六十二話 救出作戦
呂玲綺の白い駿馬の後ろに従い、どれくらいの走ったか分からない。
ただ一つ、自分が曹営の大寨からますます遠ざかって行くのがわかっていた、典默の心は少しずつ緊張から恐怖へと変わっていた。
「あの、僕を何処に連れて行くのですか?」
少女は相変わらず黙って、自分の前で先導している。
途中、典默は速度を落とし、逃れるチャンスを探そうとしましたが
この少女はまるで背後に目があるかのように、2人の距離が10歩を超えると停止して典黙を見張っていた。
夕暮れ時、とある洞窟に到着し、少女はついに止まり、馬から降りて
「来て」
とだけ言葉を投げた。
少女について洞窟に入ると、中の環境に典默は驚きました。
洞窟の中には石のテーブルがあり、上には果物やお菓子が並べられ、横には石のベッドもあり、ベッドには獣の皮が敷かれ、毛布も置かれていました。
この少女、武芸が立派で、方天画戟を使いこなしている。ただの山賊という訳では無さそうだ...
何者で何を狙っているのかを知りたい!
「僕に何の用があるんですか?」
少女は相変わらず典默に反応せず、石のベッドに向かって毛布を整え、石の椅子に座りながら果物とお菓子を食べ始めた。
最悪でも死あるのみか…せめてお腹いっぱいで逝くか…
典默は覚悟を決めて座り、大口で食べ始めました。
食事が終わると、空はすっかり暗くなり、洞窟内は目の前が見えないほど暗かった。
しかし、少女はまるで手品のように石のベッドのそばから油灯を取り出し、火をつけると、どこからか酒の壺も持ってきて自ら自分と典黙に一杯ずつ注いだ。
そして少女は手に持った盃を軽く典黙のそれにぶつけ、一気に中味を口へ流し込んだ
「よしっ!式は終わった、一緒に寝よ!」
プーッ
典黙は酒を噴き出して耳をかき聞いた
「なっ、何ですって?」
少女は氷のように冷たく
「初夜だぞ、結婚を知らないのか?」
踊る灯りの火を見て典黙は一瞬黙ったが内心素直にワクワクしていた。
この少女の言動こそ冷たいがその容姿は申し分無し!近所の妹キャラの麋貞や優等生キャラの蔡琰とはまた別のタイプで自分の心をを惹きつけた。
今日、ここで、僕の初回特典を大放出するのか!この容姿に産んでもらえたことを両親に感謝しないとな!
浮き着いた心を押し殺し咳ばらいをして平然を装って
「ゴホンッ、未だ君の名前すら聞いてませんが、まさか一夜限りの関係?それはさすがに…ね?」
少女はせっかちなのか
「そんな事どうでもいいだろ、さっさと済ますぞ!」
さっさと済ます?まぁいいでしょ!
「未だ何か言いたいことはあるのか?」
典黙は首を振り、この時何を言えばいいのか、何も思いつかなかった。
典黙はおとなしく少女のいるベッドに這い上がった。
許褚のように結婚してからお互い知っていこうか…
この少女はしばしばこの洞窟に来ていただろうか、布団の中にいい残り香がほんのりしていた
ではでは…
「ちょっと!何をしてるの」
「えっ?初夜ですよね?」
「触るな!くすぐったくて寝れないだろうか!」
ペシッ
「何なんだよ!大人しく寝ていろ!」
思いっきりぶっ叩かれた典黙はヒリヒリする頬っぺを抑えて頭にハテナを浮かべた
「あの、初夜って分かりますか?」
「バカにしているのか?男女が同じ布団で寝る事だろ、次変な所触ってきたら腕を切り落とすよ!」
この日の夜、典黙は泣きながらおとなしく眠りに着いた。
翌日、一筋の朝日が典黙の顔に照らした
少し小狡くもくっきりした典黙の顔立ちは寝起きの少女の視線を暫く奪っていた。
少女は少し甘い笑みを浮かべると典黙は目を覚ました。
すると少女はすぐに起き上がり朝日に向かいクククっと笑い
「初夜の儀は終わった!今日からお前は私の物だ!琅琊に戻ったら準備をして小沛に私を迎えに来い、私の父は呂布、呂奉先、朝廷からは温侯の位を授かっている」
初めて名乗る呂玲綺に驚きを隠せない典黙。
「お嬢、中に居ますか?」
ゴツイ声が洞窟内を響き渡った
呂玲綺「入れ」
すぐ、鎧を纏った男が入って来た、その男とはかつて濮陽で夏侯淵と戦っていた張遼だった。
典黙はその時濮陽の城楼から彼を見た事がある
張八百!!!
