二十二話 やめた方がいいよ
于禁「なぁ皆、主公はなんで何も言わずに考軍処の注文を変えたんだろう、これ程大事な事を相談でもしてくれればいいのに…」
楽進「そうだよね、募兵も武器制作の計画に便乗したような物。武器が無ければ募兵の計画も水の泡…」
于禁と楽進の困惑に夏侯惇は首を横に振り
「君らは信じるようだが、あれは主公の命令では無いと俺にはわかる!こんな事をする様な人では無い!」
李典「つまり典黙の小僧を庇おうと嘘をついたって事か?」
夏侯惇もこれ以上何も言わずにただ溜息をついて、黙認したかのように頷いた。
于禁「やりすぎだ!いくら典韋の弟でもやっていい事と悪い事はある!こんな事が容認されればここから軍規法令を無視する輩は増えてしまう!」
この場にいる武将たちは皆徐州と濮陽の戦いで兵を損耗していて、この度の募兵を楽しみにしていた。募兵ができなくなり、イラついてしまうのも自然な事。
楽進「アイツが陳留から帰って来たら問い詰めてやろ!もし本当に主公の命令ならいいが勝手にやった事ならとっちめてやる!」
程昱はお人好しの性分で場を収めようと
「辞めておいた方がいいよ、主公が自ら責任を被るくらいだ、下手に手を出せば主公を怒らせかねない。」
楽進は顔を真っ赤にしたまま怒りが収まらない
「ふんっ!典韋の七光りをあやかってるだけさ!俺の隊は劉備や呂布との激戦でだいぶ消耗していた、今回の募兵で回復を測ってた!この責任を絶対取らせる!」
楽進はそう言い捨ててどこかへ行ってしまった
「待ってよ文謙!」
夏侯惇と于禁らも続いて外へと走って行った
程昱と荀彧だけが残った
程昱「文若、近いうちもう一度主公の所へ行きましょ。あの様子だと何か良からぬ事が起きる予感がしてたまらないんだ…」
荀彧「それには及ばないよ、この出来事はそれ程複雑では無いと見た!」
程昱「何かを知ってる様だな、教えてくれるか?」
荀彧「仲徳、よーく考えてみて。主公の性格上今回の出来事で普通なら相手が誰だろうと罰則を下すはず、でもそうしなかっただよ?」
程昱「その通りだ!その通りだけど主公はそうしなかった!典黙に何かがある…主公がそこまでして守ろうとする何かが…」
荀彧は周りを見渡して程昱にだけ聞こえる声で
「予言の布手紙を覚えてるか?」
程昱「それじゃっ!!!」
程昱は目を見開き瞳孔を震わせたそして納得したかのように
「なるほど…!なるほど!!それだ間違いない!それなら辻褄も合う!だから主公の行動も納得できる!」
そうとわかれば典黙への態度も変えなければならない、仲良くできるならいいが間違っても敵に回してはならない。
城の外典黙と許褚は一日の道のりを経て木の下で休んでいた
典黙「仲康、そこにあるのが濮陽城だ」
許褚「やっと着いたか!それじゃこの馬は返すよ!」
もうすぐ目的地に着くと許褚は少し緊張していた。爪黄飛電を自分にくれた典黙に申し訳なさそうに聞いた。
典黙「仲康は戦場では怖いもの知らずなのに主公と会うのが怖いのか?爪黄飛電は一日千里を駆ける、山や川を平地の様に渡る。僕よりも戦場で駆使できる仲康の方が必要だ。主公へは僕が話しておくよ!」
許褚「その事を心配してるんだよ、せっかく頂いた名馬をいきなり俺にくれて、それで怒られるのは弟くんだろ…」
許褚は急に何かを思い出したかのように媚びた笑顔を浮かべ話を切り替える
「えっへへへ、一つお願いがあるんだが聞いてくれるかい?お兄さんの居る部署に配属させてくれないかな…」
典黙「一緒に居る時はいつもケンカばかりしてるのにどうしてまた?」
許褚「弟くんには分からないよ、典韋のアニキとは気が合う!」
典黙「ふーん、よく分からないがお願いしてみるよ、騎都尉の職でもねだれば兄さんの副官になれるから!」
許褚「ソイツはいい話だぜ!」
色んな事で典韋と張り合う許褚も官職で張り合うつもりは一切なく、一躍騎都尉の役職が貰えるのはなんの武勲もない自分からしたら夢みたいな話。
すぐ二人は濮陽城の門に着いた、典黙は早く帰って温かいお風呂に入りたいななんて思った矢先に、敵意丸出しの怒号が聞こえて来た。
「典黙!てめぇ!丁度いいところに来たな!」
声の方へ見ると夏侯惇、楽進、于禁、李典ら四人が待ち構えていた。
典黙「あらっ皆さんお揃いで、主公はどこですか?報告したい事もありますし、速くお会いしたいです。」
典黙は笑って挨拶をしたが四人はそれに応じずに距離を詰めて来ていた。
楽進「どの面下げて帰って来た!勝手に考軍処の注文を変えたのは貴様だろ!?ちゃんとした理由も無ければタダじゃ済まさねぇぞ!」
典韋が居ないと見て四人は気を強くして今にも殴りかかろうとした勢いを見せる。
典黙も衝突を避けるべく冷たく言い返す
「僕は考軍処の命につきそれなりの考えがございます、報告の義務は主公へ果たしますゆえあなたがたには関係の無い事です!」
言い終わると城内へと向かおうとした典黙を四人は食い下がる。
楽進に至っては典黙を馬から引きずり下ろす勢いで手を伸ばした。
典黙「あっそれはやめた方がいいよ…」
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