五十六話 奇襲成功?
袁绍からの手紙を受け取った後、劉備は喜びのあまり自然に涙を流していた。
自分にとっての機会がついに訪れたことを自覚した。
この戦いに勝ったてば、徐州では劉備の立場が名実ともに陶商より上になる。
彼はこの様な機会を、白髪になるまで待っていた。
この日の夜劉備は遠足前日の子供みたいに眠れなかった。
翌日の朝、関羽が徐州の文官武将を召集させた。劉備は袁绍からの返事を手に高々と掲げ、大声で
「諸君、先日私は曹賊が詔を発布した時点で、敵を牽制する策をすでに手配したと言いました。今、その時が来ました。袁绍の配下将軍文醜が鉄騎2万を率いて青平関を渡り、明日深夜に曹軍の大営を奇襲し、曹賊を殲滅するのです!」
この言葉に会場は驚いた。彼らは劉備がこれほどの実力を隠し持っているのは知らなかった。曹操が前回徐州を攻めたとき、陶謙も袁绍に助けを求めていたが、袁绍はそれを無視した。
しかし、今回、劉備はそれを成し遂げました。これは何を意味するかは言うまでも無かった。
「玄徳公は仁義に秀で、かつ漢室の宗家であり、その上袁绍ほど四世三公をも動かせる。この戦いで曹賊は必ず滅びるでしょう。」
「素晴らしい!曹賊が一度敗れれば、玄徳公は王師を率いて許昌に迎え、これにより大漢の復興と歴史に名を刻む功績が立つでしょう。」
「曹賊を滅ぼし、大漢は復興することができる!」
糜竺と笮融は交互に口を挟み劉備に媚びる。
これには陶商も何も言えなかった
もし袁绍の援軍を調達できれば、曹操には確かに退路がない。
劉備は手紙を陶商の机に置いた後、脇にいる武将たちの列に歩み寄り、先頭の2人に向かって一礼した。
「この戦いは天下の大業に関わるもので、私は未熟者でございますが、どうか2人の将軍、お力添えいただけませんでしょうか」
髭面で大柄なのは臧霸、臧宣高。身長がやや小柄なのは孫観、孫仲台。
この2人は泰山賊の出身で、かつて泰山四賊と呼ばれた有名な群雄の中で、2人は2つの席を占めていた。その後、陶谦の恩恵を受けて彼のもとに仕えるようになった。
これらの2人は徐州軍の中で非常に尊敬を受けており、劉備が徐州軍を本当に心から引き入れたいならば、これらの2人を味方にする必要があった。
特に臧霸は、現在徐州で最も強力な丹陽鉄騎を指揮しており、その影響力は明らかである。
2人は何も言わずに陶商が座っている帥位に向かって見つめた。陶商が軽く会釈したのを見て、2人は頷いた。
臧霸はしばらく沈黙し、その後尋ねた
「徐州軍の同胞たちの命を預かるんだ、玄徳公、この情報は信頼できるものでしょうか?」
「その点について将軍たちは安心してください。この劉備、命をかけても信実を保証いたします」
劉備は当時、十八路諸侯が同盟した際に袁绍の筆跡を見たことがあり、この手紙は偽物ではないと確信していた。
臧覇「それならば、末将たちは玄徳公に従って出陣いたします」
劉備「陛下を代表して2人の将軍に感謝申し上げます」
小狡い劉備は、天子の名義を使うことで、彼らにとっては戦場で全力を尽くすように言葉の裏で促していた。
悪い状況ではあるが、劉備はこの時徐州の人心を一時的に団結させ、細かい作戦を決めたあと、一同がそれぞれの準備に取りかかった。
翌日の夜、関羽と張飛は、幽州から連れてきた三千の兵馬と徐州軍の二万人を合わせ、その総勢はなんと二万三千の兵力なある。
二人は劉備に報告するため府上にやって来たが、そこで劉備は真剣に一枚の似顔絵を見つめていた。
「兄貴、この若者は誰だ?」張飛が一瞥し、好奇心に駆られた。
「二弟、三弟、ちょうどいい」
劉備は興奮した様子で絵を机に広げ
「この人の顔をよく覚えておくがいい。今夜、曹賊を襲い、討つことは確かに重要だが、この若者を見つけ捉えることもまた大事だ」
