五十二話 教育事業
典韋「主公が急に命令するからさ、俺らはまだ何も用意ができてねぇぞ?典字営も訓練どころか選抜すらも始まってねぇ…..そんな事よりもお前が心配だ。俺は明日の朝には先陣として出発する、んでお前は主公の主力と一緒に俺たちの後ろについて来る感じだ。まぁ行軍の速度も俺たちと変わらないけどよ。俺がそばにいねぇと、お前はすぐイジメられるかんな…..そん時はやり過ごせ、あとで俺に言いつけろよ」
典韋「それにもう一個、何度も言っているけどよ、早い所良い女でも見つけろ。お前はもう十八だろ?早く家庭を持て!
親が亡くなるとき、俺はお前を見守ると約束したかんな。お前は何をもたちいてんのか、何考えてんのか訳分かんない…….」
典家の府邸で、典韦は自分の双戟と十二枚の投戟を磨きながら、まるでおばあちゃんのようにくどくどと語りかけていた。典默はイライラしながら
「くどいよ兄さん、生死の別れでもないだろうに、せいぜい十日くらいで前線で合流するんだから。
あと結婚のことは気にするな、僕がモテないはずがないでしょ?」
典韋「くどいとは何だ、早く嫁貰えば俺も言わなくて済むわ!」
隣で火雲刀を磨いていた許褚もついに話に割り込んで来た
許褚「あてがないなら遠慮なく俺に言ってくれ!地元で異母の妹が居てよ、何より俺似の良いケツでよ!ありゃ安産型だぜ?」
典黙は無意識的に許褚のお尻を見てその妹を想像したが思わず寒気がして思い切り首を横に振った。
典韋「何首振ってんだよ、徐州から帰って来たら仲康その妹とやらの連れて来て!」
許褚「おお!任せろ!」
典黙「そう言えば子龍はどうした?」
兄さんたちの連携に典黙は鳥肌が立ち、急いで話題を変える
許褚「子龍か? 病気だって。俺と子盛の兄貴で見舞いに行ったけど。子龍はベッドに横たわっていて、顔色は何も悪くなかったけどな」
典黙「病気?」
典默は眉をひそめ、冷静な声で言った「主公には病気を報告したのか?」
典韋「報告したぜ。主公はしっかり休養するように言ったし、徐州のことは気にするなとも言った。」
許褚「そうだな、俺たちと兄貴がいれば、子龍の出る幕も無いだろうな」
典黙「病気とはタイミングが悪いな….おそらくは心の病気だろう…」
典默はため息をつき、立ち上がって言った
典黙「徐州への旅は非常に危険だ。吕布だけでなく、関羽や張飛なども絶世の猛将、子龍の力も必要だ!」
典韋「体調不良はしょうがないだろ、主公もああ言ってんだから」
许褚もこの事態がやけに怪しいと感じていた。武道を嗜む者が急に体調を崩すのはいくら何でも不可解すぎる。
典黙「兄さんたちは知らないだろうけど、僕は病気を治すのも得意なんだ….特に心の病ね!」
典韋、許褚「心の病?」
かつて劉備は公孫瓚のもとで過ごしたことがあり、その間に趙雲との関係が急速に深まった。趙雲が常山に戻ると、劉備は泣いてしまったことさえあった。
忠義無双の趙子龍を劉備にぶつけるのは確かにやりずらい。
普段なら典默も何も言わないが、兄さんたちを同時に吕布、関羽、張飛と対峙させるのは明らかに無謀だ。
どうにかして、彼の心の病を治さないとね。
典默が赵雲を訪ねる準備をしていると、府内でギーと音がして扉が開かれ、蔡琰が入ってきた。
蔡琰「典公子、お暇ですか。お願いがあります」
典黙「昭姫ちゃん!分かったよ。昭姫ちゃんの家で話すのかい?」
蔡琰は首を横に振り「街へ行きましょう、連れて行きたい所があります」
典黙「いいよ、行こう」
子龍はまあ、もう少し寝かせるかっ。
二人が去ると、典韋たちは彼らの後ろをボーッと見つめていた。
典韋「ねえ、この小僧いつの間にこんな可愛い子と絡み始めたんだ?仲康どうだ?お前の堂妹よりどうだ?」
許褚「うーん…この小娘もなかなか美人だ。こりゃ俺の妹の出る幕が無いね…」
街へ出て、蔡琰は典默をいくつかの曲がりくねった道に案内し、路地の先には長らく空き家になっていた庭が広がっていた。
蔡琰は空き家を見渡した後、言った
