八十七話 飴と鞭
酒宴が終盤になり、典黙は潰れずに生き残っていたが典黙の酒を代わりに飲んだ典韋と許褚は犠牲になった。
曹操「仲康、子盛、起きれるか?」
許褚「ZZZ」
典韋「主公!俺いっぱい勉強してシャキッと大将軍になって……」
曹操「ダメみたいだな…子寂、ちょっと歩こうか」
典黙「いいですね、夜風が気持ちいいと思います」
「帰ってくる時に祐維を説得して叔母の鄒氏を我の府上に迎え入れる事を受け入れて貰ったよ!」
外で歩く曹操はすごく上機嫌だった
典黙「それは何よりですね!彼も少なからず武功を挙げています、納得して貰えたなら仲が悪くなることもないですね!」
曹操「人妻は良いぞ!」
典黙「少し前までは理解できなかったが…なんかいいですね…」
「子寂も鄒氏に気があるのか?なら譲ってやろうか?!」
曹操は足を止めて目をキラキラさせていた。
今まで典黙はあまり欲しいものを口にしなかったからできることなら満足させたいと思っていた。
典黙「結構です…」
曹操「そうか…」
翌日、典黙は牢獄へ向かった。
ここ数日高順は与えられた捕虜の食事をちゃんと食べたが、勧誘しに来た人をこっ酷く罵っていたらしい。
典黙は何故かタヌキ賈詡を無理やり連れて来ていた。
「彼とは親しい仲では無いと言ったではありませんか、私には荷が重過ぎます。なんで連れて来たですか?」
賈詡は今にも泣きそうな顔をして渋々典黙の後ろをついて行く。
「文和、僕を信じて!まず君が高順と接触して僕が外で会話を聞いて隙を見つけ出します。上手く行けたら文和の功労も報告します。でなければ君が邪魔をしたと主公にデタラメ言うよ」
典黙はそう言い終わると自分で首を絞める仕草を見せた。
案の定保身を第一に考える賈詡は使いやすかった。
賈詡は嫌々牢獄に入った直後に高順の怒号が聞こえて来た
「俺の前から消え失せろ!恩を仇で返す卑怯者め!董卓、李傕、郭汜に続いて今度は曹操か!どの面下げて俺の前に現れた!この鎖さえ無ければこの手でお前の首を引っこ抜いて殺る!」
「何なのだよこの人は!会話が成り立たないじゃないか…子寂、お手並み拝見」
罵られて涙目の賈詡はすぐ出て来た。
「文和のような善良な人がここまで言われるのか…大変だったな、済まない、僕は丞相に報告しに行きます。でわっ」
典黙はあまり気に留めない風に去ろうとした。
勧誘しに来たという事実が出来た以上わざわざ怒られるようなマネもしたくなかった。
「先の話と違うでは無いか…最初からこうなる事を知っていたじゃないか?」
残された賈詡は風に吹かれてとても寂しい雰囲気になっていた。
三国時代では高順のように死んでも屈服しない人はたくさん居た、龐徳、陳宮もその類。
こういう人材は確かに惜しいが死すら恐れないのなら他に手段も無い、ならせめて彼らの望む最期を贈ってやるしか無い。
典黙は曹操府に向かう途中に偶然典韋と会って、事の経緯を話した。
「何!?そんな事があったのか!丞相に報告するのは未だ速い!麒麟の才にできない事があってはダメだ!俺が話を着けてくる!」
典韋は両頬を叩いて気合を入れた。
典黙「兄さんが説得?どうやって?」
典韋「決まってんだろ!拳で!」
武力の強さで高順を認めさせるのか…確かに飴がダメなら鞭を使うのもありだな…
典韋は急いで牢獄へ走り、高順の鎖を解いて彼の三股戟を投げ渡した。
典韋「捕虜のくせに生意気だ!武器を取れ!俺の攻撃を二十手受け切ったら解放してやる!」
高順「フンっ!蛮勇の将か、恐るるに足りない!」
高順は三股戟を手に取り典韋に襲いかかった。
正面から迫って来た三股戟を典韋は避けずに右手に持った短戟で軽くあしらった。
大きな実力の差にも動じずに高順は高く飛び上がり両手で三股戟を握り切り下げた。
典韋も頭上でそれを防ぎ、金属同士ぶつかる音が響いた後高順は逆に弾き飛ばされていた。
典韋「なんだ、大した事ねぇな…調子にのんなよ!」
典韋は両手の短戟を横に投げ捨て高順目掛けて突っ込み、左手で高順の胸ぐらを掴み持ち上げた。
足をバタバタさせて抵抗する高順の顔面に典韋の右拳が重く激突した。
「お前、ちゃんと飯食ったのか?」
典韋は気絶した高順を下ろし首をバキバキ鳴らして物足りない感じだった。
近くで闘いを覗き見していた笮融は飛び跳ねて喜んでいたら典韋に見つかり
典韋「おい!そこのお前、今日からコイツに鶏の丸焼きと酒を与えてやれ!こんな状態で勝ってもコイツも不服だろうからな」
笮融「笮融です!わかりました!」
高順が痛めつけられるのを見るためなら、さ笮融は喜んで何でもするだろう。
三日後典韋は再び牢獄へやって来た。
高順も三日前よりも少し状態が良くなり、典韋の攻撃も十回防いだが、結局武器を吹き飛ばされて拳でボコボコにされて気絶した。
笮融「将軍!コイツ未だ不服みたいですよ!」
典韋「そうか?なら同じだ!鶏の丸焼きと酒をやれ!また来る」
だんだんと笮融は気づいた、高順を処刑するよりも典韋に殴られる高順を見る方がスカッとすると。
そして典韋も当初の目的を忘れたかのように勧誘もせずにただ単に殴っていた。
三回目になると典韋は高順を気絶させなかった。
確かに高順の武力は大したこと無かったが何回殴られようとその目はいつも真っ直ぐだった。
このような男はただ武力ではねじ伏せられない、典韋はそこに気づいた。
お互い戦場で命を張る男、典韋はこのような真っ直ぐな男にいつも尊敬の意を持っていた。
笮融「将軍、速くぶちのめしてくださいよ、いつもみたいに!!!エッへへへ」
典韋「失せろ」
「はい!」
空気が読める笮融は危機回避能力も高く、"失せろ"などと言われれば聞き返したりは一切しない、脱兎の如く逃げて行った。
典韋は高順を牢獄へ運び込み、衛兵にもっといい肉と酒を持ってくるように指示を出した。
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