が少ない。
なので趙雲は近くの山を手当り次第調べて、地図に記した。
単に伏兵を仕掛けるなら道中の密林でも良かったが、数万人単位の伏兵ならそうもいかない。
「せっかく袁譚が手の込んだ物を用意したのに合わせてやることができなくて残念だな」
曹操は少し残念そうに言った。
雁落山にどれ程の伏兵が居るかわからないが袁紹軍の兵力は自分の四倍以上、互いに消耗するのは袁紹が得する結果になる。
「丞相、せっかくのおもてなしですよ、受けてあげなければもったいないです」
荀攸と賈詡が黙り込む中郭嘉が酒瓢箪を揺らしながら意見を口にした。
「奉孝、策があるのか?」
郭嘉の発言に興味津々の曹操が聞いた
「実者虚之、虚者実之、先虚後実、散らす事可なり!」
「なになになに?虚だの実だの、先から何言ってんだ?呑んだくれ」
難しい話になるとついていけなるなる典韋が頭をかきながら不満を口にした
「兄さん、もう少し昭姫ちゃんから勉強してくださいよ。奉孝の提案はね、先に軽装の奇襲部隊を出して雁落山の伏兵を誘い出してすぐに逃げる。そうすれば敵さんも同じ所に伏兵を仕掛ける事も出来なくなるでしょ」
「なるほど!その後にもっかい奇襲するんだな!良いね、やるね呑んだくれ!」
さすが鬼才だ、僕なら無視していたのに君はそれすらも利用しようとするのだね
皆が郭嘉の策に驚く時に典黙も同じく驚いていた
曹操も無意識的に典黙の方へ見て、典黙が頷いたのを見たあと
「奉孝の計画を実行しよう!今夜は子廉が五千騎兵を率い袁譚の山林屯所へ迎え、雁落山から伏兵が出た場合直ちに戻れ!」
曹洪「はい!」
「子盛、仲康、子龍、文遠、伯平!子廉が戻ったら虎賁営と龍驤営を率い火油と火矢で袁譚の屯所を奇襲しろ」
「はい!」
俺が陽動で終わりかよ…
一同が返事をした後曹洪だけが少し悲しく思っていた
「解散、各自準備せよ」
解散したあと曹操はまた典黙を連れて見廻りという名の散歩をしていた
「ここに来た時子龍から聞いたが、君はどうも烏巣という所を気にしていたようだ。数回調査してもそこに袁紹軍は居なかったようだがな…烏巣、何か特別か?」
「いいえ、官渡の地図を見た時にそこの地形が兵糧を蓄えるのに適していると思ったので調べてもらいました」
典黙は趙雲から調査結果を受けた時、歴史が既に変わっていることに気づいた。
つまり自分の予知能力は完全に機能を失った訳である。
「袁紹軍の兵糧が何処にあるのが分かれば確かに一撃で壊滅させる事が出来る、袁紹もそれをわかっていて簡単に見つかるような真似をしないだろう」
「ええ、なので今回ばかりは近道がありませんね」
「フン、構わん!我には君がいる、奉孝も公達も文和も居る!袁紹軍がどれだけいようとも少しの不安も無い!」
曹操は依然自信満々にしていた
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