二十七話 金策

曹操は嬉しそうに程昱や荀彧と豊かな税収見込みを計算していた。

ざっと保守的に計算しても五十万石は下らない

これは兗州の八郡だけを考えた結果で、もうすぐ手に入る汝南、瞧郡、穎川はまだ計算に入れていない。


曹操は袁紹や袁術とは違って裕福な後ろ盾は無く、出征する度に兵糧に悩まされていた。

今まで兵糧の備蓄が五万石を上回ったこと無かった


曹操は嬉し涙を目に貯めて動かせる軍資金を全て新型の犂と水車に回すと決めた。


曹操「占術の先生に占ってもらったことがある、四十手前に運命の人と出会と言われた。間違えなく子寂の事だろ!」


曹操は典黙の手を手に取り典黙を大事そうに見ていると典黙はすぐ手を引っこ抜く

典黙「主公、おやめくださいよ。竜陽の癖があると思われるじゃないですか…」


曹操「ガハハハハ!心配するでない、我は男色の趣はないぞ!そういえば子寂は未だ家庭を持っていないようだが、もし気になる女子がいれば教えてくれよ。」


こういう内容の会話はなるべく避けたかった典黙はサッと手を振りはぐらかしながら場を離れようとする。


「そのうち出来たら教えますよ、ではまた後で来ます…」


曹操はそこからの日々を農業の発展に費やした。兗州にいる民とその民が持つ牛を統計して、牛を持ってない家庭があれば貸し出す政策も取り入れた。

文官が足りないので武将たちも借り出されていた。これがまた大変な作業で皆が忙しそうにしていた。


典黙はサボって家に篭って自分の金策に没頭していた。


毒塩山の開発計画は自らやるよりも誰かに任せたかった、それも絶対的な信頼がある人じゃないとダメ。

そこで許褚に相談したら許褚は自分の信頼出来る手下を集めて典黙に預けると約束した。


五日後瞧郡から許褚のかつての仲間たちが百名濮陽に居る典黙の配下に加わった

典黙は彼らを率い西城外五里の毒塩山で工房を作った。


典黙「一度やって見せるから、手順を間違えずに記録し覚えるようにしてね。」


典黙は岩塩を細かく砕いて、粉状にすり潰して、その後鉄鍋に入れて水で溶かす。

良く溶けた溶液を絹で濾過して木炭で浄化、綺麗になった塩水を煮沸して行くとやがて鍋の縁に白い結晶ができ始めていた、食塩である。


全過程を目撃した義勇兵たちは元はただの村人、食塩は聞いた事あるが実際に見るのは初めて。

「上様、これが伝説の青塩ですか?」


典黙は額の汗を拭いて、ニコッと笑い

「そうです!」

と答えた


義勇兵たちは皆尊敬の眼差しを典黙に向けた、尊敬と言うよりむしろ崇拝。

この時代では青塩は一斤千銭の価値はあるから

お金持ちでも滅多に見ることも無く、朝廷や大金持ちですら大事に使っていた。


先の一時間で既に一斤の青塩を作った典黙はつまりお金千銭を作ったも同然。


典黙は青塩を普及させようと考え、市場価格を崩すつもりでいた。その為には大量生産の必要がある。

値段設定を仮に三割にしたとしても利益は一生使い切れない。


典黙「じゃこれからは各自やってみて下さい、あとここでの出来事は他言無用でお願いします!」


義勇兵「安心してください上様!首に刀をかけられても喋りません!」


典黙は安心して工房を離れ、産出量をざっと計算して、一日三百斤の見込みがあるとわかった典黙は次に販売ルートを考え始めた。

兗州だけでなく残りの十二州も視野に入れてる典黙は曹操の手が届かない所にどうやって手を出すか悩んでいた。

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