「兄貴、一体どう言う事だ?」関羽は絵に描かれた人物の様子を真剣に覚えた後、尋ねた。
「この人は典默という名前で、曹賊の軍師祭酒だ。彼は天地を通じる力を持っていると聞いており、曹操でさえ彼を麒麟の才と呼んでいる」
劉備は感慨深げにため息をついたが、関羽と張飛はただ茫然としていた。
実際、徐州の百姓たちから曹操の周りに「典默」という異能を持つ少年軍師がいると聞いたことはあったが、曹操がもうすぐ死ぬのになぜ彼の軍師を手に入れようとするのがよく理解していなかった。
劉備はため息をつきながら言った
「この戦いの最良の結果は曹賊を斬ることであり、私は徐州の軍心と民心を取り、最後には許昌に向かい天子を救い出すことです。しかし、それでもなお、大漢の復興の目標までは未だ遠い」
英雄である劉備は糜竺と笮融を引き寄せたが、彼らの媚びる言葉に自我を見失うほどではなかった。
「たとえ曹賊が死んでいても、天下は依然として諸侯が群立しており、国を本当に整えるには、典默のような稀なる人材の補佐が必要だ」
劉備が典默をこれほどまでに称賛するのを聞いて、張飛は少し不機嫌そうになった
「兄貴よ、コイツが本当にそんなにすごいなら、曹操は今夜行きつまる事ないだろう?」
一瞬確かにと思った劉備はすぐ我に帰って叱った
「袁紹が手を貸してくれなかったら、我々が曹賊に勝つ事もできなかった。典黙のような者は我々だけじゃなく陛下にも必要な人材だ」
「へいへい、ちゃんと生け取りにするからよ」
劉備が怒るのを見て、張飛はすぐにおどけた態度を見せた。関羽も横で繰り返し頷いて言った
「兄貴、安心してください。兵士たちにもこのことを注意させます」
劉備はやっと納得して、二人の肩を軽くたたいて言った
「さあ、行こう。出発だ」
南方の旗印の下、大軍は既に結集していた。二万以上の兵力は、七千の騎兵、残りは歩兵。劉備は先頭に立ち、的盧馬にまたがり、腰から引き抜いた双剣を空に指さして叫んだ
「将士たち、賊を討ちて漢を興せ、行くぞ!」
二万以上の兵士が一斉に進んだ。
五十里も離れていると、騎兵と歩兵が同じスピードを保つことは不可能であり。
最初に到達した騎兵は遠くにいる曹軍の陣地が混乱しているのを見た、その混乱の中では悲鳴と戦闘の叫び声が絡み合っていた。
「兄貴、間違いなく袁紹の部隊が先に戦ってる。俺らも早く中に突入しようぜ!」
長い間我慢してきたが、この光景を見ると、張飛丈八の蛇矛を手に持って興奮し始めた。
劉備はすぐには命令を出さず、代わりに別の方向を見つめて言った:
「吕布の兵はまだ来ていない。約束はこの時刻に一斉に攻撃することだったはずだが…」
「兄貴、呂布の屯所はここから百里以上も離れてるぜ。途中で遅れてもおかしくない、気にすることはない。袁紹の兵が来てればいいだろ」
張飛が再び促した。
崩れた篝火、四方に逃げ惑う戦馬と兵士を見ながら、戦闘が最も激烈な時期であることが見受けられた。
これ以上待てば、袁紹の軍が大損害を受けるだろう。結局、自分が彼らを招いたのだから、軍が壊滅すると話はややこしくなる。
「突撃しろ、曹賊を討て!」
張飛はやがて興奮を抑えることが出来なく兵を率い突入した。
すると大軍は曹操軍の陣地に突入した途端、本来戦っていたはずの兵士たちはみんな立ち止まり、ニヤリとして劉備軍をにらみつけていた。
絶影にまたがる典韋が群衆からゆっくりと出てきて、驚きながら言った:
「お前が劉備だろ?噂通り耳がデカいな!ハハハ」
「子盛、何を無駄話を言っているんだ。斬れ!」
許褚は一足早く挨拶がわりに火雲刀で劉備の頭上目掛けて斬りかかった!
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