九十五話 届いた贈物
淮南寿春の州牧府にて、伝国璽を抱えた袁術はいてもたってもいられなかった。
およそ二日前に彼は奇妙な出来事を耳にしたのだ。
それは長江沿いの漁師が百斤近くの大きい魚を釣り上げ、調理する際にはらわたを整理していたら魚の腹から文字が彫られた玉佩(ぎょくはい)が一枚出て来た。
袁術は早速早馬でその玉佩を持ってくるように部下に命じた。
袁術「ダメだ…待ちきれん!早馬を迎えに駅に行く、奉先よ共に行こ!」
呂布「はい!」
「袁術様、お待ちください!」
袁術の馬車が寿春の城門に辿り着く前に城内の百姓が皆駆けつけて跪き馬車の行く手を遮った。
その百姓たちは皆顔色悪く、虚ろな目をしていて、肌の上から骨格が見てわかるほどに痩せ細り、肉付き悪いせいかブカブカの着物が大きく見えた。
袁術「何事じゃ?」
百姓「昨年度川の氾濫して、今年度は干ばつ、私たちは食べ物すら無く、今年税金を払ってしまっては種を買う金すらもなくなります故、税金の免除をお願いします!どうか生きる手立てをください!」
筆頭の老者が必死に叫び、後ろにいる百姓たちも頭を地に伏せた。
「またお前らか!昨年は救済金銭を乞って今年は税金の免除だ?ならん!」
袁術は更に冷たく無表情に
「天下大乱の今、他の州は子供を交換して食べると言う、お前らが今そうなってないのはこのワシのおかげだろう!税金はちゃんと払ってもらう、お前らを守るための軍だって兵糧が必要じゃ!」
話す事により更にムカついてきた袁術は立ち上がり百姓を指差しながら罵った
「食うのに困る?金がない?ならお前らも子供を交換して食べればいいだろ、女房や娘を他の州に売り渡せば口減らしにもなる上収入もできるだろ、そうしろ!」
言い終わると袁術は衛兵を駆使して百姓たちを追っ払った。
「ふんっ!愚民共が…」
屈強な兵士に追いやられ百姓たちは逃げ惑う中袁術は身なりを整い
呂布「気になさらないでください義父様、愚民は愚民、義父様の大変さを知らないです」
袁術「そうだな、やはり我が奉先、いい事を言う」
すぐ、馬車が城外二十里離れた駅に到着して早馬と合流した。
まだ魚の血が付いてる翠の玉佩を見た時袁術は愕然として固まった。
その玉佩の表側には雲を昇る龍が彫刻されていて、裏側には"仲家興、袁術帝"と彫刻されていた。
袁術はその玉佩を固く握り無言でいるが、内心は穏やかじゃ無かった。
その様子を見た呂布は急ぎ赤兎馬から飛び降り袁術の前で片膝をつけて拱手し
「義父様!これは天意…天が義父様に帝に成る事を命じました!」
「そこまでの徳がないワシだ、皆に反対されるんじゃないか?」
袁術は困った風に顔を手で覆い、目の前の義子がますます好きになって来た。
「義父様!古来より能ある者が天下を得るべき。増して義父様は既に伝国璽を手に入れ、今はこの玉佩が大魚の腹中より現れた!義父様は帝を名乗らなければそれは天のご意向に反する事です!義父様はならないと言うなら、この呂布はここから立ち上がりません!」
呂布の懇願に袁術はとても感動してため息混じりに
「そっ、そっかぁー、天のご意向なら仕方ないのう、それは逆らえない…しかしワシの一存では決められない、帰ってから集会を開こう!この事について討論が必要じゃ!帰ろ、早く帰ろ!」
呂布「はい!父皇!」
袁術「未だ早い、未だ早い…アッハッハッ…」
馬車の跡に続く呂布はニヤリと笑みを浮かべた
袁術め、ますます俺が気に入ったろう?そのうち兵馬が俺の命令で動く時にお前とは"腹を割って"話そうじゃないか…この呂布の義父になった事はどういう事か教えてやろう…
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