第十二話 盛大な褒賞

《その一・徐州を取る前に農業に力を入れ民のためにできる事を優先する》

「兗州は元々土地が狭く民が少なかった、更に今回の戦いを経て民衆の生活が苦しくなる一方。まずこれを打破しなくてばならない。」


本編三国志では今回の戦いは二年目に突入しその後イナゴ災害が起きて休戦になり民衆も食べ物が完全になくなり人を食べる事も起きていた


曹操は難しい顔をして髭を整え考え込んでいた

民衆の生活を回復させる事には賛同だが普通なら三から五年税収を減らし更には灌漑水路の整備などが必要になる


曹操の表情から気持ちを読み取り典默は笑って

言う「主公!お任せてください!一年でやり遂げて見せます!」


曹操は目を大きく見開き驚愕した

「ありえない…」

戦なら奇策で良くない状況の打破はできるが、それ違って農業は積み重ねた経験が必要になる


「任せてください」

典默はもう一度そう言うと自信満々な雰囲気で曹操を安心させる

「子寂がそう言うのなら、信じる事にしよう」


第二第三の策はあとから聞いてもいいと思う曹操。今はもう典默の事を信頼している。


「あっ主公!もう一つ、欲しい役職が欲しいので……」


「良かろう!どの重役も満足してあげるよ!」


前から典默に褒賞与えようとしたが、典默はそれを断っていた。今回は自ら求めるなら喜んで満足させてあげる事にしようと思った


「兗州考軍の職をください」


「考軍でいいのか?」

考軍の職は基本的に軍団の設備や工事を請け負う仕事。後方支援をメインに取り組む役職で権力もなく出世コースからかけ離れる職。


「はいっ、やりたい事もありますので。」


曹操は典默の手を引いて濮陽城に向かった。


当日夜、曹操軍が濮陽城に入った。濮陽城は兗州で一番発展した、県庁所在地みたいな場所。


勝利した曹操軍に向けて、城内の余裕がある商人たちは美食美酒を用意して献上していた。


労いの宴で夏侯淵がガブッと酒を豪快に飲み込み言った「今日は呂布軍を五十里も追撃した!初戦敗退の雪辱を果たしたぜ!ワッハハハ!さぁ皆も勝利に乾杯!」


曹操は手を振りあげ止めた

「いや、この一杯は一番の功労者。呂布を正面から引き留め奇襲を成功させた!彼が居なければこんなに被害少なく勝利することも無かった。」


曹操言葉の裏の意味を皆が理解して、盃を典韋に向け注目した。


「子盛、やるな!これ程強かったとは!我々の誰もが一対一で呂布に百手以上は持たないぜ!」

実際に呂布と対峙し三手で負けた夏侯淵がそう言った。


「将軍様、そうな事ないッス、俺も結局勝つこと出来なかったし…でも次合ったらもっと頑張ります!」


謙虚に言う典韋は皆を笑わせた。


曹操「子盛!命を承け!」

典韋「はいっ!」


曹操は盃の酒を一気に飲み干し命令を下す。

「即日から、破軍校尉に任命精鋭二千を率い我の直属とする!」


大出世コース!

一兵卒から校尉に上り詰めるのは七八の階級を飛び越える事。新入社員がいきなり役職着く事と同じ事。于禁と楽進と肩を並べる形になる。更に曹操直轄という事は階級が自分より上でもその命令を従う必要も無い


「まっマジッスか!?ありがとうございます!」

感激のあまり何を言えばいいのかすら分からない典韋。

単純な典韋見え皆も思わず大笑いした。


曹操「今日の戦いは素晴らしいものだったが、いつまでも歩戦しかできないようじゃ校尉の風上にも置けない。絶影をくれてやろう、次は騎乗戦で呂布といい勝負できるように精進せよ」


先までの笑いが止んで会場内が静かになった

この言葉に他の武将たちが羨ましい気持ちを覚えた。絶影は曹操の名馬、それをもらえる事はつまり絶大な期待をされてる事でもあった。


「ありがとうございます!俺は口下手だから……なんつーか、頑張ります!そして主公に恥はかかせない!」


曹操は満足気に頷き典默の方へ目をやり

「子寂は兗州の考軍に任命する、軍用機材の制作及び監督を任せる。」


主公はホントに典韋が好きなんだな、弟くんすらも兗州の考軍に引き上げたなんて…と皆が勘違した。


「典韋の活躍は素晴らしかったが決め手はやはり主公の奇策、呂布軍の動きが主公の読み通りだった!あの奇襲が無ければ我が軍もタダでは済まされなかっただろう!」

奇襲をかけた本人の曹洪が少しヤキモチを妬いてた。


曹操は首を横に振り

「あの策は我の物ではなく、例の大才から授かったもの。」


「やはり主公は例の大才を見つけたんだ!」

荀彧はいち早く反応した、内心驚いたが顔には出さなかった。


「主公、かの大才は何処に?敬意を表し、盃を酌み交わせてもらえますか?」

楽進は起き上がって言った。


「それには及ばない、時が来たら彼自ら姿を見せるだろう。今日は好きなだけ酒を飲め!ここ数ヶ月の苦労を労うといい!!」


曹操の許しを得た全員はもう遠慮などしない、文字通り美酒を浴びるほど飲む。

荀彧だけは典默の方をチラッチラッと見て心の中で思った。

「彼……なのかな……典韋が好きだからその弟くんにも役職に任命するのは、いくらなんでも主公らしくない……」


祝宴は全員が酔い潰れることによって終わりを迎えた。


翌日昼間典默に起こされる典韋が身支度をしている

「兄さん、今日は軍機処に行って虎符を受け取ってその後兵士たちと顔を合わせるんだよ。」


典韋「わかってるわかってる、一緒に行かないのか?」


典默「僕は考軍処に行くからね、兄さんは一人でも大丈夫だろう。」


典韋「考軍ね、もし誰かになめられたらいつでも言えよ!」


軍営に向かう典韋と軍機処に向かう典默はバラバラに出た。

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