第十七話 精鋭部隊
濮陽から陳留まではそれほど遠くは無く二十里くらいの道のりだったが、典黙たちの実家は陳留の中でも南の方で譙郡と隣り合わせたところにある。そこまでとなると距離はだいぶ離れ二百六十里の道のりになる。
急行軍で爪黄飛電と絶影なら一日で行けるが典字営の騎兵にとっては大変でゆっくり進む事にした。
典韋「どうよ弟!この典字営もなかなかの精鋭部隊だろ?」
選び抜かれた典字営の面々を見て典韋は得意げに聞いた。
陳留から出た当時はただの一兵卒だった典韋、今や校尉の位置につき自分の騎兵部隊を引き連れるまでのし上がった。
典黙は謎めいた笑顔を浮かべ「本音を聞きたい?」
典韋はただ誇らしげに首を上げて話を続けさせた。
典黙「戦場では陥陣営や白馬義従を直接見た事はないけど、間違えなく典字営ではその足元にも及ばないだろう。」
典韋「ソイツは殺りあってみないとわからない事だろ。」
典韋は明らかに典字営の評価に不満を持っていた。
典黙「兄さんこれだけは覚えておいて、前に話した精鋭部隊のどれも手強いし、特に陥陣営は呂布の配下でいつ兄さんたちと正面衝突するかも分からない!油断だけは絶対にしてはならない。」
典黙の真剣な顔を見た典韋もこれ以上口答えもせずに「弟がそこまで言うなら、気をつけておくよ。安心せい!」
本編三国志では軍団戦に置いて陥陣営の強さは桁違いだった、徐州の戦いで呂布が劉備を攻めた時に夏侯惇が兵を率い救援に向かったが高順の陥陣営に正面から叩きのめされていた、更にその直後張遼や呂布と合流して劉備を挟み撃ちにして関羽と張飛の部隊をも撃破した。
一日のうちに夏侯惇、関羽、張飛の部隊に勝つのは他では信じられない戦績、今の典字営が出会ったら万に一つも勝ち目がないだろう
典韋「なぁ、どうしたら典字営を精鋭部隊にできるのだ?」
典黙をそこまで警戒させるという事はその戦力が本物という事、ならそれも目指すべき強さ。
典黙は典字営を一目振り向き
「簡単な事じゃないな……まずは人、陥陣営は七八百人で形成され、全てが選び抜かれた面々死を恐れない、一人一人の戦力も高い。加えて装備も優れてる。まぁこれは後でなんとかしよう。」
選抜の仕方が一番の問題で士官の中からより優れてる者だけが入れる事を許される。その事から精鋭部隊の編成はとても困難で持ってるだけで抑制力になる。
典韋「つまり今居る典字営を戦場で鍛え、装備を整えればいつかは名を上げられんのか!」
典黙「そうだね!僕も居るしそれなりの武勲をあげてから僕らも主公に頼んで士官からより優れた者を選ぼう!そうすれば兄さんの典字営も他の諸侯からしたら避けられたい存在になるね!」
典韋「いいね!いいこと言うね!」
典黙「あと一つ言っておきたいことがある」
典韋「なんだ?」
典黙「主公の言った事だ、呂布との引き分けは歩戦だから、もし赤兎馬に乗られたら一騎打ちでは天下無敵になる。」
兄さんの為になる、そう思ったからこそ典黙は再三に渡り強調して言う。
三国志の戦力順は諸説はあるが呂布だけは不動の一位に座していた。つまり他の順位に変動があってもおかしくない、関羽も張飛も趙雲も黄忠ももし典韋と戦うなら勝敗がどうなるか分からない。
典韋「はいよ、最近は言いつけ通り騎戦の練習もしてるだろ、もうだいぶ慣れてきたよ…」
母ちゃんに叱られるような典韋を見て典字営の副官も呆然としていた。
二日が過ぎ、兄弟二人は典字営を連れて実家がある村に帰った。
豫州にはまだ黄巾軍が蔓延る中治安も良くはなかった。
村人たちは騎兵を見るなり黄巾軍か盗賊などの類と思い近寄れなかったが典韋兄弟を知ってる人ももちろん中にはいた。
やっと思い出したか今度は村人たちからヤジが次々と飛んできた。
「おーい典韋!馬なんかに乗ちゃってだいぶ出世したな!」
「黙ちゃんまだ結婚してないだろ?うちの娘くれてやるよ!」
「出世してもちゃんと帰ってくるの偉いぞ!」
典家の村は義理堅い上よくお互い助け合うけど貧しいから毎年冬を越せない人が出てくる。
典韋兄弟もそれを変えようと、村に帰る前に沢山の糧食や衣服を用意しておいた、それ等を配ると村人たちも感謝しながら受け取って行った。
弔いが過ぎて気がついたらもう四日間は経っている
典韋「そろそろ主公の所へ帰ろか?」
典黙「まだだね、主公への贈り物も未だ用意していないし。」
典韋「じゃこれから買いに行くか」
典黙「お金で買える物を渡しても主公は喜ばないよ」
典韋「お金で買えない物…奪うのか?だから典字営を連れて来たのか?それはダメだ!典家の名誉も悪くするよ…」
典黙「……典字営は村に残して、僕らはこれから瞧郡へ行くよ」
典韋「あそこに何しにしに行くのさ?何も無いよ?今黄巾軍と盗賊が合わさって大量の賊が占拠してるだけだよ?」
典黙「ソイツらをぶっ飛ばすのも今回の目的の一つ。でも最初はあまり目立った動きはしたくないな、計画があるし…」
もったいぶった典黙を見て典韋もこれ以上何も言わなかった、言っても仕方ないとわかっていたから。
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