第十話 典韋VS呂布

典韋?無名な一兵卒が出しゃばるなと思った夏侯惇が唾を吐きイラつきながら言う「妙才がたった三手で死にかけたぞ!死に急ぐなら他所でやれ!」


「お兄さんすごい度胸ね、でも戦場はそんな甘い所じゃないよ」と于禁も悟すように言う。


曹操も困惑していた、ここ数日典韋の印象は天才のアホな兄さんだけだった。

「まさかこのアホ……この典韋がそんなに腕っ節が強いなら、兄弟合わせて文武両道なら!これ程嬉しい事は無い!」


など思い決心した曹操は護衛たちに向かって

「誰か!我が絶影を連れて参れ!」


「あっ主公!俺馬乗れないッス!」

そう言うと典韋は陣営の前に向かった。


馬乗れない?歩戦で赤兎馬に乗った呂布と戦うの?あっけない死に様晒すだけじゃん?


皆が絶望してる中典韋は既に前に出た

曹操も一瞬動揺したが典默の目を見ると再び決意して「太鼓を鳴らせ!」


子寂よ、信じるぞ…


太鼓の音が鳴り上裸の典韋が徒歩で呂布に向かう、それを見た三万の呂布軍から笑い声が聞こえた。呂布すらも首を傾げ口角が上がった。


「呂布よ!俺と歩戦でやり合う度胸はあるか?」


呂布は典韋の挑発的な眼差しにイラッとした。

今までの誰もが自分を見る時は敬意の目を向けて来たから。

典韋の目には挑発以外にも興奮や期待が見えている。


「やって殺る!」

赤兎馬から飛び降り方天画戟を背後に右手で横に構え左手を前に突き出す。


典默の予想通り、呂布は傲慢な態度からあらゆる形の勝負を受け立つ歩戦もその内。典韋の腰に差してる数十枚の投戟もさほど気にしていない様子。


「行くぜ!」

典韋は先手を取り、助走をつけ高く飛び上がり左右に持った短戟を呂布の顔目掛けて振り下ろした。

自信満々の呂布は普通のガードをせず、下から方天画戟を振り上げそれを吹き飛ばすつもりで居た。


カキーン!!キシキシっ


火花が飛び散り、嫌な音と共に凄まじい振動が両者に伝わった。


呂布は少し驚いた心中では「思ったより手強い!」


典韋の驚きは少しどころじゃない「上から振り下ろしたから力を発揮しやすいはずなのに呂布は完全に受け止めた。聞いた通りバケモノだ!」


「もう一丁!」


典韋は少しも気を抜かず両手で左右から攻め、突き、斬り、刺し、振り上げ

どれも急所目掛けて殺すつもりで攻撃したが

百斤越えの方天画戟は呂布の手で異様に俊敏に攻撃を全数受け流した。


武器同士がぶつかる度に火花が飛び散り、力強さが目に見えて分かる。


典韋の強さを認めたか呂布も本気を出し始めた両手で方天画戟を操り顔も真剣になっていく。


「ここまで呂布と渡り合えるなんて思わなかった!」


「これ程の戦いは劉備、関羽、張飛の三対一以来だ」


「元譲、お前の部下なのに知らなかったのか?」


「コイツも化け物だ……」


曹仁、于禁、李典などが気持ちを素直に表し感服している。


三国志では前半で曹操を助けるために命を落としたが典韋は戦闘能力は極めて高かった。

長坂の戦いで趙雲が一躍有名になったが似たような戦いを典韋は三回経験していた。


呂布は方天画戟を残像が出るほど振り回しあらゆる角度から典韋に迫る。これらの攻撃は虎牢関の時張飛も完全に防ぐ事もできなかったが典韋は逐一短戟でいなしていた。


呂布が攻め典韋は守り、膠着状態になっている事から呂布は認めざるを得なかった。

いくら自分でも典韋に歩戦で勝つのは時間がかかりそう

そう思って赤兎馬を一瞬振り向き、馬上から全力で一気に攻める事も頭をよぎった。

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