「私はここに学院を開設したいと考えています。町の子供たちに文字を教えることができます」
典黙「それは良いことだね、僕も協力するよ。どう手伝えばいい?何でも言ってくれ」
この時代では、世家や富豪商人の子供以外に文字を学ぶ機会がなく、普通の人々は自分の名前を書く事すらできなかった。
そのため、州府が掲示を行う際には、通常、文字を知っている人が内容を説明する役割に任命される。
蔡琰は许昌に親戚もなく、おそらくは心の支えとなる何かを求めているのでしょう。
そして、この方法はついでに百姓達にも利益をもたらすことができる。
蔡琰「調べてみました。ここはもともとの穀物処理場で、天子が许昌に定都した後、穀物処理、軍の検討などの機能はすべて城外に移動され、そのためこの空き家は放置されました。
私は典公子にこの空き家について朝廷に相談してもらいたいのです。子供たちが安心して学べるようにして欲しいです」
この程度の事なら典黙も簡単に決められるから悩むまでもなく答えた
「任せて!」
蔡琰「それから…」
蔡琰は典默をちらりと見て、頬が少し赤くなり、小声で
「それから、空白の竹簡が100枚必要です。授業を行うには内容を書く必要があります。100枚の空白の竹簡にはおそらく1000枚の銅貨が必要です」
典黙「自分で書くの?」
蔡琰は微笑みながら首を少し傾けました。
「以前、父親が亡くなる前に、家には1万冊以上の書物がありました。私はそれらを暗記しており、少なくとも7000巻以上は完璧に書けます。十分です」
マジ?典默は舌を巻いて蔡琰を見た。
この時代、世家が受け継ぐ最も重要な武器は書物であり、これらの書物が世家に絶えずに才能を育むことができる。
しかし、ほとんどの世家の蔵書は数百巻しかなく、荀彧は述べていたように、荀家の蔵書もたったの三千巻しかなかった。
世家であるのに対し、蔡邕一人が蔵書万余巻を所有していたため、彼は文人の中で大きな影響力を持っていた。
さらに驚くべきことに、蔡琰はたった一人で七千巻以上を暗記していたのです。彼女こそが後漢一の才女であると言えるでしょう。
典黙「ひゃっ、100枚の空白の竹簡で足りるか?許昌の人口が多し、1000枚を先に買っても良いんじゃない?僕も幾らか先行投資するからどんどん買ってもいいよ?」
蔡琰「お気持ちは嬉しいです典公子、お金はいりません、1000枚の竹簡で十分です。」
蔡琰は感謝の表情で典默を見つめた。
この事なら曹操に直接頼むこともできたはずで、なぜ典默に頼むことを考えたのか、彼女自身にも理解できなかった。
典黙「昭姫ちゃんすごいね!7000巻以上の本を書き出せば、天下の子供たちはみんな本が読めるようになるでしょ」
蔡琰は典默を見ながら頭をかしげ、微笑んで言った:
「実は私も典公子と同じように考えています。いつかは天下の人々を教化し、広く民智を開くことを願っています。でもこれは現実的でない理想で、7000枚もの竹簡を天下の子供配るなど、南山の竹林を全て切り倒しても足りないかもしれません。」
古代の人々は竹簡を使って読書していたので。中国では『学富五車』と言う四字熟語がある
それは一人が読んだ竹簡を運ぶのに馬車五台分が必要だという意味で。
多少話は盛ってるかもしれないが確かに竹簡だとそれくらい不便だった。
典黙「ふーん、その理想を僕なら実現できるように協力できるかもね」
蔡琰は微笑みながら眉を寄せ、疑うことも無く質問することは無く、ただ単に興味津々で典默を見つめました。
典黙「その前に主公たちとの遠征がある、協力はそのあとだね。」
蔡琰「戦場は危険ですから、公子はくれぐれも注意してください」
典默は大らかに笑って言った
「安心しな!その後昭姫ちゃんと一緒に天下を教化するつもりだからね」
蔡琰と別れた後、もう夕暮れ時になっていた。典默は休息もせずにすぐに趙雲府の方向に向かった。そこにはまだ病人がいるからです。
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