第十一話 呂布敗走

百二十手が過ぎ呂布に押され典韋は辛くなり始めた。長引けば実戦経験の差で典韋の弱点が現れる。ペース配分が上手くいかず息を切らした


しめた!あと五十手で決めてやると呂布は決心した。


「主公!あそこ!」

典默がそう言うと指を指し。

曹操もこの一騎打ちの意味を思い出した。楽進と曹洪が呂布軍の背後に現れ"曹"の大旗に皆の士気も上がったところで次の指示を出した。


「曹仁!決戦だ、総軍出撃!我々の物を取り戻すぞ!」


曹仁「はいっ!」


少し前までは皆は呂布の圧力に押しつぶされそうだったが今では典韋が呂布を引き留め、曹洪と楽進の奇襲部隊も位置に着いてる。残るは武勲を上げるだけ。

夏侯淵に至っては最初は典韋が秒殺されるのではないかと心配していたが今では逆にその武勲が自分より高いじゃないかと心配した。


夏侯淵、夏侯惇、楽進、于禁らが一斉に出て来て、それを見た呂布が未だ状況を理解できないでいる。


陳宮「温侯!速く戻って来て!後方が奇襲されました!」


さきまであと五十手で決めると息巻いていたのにやっと状況を呑み込み赤兎馬に飛び乗り「クソが!」と叫んだ。


呂布軍は背後から五千の騎兵に方陣を乱され、そこに曹操軍の主力部隊が一斉に突撃された。


乱れた方陣は風に吹かれた落ち葉の様に蹴散らされ、呂布はまた「撤退だ!ついて来い!」と叫び先頭に立って血路を切り開き逃げていく。


「逃がすな!呂布の首を持って来た者に千金を与え校尉に昇進させる!!」曹操は興奮し宝剣を抜き前方へ突き出した。


千金!?校尉!?これらの誘惑につられ兵士たちも皆興奮し命を捨てるつもりで目の前の敵を切り捨てて行く。


「ワハハハハ!見ろよ子寂!呂布軍が濮陽に逃げ帰るぞ、城門が開かない事も知らずにな!ガハハハハ!」


典默「兗州の奪還!おめでとうございます!」


曹操は典默の手を握り「お前が一番の功労者だ!」

その後手の甲を典默の胸にポンッと叩いて

「子寂の予想上ここで呂布軍を殲滅できるか?」


典默は首を横に振り「ここからどんな策を使っても平原で大軍を殲滅するのは難しいでしょう…」


曹操もこの答えを予想していたが残念そうにしていた。呂布の天命は未だ尽きる時ではないと自分に言い聞かせた。


「兗州を奪還したのは嬉しい事だが今では一つ心配事が出てきた、子寂に解決して貰えるか?」

曹操は呂布軍が逃げていく方を眺めて聞いた。

典默は顎に手を当て「ふむ、僕の予想が正しければ…濮陽に入れないとわかった呂布たちが定陶を通って東の徐州か、北の冀州に向かうでは無いかと」


一瞬で言い当てた典默を見て曹操は嬉しそうに頷いた

「じゃ北の冀州と東の徐州、どっちの可能性が大きいと思う?」


「徐州の劉備一択でしょう!」典默は即答した

「北の冀州には四世三公の袁紹がいる、蛮勇のみの呂布では相手にもされない。逆に劉備は徐州が攻められた時間接的に呂布に助けられた。義理堅いを売りにするなら断る事は出来ない」


曹操はため息を吐き言った「劉備と呂布が手を組めば徐州はますます取りずらくなってしまうだろう…」せっかくの勝ち戦なのにまるで負けたの様子だった。


徐州は曹操にとっては因縁ある場所だった。

曹操の父親曹嵩(そうすう)は徐州の州牧陶謙に殺されたからだ。その時から徐州を攻め落とし城内の無差別虐殺を誓った。

敵討ちはただの口実で曹操の野心は天下一統で

そのためにも中原の本拠地として兗州と徐州を手中に収める必要があったから。


「主公、恐れながらもしあげます。呂布は常に約束を蔑ろにする、劉備は名声を大事にする。二人の性格上から相容れない存在です。まして同じ山に虎が二匹居れば争う事必然です。」


曹操は眉間のシワを伸ばし

「その道理もわかるが、ここ数ヶ月苦労しても収穫もなく一方劉備はたかが数千の兵で陶謙から徐州を横取りした。これがムカつく…」


典默はニコッと笑い曹操の気持ちも理解出来ている

「主公、僕の予言三策を覚えていますか?」


「無論とも!子寂の三策が伝われば後世にも名を残すだろう!」曹操は心を震わせて言った。


典默は息を大きく吸い

「僕には更に三策あり、これらが成功すればきっと主公は間違えなく中原逐鹿、問鼎黄河!」


中原逐鹿、問鼎黄河この八文字が何を意味するかは知っていた。典默の真剣な顔に曹操は鼓動が速まり血液が沸騰するのを感じた。


「先生に教えを乞いたい!」

曹操はおちゃめに生徒の真似をする。


「子寂でお願いします、先生の肩書きは荷が重すぎます。」

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