第3話 タイトルの付け方

 固定ファン抱えていない作家の作品がアピールできることは2つしかありません。タイトルとキャッチコピーです。

 あ、ここまで書いてきておいて今さらですが、異世界ファンタジージャンルのことですからね。ホラーとかはまた別のお作法があると思うけど、私はよく分かりません。


 まずはタイトルの戦略を考えましょう。長文タイトルにするかしないか。ここは悩むと思います。ちなみに拙作は16文字です。長文タイトルではないけれど、一般文芸としては長めですね。私は長文タイトルはつけませんでした。それは読者の期待と衝突すると考えたからです。


 これは独断混じりの意見ですが、長文タイトルはいわゆる流行の展開をお約束する傾向があると思っています。2020年だと、追放されたけど実は実力者なので困らないという「ざまあ」ものなどが割と幅をきかせていた記憶があります。覚醒したスキルが一見地味で役に立たなそうだけど本当は超有能とか。異性との関係では、なぜか高嶺の花が自分にだけ好意を寄せているというのも多かった。


 翻ってみれば、拙作の主人公は能力的にはイマイチですし、立場としても他者から蔑まれ酒浸りでお先真っ暗状態。女性にもモテないおっさんです。ヒロインと出会って運勢が変わりますが、すぐに好き好きとなるわけでもなく、綱渡りの人生が続きます。だから、心地よい展開を約束できるタイトルをつけようがないし、無理やりつけてもそういう話の筋を期待する読者を騙すことになります。


 結局のところ、名は体を表すという言葉のとおりにすればいいと思います。中身が長文タイトルによくある流れに沿ったものなら長文をつける。そうでないならば無理に長文タイトルにしない。


 じゃあ、短めのタイトルの時にどうすればいいのか。正解はないと思いますが、おそらく避けた方がいいことがあります。まず、固有名詞は避けましょう。作中の主人公名や国名などから取った「シャーロンデ年代記」とかそんな感じのものです。そこに思い入れがあるのは物書きとしてよーく分かります。でも、読者さんにはそれが何なのかさっぱりわかりません。ほぼ情報ゼロと同じです。


 主人公の属性を書いた方がまだ伝わるでしょう。たとえば「男運最悪な騎士団長の年代記」にしてみましょうか。有能なのだけど寄ってくる男がロクデナシばかりという可哀そうなお姉さま騎士団長が浮かびます。読者が追いかけることになる対象がどんな人物なのかは分かりますね。


 手前みそになりますが、拙作の場合はあまり主役を張ることのない「盗賊」ということで珍しさをアピールしています。「酔っぱらい」ということであまり品行方正じゃないことと、境遇に恵まれてなさそうなことも想起してもらえそうです。で、「奴隷の少女を買う」。ヒロインの属性とぼんやりとした物語の方向感を提示しています。


 まあ、長文タイトルとやってることがあまり変わらないかもしれません。でも、「チェリモヤ」って言われてもよく分からないですよね。「森のシャーベットのような果物」の方が興味が湧くでしょう? そういうことです。次話では、タイトルとセットになるキャッチコピーについて語ります。


 

 

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