張遼、字名は文遠。張八百とは一部の三国ファンが彼に付けたあだ名である。
三国演義では張遼が曹操の軍門に下った後、孫権が率いる十万の兵を八百の兵で打ち破った。
そしてこの史実にも記載された事件から孫権もまた"孫十万"と千年にわたりネタにされていた
「お嬢、これは一体…」
目の前の光景がこの猛将に言葉を詰まらせた
「文遠おじさん、もう心を決めた人が居ると前にも言いました、昨日結婚して、初夜を過ごしました」
気まずいと思った典黙は布団で身を包み俯いて何も言わずに居た。
張遼は呂玲綺を少し遠いところに引っ張り小声で
「誰にも言わないから、俺に本当の事を言って欲しい、袁術の政略婚が嫌なのか、それとも本当にこの小僧が好きなのか?」
「それはもちろん好きだからです、それに昨日は既に…」
呂玲綺は下を向いて少し恥ずかしそうに言った
何ってこった…この子は小さい頃から男勝りの性格していた、それが今はこうして照れている…これは本当に惚れたのか…
張遼「ともあれ、まずは俺と帰って温侯に事情を説明しないとだ。コイツは帰そう、連れてったら温侯に殺されるかもしれない!」
呂玲綺は狙った効果が出ているとみて頭を首に降った。
張遼と外へ向かう際、典黙の方に振り向いて声の出ない唇話で「待ってる」と言った
早朝の風に吹かれ、雑草に結露した水滴が曹昂の顔に落ちて、彼はゆっくり目を開けた
曹昂は茫然と周りを見渡し
「先生…」
胸の痛みを我慢しながら起き上がった幸いな事に乗っていた馬は隣でのんびり草を食べている、曹昂は文字通り血反吐を吐きながら急いで曹営へと向かった
「子盛将军!」
入り口に入った時に典韋を見かけた曹昂は馬から転げ落ち、典韋の元へ転びながら向かった。
典韋も驚きながら駆けつけ
「若!誰にやられた?ぶっ殺して犬の餌にしてやる!」
「先生が…張飛に囚われました…」
そう話すと曹昂は再び気絶した
雷に打たれたかのように典韋は固まった。
隣の兵士たちが曹昂を運ぶ間も典韋は暫く立ち尽くしていた。
しばらくして、我に返った典韋はゆっくりと顔を上げた。いつものおとぼけの雰囲気は皆無、その眼光からは殺気しか感じられなかった。
典韋はそのまま広場へと向かった
広場には許褚と趙雲が兵を調練していた
「調練止め!!」
典韋は絶影に飛び乗り大声で
「弟が張飛に拐われた!助けに行く!お前らには関係の無いことだ!着いてくるならありがてぇ、来なくても恨まねぇ!」
八百の典字営は互いに顔を見合わせたあとに声を揃えて
「お供します!!」
「っしゃ!」
「張飛か、この罪は重いぞ!」
許褚も少しの躊躇いもなく火雲刀を持ち爪黄飛電に飛び乗った
君主の命令無く兵を動かすのは反逆罪に当る
いつもなら二人を落ち着かせる趙雲も迷わずに玉獅子の跨り、五百の弓騎兵も何も言わずに後ろに続いた。
合計千三百の兵を率いた三人は曹営を出ようとした時に
「なんのつもりだ!」
夏侯惇が行く手を塞いだ
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